第七十六話 ヤマト「ノ」オロチ
どうやら、このオロチのオーナーは大和さんの様だった。
やべえ、何マジマジと見てやがってんだ、こいつ・・・・とか思われてんだろうな。とっととずらかるか・・・・
なんて思いながら、軽く失礼します~・・・・なんて言いながらパジェロに乗り込もうとすると、腕を掴んできて
「待って。あなた、もしかしていつもこの辺にパジェロエボ止めてた人でしょ? 乗り換えたの?」
「え・・・・あ・・・いや、そういうわけではないです。 実は私のパジェロエボは今修理に出してて・・・・これは代車なんですよ。」
なーるほど、そう言う事か・・・と顎を手で押さえながら、大和さんは納得したような表情を浮かべた。
「しかし、ほんとに貴方だったとはねえ・・・・風のうわさであなたが相当のやり手だってのは聞いてたのよね。 首都高で走り屋撃墜したとか、ダート競技でかなり速いとか。 見た目はパッとしないのにやるわよね。」
おいおいなんだ、やり手って。見てくれがパッとしないってのはともかく。 ・・・・ってか、誇張され気味ではあるが一体どうしてそんな話が彼女に伝っていたのか。
「一体どっからそんな話が出てたんですか・・・・?」
「どこからって・・・・なんか莉緒からチラと聞いてたし、集まりとかでも貴方の話は聞いてたわよ。」
ああ、そういうことか。納得。 莉緒もそう言えば大和さんと結構仕事してたんだっけ。
「まあ、それはそうと。貴方のパジェロエボ、ほんと新車同様に綺麗だったし、でも足とかはかなりカッチリやってあったから前々から気になってたのよ。この会社車好きの社員さん中々いないしさあ・・・。」
「確かにそうですよねえ・・・・ 私もこの会社だと、莉緒が初めての車好き仲間でしたし。」
「そーそー。まあ、私はメカとかその辺は詳しくないけど。よかったら仲良くしてよ。」
「え、あ、まあ・・・・こちらこそ、よろしくお願いします。」
私は軽く頭を下げてそう言った。性格キツそうだなあ・・・なんて勝手に思ってたけど、こう共通する趣味があるとグッと身近に感じる。不思議だ。
そんなふうにしみじみと考えに耽っていると、大和さんはある提案をしてきた。
「・・・・ねえ、貴方。この後暇? 私この後ドライブに行こうと思ってるんだけど、よかったら、横に乗ってみる?」
「え、まあ明日はオフなんでいいですけど・・・・。なんかいいんですか?お邪魔しちゃって。」
「別に大丈夫よ。私も明日はオフで暇だったしさ。・・・・別に襲ったりはしないよ。」
手を怪獣の威嚇のポーズのように構え、悪戯な顔をして、彼女は言った。よく見りゃ顔もいいなこの人。
オロチに乗るチャンスなんて中々ないし、親睦を深めるチャンスかな・・・・。いっちょ乗ってみるか。
「じゃあ、折角なのでお願いします。」
「フフっ、了解。じゃあ、乗ろっか。」
彼女はニヤッと笑いながら、オロチの鍵を解錠した。 ワクワクドキドキのドライブがいよいよ始まる。