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第四十三話 思い出は一番星の中に。前編

新潟に弾丸旅行に行って早一週間、今回の土曜日は群馬にある実家の掃除を手伝いに帰省すべく関越道をひた走っていた。莉緒に紹介してもらったオーディオショップで組んでもらったオーディオで音楽を聴きながら走っていたのだが、音質が非常によく、本当に気持ちよく走れた。予算の制約があったので、それほど大きく手を入れたわけでもなく、デッドニングを施し、純正スピーカーを社外に置き換えて、少しセッティングをしてもらっただけなのだが、音がよりクリアーになって音質が劇的によくなり、ドライブがより気持ちよくできるようになった。 好きな音楽を聴きながらノリノリで関越道を駆け抜け、あっという間に実家へと辿りついた・・・・のだが、なんと両親は両方とも不在であった。


「えええ・・・今日いるって言ってたじゃん・・・・こういう時に限って実家の合いカギ持ってきてないし・・・・。うーん・・・・」


どうやら両親二人に連絡を入れたところ、父親は病院へ通院に、母親はジムに行ってしまったらしい。掃除を手伝えって言われたからきたのに・・・。ちょっとしゅんとした私は、とりあえず実家の駐車場にパジェロを止めると、近所を散歩しようとそのまま歩き出した。すると、隣の百瀬さんの家に目が留まった。百瀬さん家には昔からよくしてもらっていて、昔はよくお土産を頂いたり、また私が以前ミラージュに乗っていた時、バッテリーが上がって一人であたふたしてるときに救援してもらったりと何かとお世話になっていた。そして、百瀬さんはスバルの関連企業に勤めていたらしく、駐車場にはその時最新のスバル車がよく止まっていたのだった。レガシィワゴンだったり、フォレスターだったり、インプレッサであったり、頻繁に乗り換えられていたようで、どんな車が来るのか見るのが、通りがかる時のちょっとした楽しみでもあった。そして、今回も駐車場にはレヴォーグと新型XVが仲良く並んで止まっていて、更にその隣には・・・・何やら見慣れない車がボディカバーを被せられていた状態で佇んでいた。 シルエットしかわからないが、どうやら車高の低さから察するにクーペの様だ。 それなりに放置されていた時間が長かったらしく、カバーには埃や落ち葉が溜まっていた。


「へええ・・・百瀬さんとこ三台体制になったんだなあ・・・・なんの車だろうこれ・・・・。」


そんな事をぼやきながら眺めていると、後ろから何やら声がした。百瀬さんだった。


「おや、凛子ちゃんか。お帰りなさい。しばらくぶりだね。」


「え、あ、お、お久しぶりです百瀬さん・・・・。 お元気そうで何よりです!」



「凛子ちゃんも暫く見ないうちに立派になったね~!東京の三好プロダクションで働いてるんだってね!凄いねえ。」


「いえいえそんな・・・私なんてただツテがあったので入っただけですから・・・・。」


と、私は返した。その後は暫く与太話が続いた。仕事であったり、向こうでの生活であったり。久しぶりに会ったこともあって話し込んでしまった。


そして私は、思い切って『カバーのかかった車』の事について訊ねた。


「あの、このカバーのかかってる車って何の車なんですか?」


百瀬さんは一瞬ドキッとしたような表情を浮かべたが、すぐにいつもの穏やかな顔に戻ってこう言った。


「ああ・・・これね・・・・。ちょっと待ってね。今カバー外すから・・・。」


そう言って百瀬さんはボディカバーに手を掛け、少し深い息をついてから、スッとカバーをめくり上げた。


カバーの上に乗った埃や落ち葉がフワッと舞い散る中、カバーの剥がれたその車が姿を現した。まるで戦闘機のようなシャープさと優美さを備えた低く美しい純白のボディは、強烈な存在感を放っていた。 


私は驚いて、目を真ん丸くしながらもこう言った。


「こ、これは・・・。アルシオーネ・・・ですよね。」


「そうそう、初代アルシオーネVXってやつ。・・・・中々珍しいでしょ。」


優しい目をしつつ、でも何処か物憂げな表情を浮かべながら、百瀬さんはそう言った。


続く。





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