第百二十七話 コースイン
ユリはまずコースをゆっくり走って、クルマとタイヤを十分にあっためた後に、ペースを上げてツインリンクもてぎを駆け抜けた。
このクルマを仕上げたRJスポーツは、持ち込みの段階でかなりセットアップを決めてきていたので軽く走らせた段階でもかなり状態は良かった。
「流石はアタシのシビックを仕上げてるメカが作ったクルマね・・・・ 1.5リッターのコンパクトカーでこんなに速くて乗りやすいなんて・・・・!!」
そんな風に感心して走らせながらもユリは、ちゃんとウィークポイントも見極めて確認していた。 今回は4人みんなで走らせるレース、それも耐久レース。
誰か一人だけが乗りこなせるピーキーなものではいけないし、長い間ドライブしていても疲労が少ないようにセッティングを決める必要があるので、その所を注意していた。
5~6週ほど走って、いったんピットに戻ると、ユリはメカニックの人に状況を伝えてセッティング変更をお願いしていた。
「すいません、ペースを上げたときにもう少し、リアに落ち着きを持たせたいので、ここを・・・・」
入念に話し合って、セッティングを決めたのち、またユリはコースに戻っていった。
どうやら、先ほどのセッティング変更がかなり効いていたらしく、ユリはその後2~3週で好タイムを連発しまくっていた。
再びピットに戻ってくると、ユリは笑顔でマシンから降りてきた。
「うん、すごくいい感じになったよ! これならかなりいける気がする」
かなり満足気であった。 そして、とうとう今度は私の走行する出番が来た。 ユリが今度はこちらへときて、私に
「とりあえず、ある程度セットは決めといたから、凛子も軽くコース確認したらどんどん踏んでっちゃっていいよ! 気になるところが出てきたらどんどん言ってね!」
「うん、わかった! 私もこういうレースカー乗るの久しぶりだから、ちょっとずつペース掴んでクルマ確認してみるよ! ・・・・行ってきます!」
二人で拳を突き合わせると、私はフィットのコクピットへと滑り込んだ。
スターターボタンを押して、エンジンをかけ、指示に従い、そのままピットから旅立った。
続く。