2節 下巻 透、アヴァロンを救う!
後半戦スタートです。
お楽しみいただければ幸いです。
どれほど経っただろう。俺は目を開けると周りは火の海から血の海へと変わっていた。そしてすぐそばには血だらけの何かが落ちていた。俺はそれにすぐに駆け寄るとそれはヒイラギだった。息をしていない。傷だらけだ。
「ようやく目を覚ましましたか?勇者。ですが一足遅かったですね。その女は1人で逃げればいいものをあなたを庇いながら戦ったために無意味に命を散らすことになりました。ほんと、人間1匹のためにそんなことをするとは気が知れません。」
こいつは、こいつだけは許せない。だけど俺には力が足りない、こいつを倒せるだけの力が!だから俺は願った。俺ではない、この状況を一気に翻せる者が来てくれることを。
「すまないな、あんちゃん。遅れちまって申し訳ねぇ。よくここまで頑張ったな!」
その願いが通じたのか1人の男が立っていた。その男の名はゲイル。ゲイル=ブラックであった。
「おっちゃん!ヒヒラが!ヒヒラさんが!助けてやってくれよ!」
「俺に癒す能力はねぇ、だが、そこの姉ちゃんならなんとかしてくれんだろ?」
俺が振り返るとツバキさんが立っていた。
「そこの人、私によこして。これだけの傷を負ってまだ生きてることが不思議なくらいよ。急いで回復させないと。」
俺はその場をツバキさんに任せ、ゲイルの方へ向き直した。
「あなたは?」
「では死ぬ前に覚えて行きな。俺の名はゲイル。」
「ずいぶんな自信家のようだ。私の名前は悪魔大元帥クラネル。魔王テトラ様のしもべでございます。では、騎士たちよ!そのものを殺せ!」
そうクラネルが言い放つと騎士たちは一斉に向かってきた。後ろでは数人のものが何やら詠唱をしている。
「来やがれ!聖斧ゲイル!」
そうゲイルが叫ぶと光が集まり斧となった
受け継ぎし我が太陽
次の瞬間ゲイルの前にいた騎士たちはゲイルの放った攻撃により一瞬で蒸発した。
「バカな!人間にそこまでの能力があるはずがない!貴様一体何者だ!」
怒るようにクラネルが尋ねるとゲイルは言った。
「言っただろ?俺はゲイル。この勇者の戦友だ。な?あんちゃん?」
そう言うと斧を投げ捨てた。
「もしや貴様聖魔大戦の時の⁉︎くそっ!魔王様はこれを知っていたのか?ともかくこれは分が悪い!」
光弓 ゲイル
そう言うとゲイルの手に異常な光を発する弓が現れた。
それをクラネルへ向けた。とっさにクラネルも防御結界を張るが、
「遅い。」
そう言うとゲイルの矢は光の速さでクラネルへ飛んで行った。
その矢が結界を貫通しクラネルは当たると大爆発が起こった。
「うギャァァァ!!くそ!クソォォォ‼︎こんなところで……」
そう言ってクラネルは消し飛んだ。
俺は何が起こったかよく理解していなかったが、ハッと我に返りヒイラギを治療してるツバキさんの元へ戻った。
「ツバキさん!ヒヒラは?いや、ヒイラギは大丈夫ですか?」
「安心して、もう大丈夫よ。それより詳しい話聞かせてくれる?」
そうツバキさんが言うとゲイルも頷いた。
「実は……」
俺はヒヒラは元魔王ヒイラギであり、自分が殺されかけたこと、そして先程の敵襲の時に命を賭して守ってくれたことを話した。
「状況は把握しました。何かこの方は隠し事をしているのではないかと思っていましたがたかがその程度でしたか。」
「そうだな、姉ちゃんの言うとおり今は仲間なんだ。殺されかけたあんちゃんでさえこいつを許してるんだ。俺たちが許さないわけにはいかないだろ?」
ツバキさんとゲイルがそう話すとヒイラギが目を覚ました。
「よかった!本当に生きててよかった!死んじゃったのかと思ったよ!」
俺が起き上がったヒイラギに抱きつくと投げ飛ばされた。
「馬鹿者!私の秘密を勝手に喋りおって!」
「いってぇ、ひどいじゃないか!ヒイラギ!結果的にはうまくいったんだからよかったじゃねぇか!」
「うまくいけばいいって問題じゃない!でも、礼は言っておく……ありがとう。」
そんな言い合いをしているとドオォォンと言う音が聞こえた。敵襲かと思い身構えるとカエデがいた。
「あ、透!みんな!無事だったんだね!よかった〜」
「嬢ちゃんどこにいたんだ?結構探したけどいなかったからよ」
「あー!それね!はい、透。これ。」
そう言ってカエデから手渡されたのは魔剣トロイだった。
「おい、これ。」
「いやぁ!お礼なんかいいっていいって!当然のことしたまでだよ!」
俺ははぁ、とため息をつきながらカエデを正座させた。
「いいか!カエデ!お前は冒険というものを何もわかっちゃいない!死闘を繰り広げてやっとゲットする代物をなんであっさり取って来ちゃうのかなぁ……」
「なんで私怒られてるわけ⁉︎それにあっさりなわけないじゃん!なーんかめっちゃ強そうな甲冑着た人がいてね!そいつが魔剣守ってたの!まぁでも、見掛け倒しで数発殴ったら消滅しちゃったけどね!」
俺はそういうことをあっさりって言うんだよと思ったが、口にするだけ無駄と悟った。
「で?そんなに簡単に終わったのにどうしてこんなに時間かかったの?」
「この魔剣さ、なかなか抜けなくて!仕方ないから魔法とか全部使って引き抜いたの」
「それ絶対正規のルートじゃねぇじゃん!力技だよ!そういう剣ってものは剣が主人と認めたものしか抜けなかったりするの!それを力技とか……この!ゴリラ女!」
「あ!ひどい!透が今ゴリラって言った!私そんなにけむくじゃらじゃないよ!」
「けむくじゃらの話なんか誰もしてねぇ!俺はゴリラの馬鹿力の話ししてんの!!」
まぁそんなこんなでアヴァロン攻略完了である。俺はいちようこの世界の人々に向けて魔法で声を届けることにした。
「あー、あー、聞こえているでしょうか?はじめまして、私は勇者の透と申します。つい先ほど、この国の絶対君主は倒されました。ですからあなたたちは自由です。自分の好きなこと、やりたいなと思ったことをやってみてください!もちろん節度は守ってください。仕事に縛られることなく、自由に生きてみてください!僕からの話は以上です。」
ツバキさんの魔法でこのアヴァロンに住む全員の人にメッセージを送った。これで晴れて、機械のように仕事に縛られることもなくなるだろう。と俺は期待しながらこのアヴァロンという理想郷を後にした。
「あらあら、あなたの部下消されちゃったわね。ね?テスカ?」
そう魔王テスカに話しかけたのはシェオルだった。
「フッ、あんな小物がいくら消えようが俺になんの支障もない。だが、面白いものが観れたな。」
「そうね!ちょー面白かった!やっぱりゲイルは強いなぁ、まぁ他に比べてだけどね。」
そう言ってチョコをかじっているのは魔王カグラである。
「このあと勇者たちはどうすると思う?オーベロン。」
カグラはオーベロンに話を振った。
「そうですね、彼らが次に求めるものは伝説の盾イリアス、又は私の手中にある聖剣でしょうね。まぁでも結論を言えば私の見えた未来では私の元へ来るようですよ。」
「負けるなよ?我ら魔王に敗北の2文字はありえないからな。」
「心得ております。」
そう言うと、オーベロンは自分の理想郷エル=ドラドに帰っていった。
下巻完了です。
次回は物語は進めず、何か挟もうと思います。
PS、かなり七つの大罪のエスカノールにゲイルが似てしまいましたが、実際のところアフラ=マズダにも太陽としての能力があるみたいなのでパクリとかではないのでお許しください。