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魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
二十一章

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―世界のプロローグ―


今回の話は過去の話となります。

来週、一ついいことをご報告できるかと思います。

 陸地の国々や島国。そしていくつも存在した空中都市。

 海の上に浮かぶように、それらの島々は悠々と空を漂う。

 星の数ほどある国々のどこにも属さず中立を保つ――とある空中都市にて。



「――恐れながら。お勧めできる地方ではないかと思いますが」



 制服を着た可憐な女性が言った。

 カウンター越しに伝えると、彼女の声を聞いた背丈の低い少女がため息をつく。少女は竜人と呼ばれる力ある種族の生まれで、見た目に反比例して年をくっている。いくら身体は小さくとも、秘められた実力は格別だ。



「知らん。儂が選んだことに文句を言うのか?」



 むすっと頬を膨らませる仕草は可愛らしい。

 ただ、制服を着た女性は少女の実力をよく知っている。



「い、いえッ! そういうことではなく……文明においても、また、他の地域へのアクセスも相応に悪くてですね……」


「だから知らんといっておろうに。なんじゃお前は、たかが儂の引っ越し程度の話じゃろうに……もうよい。決めたことを伝えに来ただけじゃからな。長い間世話になった。釣りはいらん、チップにでもあてよッ!」


「あっ――お、お待ちくださいッ!」



 ふん。鼻息荒く少女は建物を出る。

 空を飛び交う飛竜の群れの背中には、衣装を統一した男女が龍を駆るべく手綱を引いていた。また、近場に見える飛空艇の停泊所からしきりなく人が姿を見せる。

 少女はつい先まで泊まっていた、天高くそびえたつ大きな高級宿を一瞥した。



 懐から菓子パンを取り出して頬張ると、その甘さに多少機嫌を取り戻す。



「さて、なにから用意するべきじゃろうか」



 衣食住。この三つが何よりも重要だ。



「んーむ……ここからどのぐらいかかるんじゃったか……地図……地図……」



 手を軽くはたいて菓子パンの汚れを落とす。

 懐から四つ折りにされた地図を取り出して眺める。



「こ、国選級飛空艇にて約八百日……ふざけておる……なんで儂はこんな場所を選んだんじゃ……むぅ……」



 おもむろに菓子パンをもう一つ取り出し、頬張りつつどうするか考え込む。



「儂以上の上位者の力を借りれば……いやしかし、金が有り余ってる連中に差し出すものと言われても――むむ? 待つのじゃ、空路をいかずともこの地域へは向かえる……狭間がある地域ではない……なれば」



 光明。

 脳裏を掠めた一つの考えが彼女の足を動かした。

 目指す先、中立都市のある方角にある、小さな島ほどもある建物を見た。



 ――少女が足を運んだそこは、多くの魔物でごった返している。

 ただ危険はない。なぜならすべての魔物が檻の中に厳重に管理されていたからだ。



「おや、珍しいお客様だ」



 足を運んで早々、少女の下に一人の老紳士が近寄る。

 多くの客でにぎわうというのに、彼は一直線に少女の下にやってきたのだ。



「邪魔しておるぞ」


「神格――序列者(、、、)様に足を運んでいただけるなんて、私共としても誇りでございます。……どのようなご用件で?」


「魔物が欲しいのじゃ。水中の移動を得意とした……そうじゃな、例えば水竜なんかが欲しいんじゃが、おるか?」


「ございます。奥の水槽に居りますが、あまり質はよろしくございません」


「ほう?」


「位が低く知能が足りておりません。特に、共通語なんかを覚えさせることもできませんし、龍言語を語ることもありません」


「しかし泳ぎは得意なんじゃろ?」


「仰る通りです、近海で暴れまわっておりましたので。ただやはり、戦闘力などは――」



 歩きつつ彼女は満足した様子で頷く。



「そんなことは気にしておらん。ただ水上の移動を手伝わせられればそれでよい」


「でしたら問題ないかと。ご覧になりますか?」


「うむ。そうするかの」



 幾多の檻を横目に少女は進み、数多くの魔物の声や姿の横を通る。

 道楽のために足を運んだ金持ちや、金に余裕が出来た一人前などを興味なさげに視界に収めつつ、老紳士につれられるまま水槽の近くに向かったのだ。

 やがて辿り着いた水槽は大きい。



「馬鹿みたいにでかいのう」



 視界一面に広がる水槽は、それこそ端がかすむ程広い。



「こちらがご所望の水竜でございます。鱗は上位種のそれと大差ありませんが角がございません。また、牙も生え変わる種のためそう多くの力がため込めないかと。ただ身体は際限なく大きくなりますので、時を経てしまえば、上位種も食えるほどのポテンシャルを秘めております」


「なんじゃ、そう悪くない個体ではないか。ならば二頭くれ、今日このまま連れて帰る。ついでに長旅に耐えられる上等な船を一隻用意してくれると助かるが」


「かしこまりました。後程、海上への便を手配いたしましょう」


「支払いは儂の口座から落としてくれてよい」


「えぇ、併せて承りました」



 老紳士が懐から一枚のプレートを取り出す。鈍く光る文字が浮かび上がり、それをペンを用いて操作していった。

 手持ち無沙汰そうにしてた少女は、近くから聞こえてきた声に気が付く。



「む?」



 方角は後ろ。巨大な水槽ではなく小さな水槽が並ぶ箇所。



「――ねぇねぇ、竜人だよ!」


「すごい! はじめてみたよ!? お姉ちゃんもはじめてみた!」



 鳥かご程度の小さな檻がなぜか水槽に並べらて置かれていた。

 少女は声に応じて近寄る。



「儂のことが珍しいのか? よく竜人だと分かったのう」


「匂いでわかるよ! 私も、お姉ちゃんもそういうのすごいんだよ!」


「うん! 私すごいの!」


「ふむ……それはすごいのう」



 力抜ける対応ながら、少女は不思議そうに鳥かごを眺める。

 中に居た二人の少女のことが疑問だった。



「あ、そ……それは……」



 老紳士が気が付く。

 同時に少女も、この鳥かごの中身が捕獲してはならない存在だということに気が付く。



「こやつらはハグれ(、、、)か?」


「……えぇ。偶然捕獲されていたらしく、離すにしても色々と手続きがあり、どうしたものかと迷っておりましたので」


「厳罰どころでは済まされんな。この二人はエレメンタルであろう、恐らく木々の。儂も通報するべきかと思ってきたのだが」



 ぴくっ、老紳士の身体が揺れた後に冷や汗が一筋。

 少女がニヤリとほくそ笑むと、鳥かごを抱くように持つ。



「お主ら、儂と共にこぬか? 長旅になるじゃろうから話し相手が欲しいのじゃ」


「うーん……分かんない! 分かんないからお姉ちゃんに任せる!」


「お姉ちゃんも分かんないよ!? でも良く分からないから一緒に行ってあげてもいいよ!」


「……お主ら、色々と自由な性格をしとるのう」



 と、いうわけじゃ。

 少女が老紳士に向けて笑いかけると、彼は仕方ないと言わんばかりに頷いた。



「貴方様でしたら文句を言える者もいないでしょう。それこそ、さらに上位の方々のみだ。……恐れながら、是非当店のことは」


「分かっておる。大地を富ませるエレメンタルを捕獲してしまったなんぞ、他の誰にも言わないでおこうかの」


「はは……船のお代金はサービスさせていただきましょう」




 ◇ ◇ ◇ ◇




 少女は店を出て、用意された便に乗り海上へと降りる。

 空を見上げれば先ほどまで居た空中都市が漂い、徐々に徐々に風に乗り離れていく。

 少女は必要な荷を詰め込んだ一人には大きすぎる船にのり、船頭に胡坐をかいて腰かけたのだ。



「リクァ(家族)と離れて長くなるが、まさかこれほどの長旅をすることになろうとはの」


「あれー? どうしたのー?」


「お腹痛いなら、横になって足を曲げるといいんだよー?」


「……違うわい。ただ久しぶりに、郷愁に浸ってみただけじゃ」



 すると少女は海中を見る。

 屈強な鎖でつながれた二頭の水竜に命令を下した。



「ほれ、食べ物も渡すから泳いでもらえぬか?」



 しかし二頭は言うことを聞かず、ただ鎖をかじるばかり。



「もう一度言う。泳いでもらえぬか?」



 だが変わらない。

 それを見て少女はため息をつき、立ち上がると虚空から巨大な鎌を取り出す。

 全体が一つのクリスタルからできたような宝物を思わせる武器だが、にじみ出る魔力が空気を吸い込み空間を歪ませた。



「面倒じゃのう……」



 息を吐くように横薙ぎ一閃。

 間もなく少女の上、空中都市との境目から光線が散らされ海中を襲う。轟く地響きと海水が蒸発する音のみが不気味に響き、水竜が宙に跳ね上げられた。

 ぐい――ッ。二頭の首がきゅっと絞めつけられる。


「お主らは海を荒らしておったのじゃろ? 儂、聞いておるからな? じゃから儂も厳しくいく」



 空いた一方の手をぎゅっと握れば、浮いた二頭は凍ったように浮いたまま硬直。

 ギョロッと睨み付けるような瞳を少女に向けたものの、数秒も経たぬうちに視線をそらした。

 ガラスが割れるのと似た音が辺りに響くと、二頭は瞬く間に落下。海中に潜った。



「良い子じゃ。先におやつでもあげようかの」



 それからというもの、二頭は従順に態度を変えた。

 出発して数十分。姉妹のエレメンタルが少女の肩に腰かけて尋ねる。



「ねー!」


「ねぇねぇ!」


「ん?」


「どこに行くのー?」


「風が気持ちいいねー!」



 そういえば伝えてなかった。

 どうしてそこに行くのかを伝えるのは面倒だ。しかし、行き先ぐらい教えてやるかと地図を取り出す。



「ここじゃ。このまま四百日も進めば到着じゃろうな」

「遠いんだねー! お泊りだねー!」


「なんていうところなのー?」



 なんていう地域だったろう? 少女は気にしたことが無かったことを思い出し、自分も確認のために地図の端に目を向けた。

 書いてある文字に感情も込めずに読み上げる。






「――とある言い伝えが眠る場所。イシュタル諸島という……遥か遠くの地じゃ」


一年ちょいかかりましたがようやく書けました。


※混乱を招かぬようお伝えしておくと、新たな敵が外部からやってきて!なんていう話がこれから始まるなんてことでもなく、あくまでも魔石グルメは魔石グルメの中で話が進むのでご安心ください。


今日もアクセスありがとうございました。

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