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魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
二十章ーシュトロムの祭りー

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[後]レオナードとバッツと色男(女)



魔石グルメ一巻の書影が公開になりました!https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1152209/blogkey/2153317/

ページ最下部にもありますが、活動報告にも投稿しておりますので、是非ご確認いただけますと幸いです。

 彼ら二人がアインの屋敷を訪ねて十数分。

 今日の報告を終え、マルコと騎士について語り合ってたバッツを傍目に、レオナードがアインの来訪に気が付いた。



「アイン様。では、私は屋敷の中にいますから」


「うん、何かあったら呼ぶよ」



 屋敷の訓練場へ、アインと共にやってきたのはクリス。

 彼女の服装は、非番の際に着ているシンプルなシャツとズボンというものに過ぎずとも、隠されず溢れる気品と美は、年頃のレオナードとバッツにとっても魅力的に見えた。

 ただ、レオナードが目聡く気が付いたのは、彼女とアインの距離感に加え、クリスがアインを見る目線そのもの。



「……何かあったのだろうか」



 不審ではなく親密さが増しているように見えたのだ。

 物理的距離間の近さは気のせいか? 目線が以前より柔らかくなったのは偶々か?

 一つ一つの変化は小さいながら、どうにも気になって仕方ない。



 ――ただ、レオナードがこれ以上の察しがつかない理由は、やはり偏に女性との関わりが少ないからか。

 婚約者が居ることはアインら皆に隠していたほど、実のところ彼は照れやすい。

 自分が気にし過ぎかと完結し、やってきたアインに近づいて片膝を折った。



「バッツ、そのままマルコさんと話してていいよ。話はレオナードに聞いとくから」


「お、悪いな! それじゃお言葉に甘えて……」



 敬意がない口調ながら、彼と話すマルコもその態度を容認する。

 アインの友人としてもそうだが、この場が公式の場ではないことを踏まえての判断だった。

 気分よく返された返事に笑ったアインは、そのまま膝を折ったレオナードへ近寄る。



「殿下、長旅だったと聞きました」


「少し気分転換にもなったし、そう悪くない仕事だったよ――あと、民の前じゃないし、膝は折らなくて大丈夫だからね?」


「承知いたしました。では失礼して……」



 立ち上がったレオナードはふと考えた。

 旅の途中、クリスと何かあったのかを聞いてもいいだろうか、と。

 ただ、場合と理由によっては当然敬意に欠く。



 迷った挙句尋ねずにいたが、アインが気の利いた(、、、、、)言葉を発する。



「別に屋敷の敷地内なんだし……クリスも心配性だよね」


「おそらく護衛としていらしたのでしょうが、私はクリスティーナ様のご方針に賛成ですよ。何か事があってからでは遅いですから」


「……レオナードまで似たようなことを言うのか……ま、まぁいいや」



 会話に出たのだ。このまま尋ねられそうなことに気が付き、



「そういえば殿下。ご同行されたのはクリスティーナ様お一人だったと聞きましたが、イストやバルトはいかがでしたか?」


「ん? まぁ……さっきも言ったけど気分転換になったし、バルトではパーティにも参加してきたよ。シルビア様に頼まれてね」


「パーティ、ですか?」


「そ、パーティ。クリスも珍しくドレスを着てさ、一緒に行ってきたんだよね」


「ッ――つまりその、いわゆる護衛としてではなく……と?」



 だとすれば一騒動だ。

 王太子が女性をパートナーとして連れてるなら、その相手は確実に深い仲――あるいは、そうなるであろう相手に限定される。

 女性が家族関係になければ、良くある話ならば側室や……例えばクローネを連れていれば、周囲の者は婚約者と認識するはずだ。



「レオナードの言う通りなんだけど、ここだけの話、実は俺も緊張してたんだよね」


「は、はぁ……緊張といいますと、どのようなパーティだったのですか?」


「いやパーティがっていうよりも……ほら、いつもと違うクリスが隣にいたからさ。ドレスで化粧も髪型も違ったし、だからなんていうか……俺だって、別に女性慣れしてるわけじゃないからね?」



 アインの言い分は、クローネやオリビア相手なら慣れがあるという意味だ。

 二人とは、幼い頃から物理的にも近い距離が多かったが、クリスと腕を組むほど距離が近いのは、おそらく片手で数えるぐらいしかない。

 年相応の少年らしさを見せたアインを、レオナードは微笑ましく感じる。



「なるほど。クリスティーナ様の魅力に惹かれていたと」


「あれ? そういうことになるの?」


「普段、騎士服で隣にいらっしゃるときは緊張しておりますか? 違うのでしたら、そういうことではないかと」


「魅力に惹かれて……クリスの……い、いや、クリスは綺麗なのは良く分かってるけど……なるほど、そういうことになるのか……」



 アインは決して、気持ちに鈍感ではないはずだ。

 彼の脳裏から離れないのは、クローネという女性に対する一途な想いで、だからこそ無意識のうちに否定していた可能性がある――が、事情をよく理解していたレオナードにとって、実はこの流れはそう悪く思えなかった。



「我ら臣民からすれば喜ばしいことです。……クローネ様のお気持ちもあるかと思いますが、きっとお察しいただけるでしょうから」


「クローネ? えっと……なんでクローネ?」


「いえ、大したことではありません。アイン様の……いえ、イシュタリカの未来に幸あれということですので」



 言葉の意味が理解できないアインに対し、こほんと咳払いをして話題を変える。



「ところで、今日の尋問の報告がありまして」


「あぁ……あの変な――っていうのは失礼だけど、個性的な人の?」



 レオナードがその言葉を聞き目を見開く。



「おや、殿下は彼女の人となりをご存じだったのですか?」


「前にギルドですれ違ったことがあるから、話すのが大変そうだなーって思ってた」


「……仰る通り、バッツは問題なかったのですが、私が苦労してしまいまして」



 すると、つい先ほどの苦々しい思い出を語るレオナード。

 今日に限って言えば、バッツが居なければ更に苦渋を味わった自覚があり、その感情は隠されることなく表情を彩る。

 聞いたアインは苦笑を返し、



「仕方ないって。誰だって相性はあるし、俺も苦手だからレオナードと一緒だよ」



 アインの優しさはいつもと変わらず、感謝の念が彼に伝えられた。

 当然、レオナードはレオナードで納得しきれていないが、寛大な言葉に深く頭を下げた。



「ウォーレンさんがもう対策してるからさ。早く捕まってくれると楽なんだけどね」


「えぇ、同感です」


「そう上手くいかねえだろうけどな。無駄に広い大陸ってのが玉に瑕ってことだ」



 ――二人の会話もようやく一段落してきたところで、マルコと話していたバッツがやってくる。



「バッツ。そう下がるようなことを言うんじゃない」


「いやいやレオナード。あのな、犯罪者なんてそりゃ山ほどいるけどよ、僻地に逃げられると結構面倒なんだぞ?」


「だ、だが……」


「レオナード殿。言葉は不適切ですが、バッツ殿が語る言葉もそう間違いではないのです」


「マルコ様まで……」



 つづけて近寄るマルコも、どこか悔し気に言ってみせた。

 すると、彼は咳払いをして居住まいを正し、どこか忌々しいと言わんばかりに言う。



「私は気配を察知する力に長けておりますが、それでも、逃げることに専念されてしまうと面倒です。例えば魔道具、あるいは魔物の素材を用いた装備を羽織れば、見知らぬ相手を探るのであれば特に難しいのです。故に、バッツ殿が言った面倒ということになるのですよ」


「なるほど、マルコ様がそう仰るのでしたら……」


「あ、おい。レオナード? お前どうして俺の言うことを信用しないんだよ?」



 アルベロ男爵邸でのことは鳴りを潜めたのか、レオナードが不敵に笑う。



「日頃の行いだ。もう少し雑さが消えれば信じられるんだがな」


「はぁ……ったくよ、アインに会ってから急に元気になりやがって」


「それは当然のことだろう。どうしてアイン様を前にして、辛気臭い顔が出来るというのだ」


「えぇ。それに関してはレオナード殿が大いに正しいことですな」



 クリスは誰よりも忠犬としての資質に富んでいる。だが、マルコとレオナードの二人もそう負けていない。

 彼女と方向性が違うものの、アイン以上の主君が居ないと思う節は共通していた。



「まぁいいか。で、アイン――お前、来週の祭りまでの予定はどうなってんだ?」


「目を覆いたくなるぐらい詰まってるよ。ウォーレンさんたちとの折衝もあるし、俺のとこで止まってた特産品の話とか、他にも他の都市との販路の関しての話もあるし、条例もそうだし、ギルドにアルベロ男爵家のことも含めて、足を運ばないといけないんだよね」


「で、殿下? それらは殿下がしなければならないことなのですか?」


「……さすがに仕事しすぎじゃねえのか? お前、王太子だろ? そんなに苦労する必要ねーだろ」


「王太子だけど今は領主でもある。だからしょうがないし、別に大丈夫だよ。レオナードだって、フォルス公爵がシュトロムの仕事をしてたときなんて、大変って話聞いてなかった?」


「それは……はい。やりがいだらけの都市だと聞いておりました」



 物は言いようだが大筋は正しい。

 アインも面倒には思わず、この都市を繁栄させようとするやりがいを感じていたからだ。

 満足げに笑ったアインはぐっと身体を伸ばすと、二人に向けて提案する。



「ついでにご飯食べてってよ。ロランが居ないのは残念だけど」



 レオナードはさっとマルコの顔を窺う。

 彼はすぐに頷き返し、レオナードは快く応じる。



「ありがとうございます。では、お言葉に甘えまして」


「あいつも今は大変らしいしなー。新しい戦艦? だかなんだかの設計をしてるって聞いたぜ、まぁ使える素材が無くて、夢物語らしいけどな」


「へぇー……どんな船?」


「空を飛ばしたいらしいぜ。できたらすげえけどよ、馬鹿みたいな話に変わりねえって」



 だが、あのロランという男も天才だ。

 彼ならやってくれそうな気がしてならないのは、実は三人の共通の想い。

 皆は顔を見合わせて笑うと、アインに倣って歩き出す。



「アイン、祭りの最中も忙しいのか? 余裕あったら一緒にって思ったけど、さっきの様子だと無理そうだな」


「んー……悪いけど厳しい。多分、祭りまで息をつく暇も無い気がするし」



 故に今日の語らいの時間は重要。

 三人に加え、マルコもそれを分かっているからこそ、レオナードにすぐ返事を返した。

 願わくば祭りは静かに終わりますように……と、この一言に尽きた。



今日もアクセスありがとうございました。

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