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魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
十九章

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『書籍化記念&一周年』学園都市でのやりとり『閑話』

いつもアクセスありがとうございます。

皆様の応援のお陰で、無事に一周年を迎えることができました。

それと共に、書籍化の報告をさせていただきます。


レーベル様やイラストレーター様についてなど、詳しくは活動報告をご覧いただければ幸いです。

実はすでに、素敵なキャラクターデザインもいただいております。

こちらも活動報告にございますので、是非、ご覧くださいませ。


これからもWEB版ともども、魔石グルメをどうぞよろしくお願い致します。

重ねて、皆様にお礼申し上げます。

いつも多くの応援、本当に本当にありがとうございました。

 ※時系列としては海龍の前で、クローネもまだ学園に通っていた頃の話です。

 齟齬が生じていたら申し訳ありません。


 ◇ ◇ ◇ ◇



 学園都市と呼ばれる、学園が集合した地域にいるアイン。

 昼下がりに学園を出て、近くにある食事処へ足を運んでいた。

 テラスとなった一席に腰かけて、護衛のクリスに話しかける。



「……これさ、学園の一年生にやらせる内容じゃないよね?」


「と言われましても……王立キングスランド学園は、イシュタリカで最高峰の学び舎ですから……」


「まぁ、分かってはいたんだけど……仕方ないか」



 アインが言いたいのは、年相応の勉学は求めていないが、これは度を越していないかという疑問だ。

 とはいえ、クリスも口にしたように、学園の質が高すぎるから仕方がない。



「学園を出たんですから、城に戻ってから手を付けていかがですか?」


「……クリスさんが言うのも分かるんだけど、たまにはさ、こんな気分転換もいいかなって」


「なるほど……あながち間違いではありませんね」


「というわけで、ご飯食べたから教科書を開いてるわけだ」



 しかし、さっき弱音を吐いた通り、順調かと言われればそうでもない。

 アインが今見ているのは、今日配られたばかりの新しい教科書。

 一組(ファースト)の皆が苦笑いを浮かべていたのは、随分と記憶に新しい。



「天気はこんなによくて暖かいのに、ペンが動かないんだけど……どうしてかな?」


「アイン様、私に一つ助言がございますよ」



 まさに天の助けと言わんばかりか、クリスの言葉にアインが身体を乗り出した。

 向かい側に座るクリスに顔を近づける。



「ひたすらにペンを動かすのが、正解への近道です」


「――なるほどね。うん。それはいい助言だった、最高だよ」


「あははは……その、応援してますね」



 初夏の王都は少し暑いが、今日は風があって涼しい。

 アインはその風を感じながら、もう一度、教科書へと目線を戻した――のだが、ふと、聞きなれた友人の声がとどいた。



「――お、アインじゃねえか」


「バッツ。ここは外なんだから、その呼び方はまずい」


「っとと……失礼、殿下」



 やってきたのは二人の友人。

 バッツとレオナード、入学以来ずっと同じ組の友人だった。

 二人の手元にも、アインと同じ教科書がある。



「アイン様。私は近くで護衛しておりますね」


「ん、りょーかい」



 二人が来たところで、クリスは席を立って少し距離をとる。

 申し訳なさげにしていた二人も、アインに促されて席についた。



「なんか悪いことしちまったみたいだな」


「えぇ……よろしいのですか? 殿下」


「――クリスさんは、二人が優しいのも分かってるよ」



 仕事に忠実な彼女だから、素直にこの配慮を受け取ってほしい。

 アインの意を組み、二人はそっと頷くと、店員へ声をかけ飲み物を注文した。



「あれ、ロランは?」


「あいつは家に帰ったぞ。家の仕事手伝うーって急いでたしな」


「うーん……それは残念だけど、仕方ないか」


「ところで、殿下。その……殿下も苦労なさっているのですか? その、本日配られた物に……」



 レオナードの目線がアインの手元に向かい、ペンと教科書を往復する。

 その声を聞いてか、三人は一斉にため息を漏らし、一様に学園都市の通りを眺め出した。



「おうおう……今日も賑わってんなー」


「あぁ、そうだな……」


「……いい天気なのに、気分は晴れないっていうね」



 二人から漏れた言葉につづいて、アインも切なげに言葉を漏らす。



「その――殿下はどのぐらい進みましたか?」


「あー、俺は……この辺り」


「おいおい、進み過ぎだろうが……! 俺とレオナードだって、さっきまで図書棟で気合いれてたっていうのによ」


「……バッツ。殿下の場合、我々よりもその、なんだ? 責任感などがだな……」


「あ、あぁ……まぁ、それもあるだろうけどよ」


「二人とも、この話はよしておこう」



 アインが軽く手を叩き、この何とも言えない空気に活を入れる。

 折角、学園の外で会えたのだから、もう少し明るい話がしたかった。



「お、アイン。あっちの方見て見ろよ」


「だから……殿下だろ、バッツ」


「いや、今は三人だけだし、アインでいいよ」



 ニカッと、バッツが勝ち誇ったように笑う。

 レオナードは呆れた様子で彼を見て、アインの判断を尊重した。



「で、あっちの方ってなに?」


「あっちだって。ほらみてみろよ、リーベ女学園のご令嬢たちだぞ。うちに次ぐ厳しさを誇る学園だ」


(リーベ女学園……あぁ、クローネが居るところか)



 三つ年上の彼女は、オリビアの推薦とララルアの推薦を手にし、

 ウォーレンの手助けもあって、リーベ女学園へと編入学している。

 オーガスト商会の建物からもだが、なんだかんだと、彼女は城に寝泊まりする方が多い気がしてならない。



 ……と、考えているとなんとやら。

 バッツが見ていた女生徒の中に、クローネが混じっていたのだ。



「……えー」



 咄嗟にクリスに目配せをしたが、彼女も苦笑いを浮かべている。

 クローネとアインの距離が近いこと、これ自体は別に隠していることではなかったが、こうして、外部で物理的な距離が近づいたのははじめての経験だ。



「では、少し皆様でお茶をしていきましょうか」


「素敵ですわ。さぁ、クローネ様も」


「あ……え、えぇ……分かりました」



 少し強引な令嬢に手を取られ、クローネは笑顔で応じる。

 彼女を含んだ三人組の令嬢たちは、アインらがいる店に足を向けた。



「こちらの席に致しましょうか。さぁ、どうぞ、クローネ様」


「……ありがとうございます」



 アインは咄嗟に椅子の角度を変え、彼女に背中を向ける。

 とはいえ、近くにクリスが立っていることで、アインが居ることに気が付いている。

 むしろ、アインが背中を向けたことでムッとしたのは言うまでもない。



「あ? おいおい、アイン……どうしたんだ?」


「いや……ほら? 俺ってお披露目されたばっかりだし、同年代とはあんまり……ね?」


「んー? あぁ、ってーとあれか? 目立ちたくないってことか?」


「そうそう! 分かってくれて助かるよ」



 勿論本心は違うが、クリスはそんなアインの事を、何とも言えない苦笑いでみるばかりだ。

 すぐ傍に座るレオナードは、バッツの言葉をそのままに信じて、壁を作るようにアインの近くに席を動かす。



「私が道沿いに座ってますので、どうかご安心ください」


「あ、うん……ありがとう……」



 心が痛い。

 レオナードの気遣いが心に痛みを与えてくる。

 だが、顔を合わせるのもなんとなく気恥ずかしいのだから、今はこのままにしておくことにした。



 やがて、令嬢たちは席についた。

 クローネが座るように促された席からは、背中を向けるアインが見える。



「――ところで、先日の王太子殿下のお披露目はご覧になりまして?」


「えぇ! とても凛々しいお方でしたわね! 第二王女殿下にそっくりで、すごく素敵な方でしたわ」


「私もそう思いましたの。……クローネ様はいかがでしたか?」



 ピクッと、アインの身体が揺れた。

 クローネはその様子に気が付くと、どうしたものかと考え出した。

 素直に言うべきか、それとも、いつものように悪戯を加えてしまうべきか……と。



「……あの人がオーガスト商会の令嬢か。なるほど、騒ぎになるのが良く分かるな」


「あぁ。すでに大貴族からも見合いの申し出が殺到してると聞くが、私も納得だ」



 二人は令嬢たちにチラッと目線を向ける。

 クローネを挟む二人も十分な美少女だったが、やはり、クローネという華は目立ちすぎている。



「器量がいい。いずれは大商会になるって言われてる、オーガスト商会の令嬢と言う立場。そりゃーモテるだろうな」


「私も同意だ。しかし、宰相閣下が止めていると聞くが……殿下? どうなさったのですか?」


「い、いや……別に……少し暑くなってきたかなーって」



 主に緊張からなのだが。

 レオナードはそっぽを向いているアインを不思議に思う。

 三人が話していると、少しずつ、令嬢たちの会話が新たに聞こえだした。



「私は……そうですね。少しやんちゃなお方かなと思っています」


「まぁまぁ……! そういえば、クローネ様は城に出入りなさっておいでですものね」


(やんちゃって、俺が……!? いやいやいや、たまに暗黒ストローを使ったり、カティマさんと遊んでるぐらいでしょ……!)



 当然だが、傍から見れば十分にやんちゃだ。

 控えているクリスも、クローネの言葉に深く頷いて同意している。



「……アイン、お前やんちゃなのか?」


「え、何が? 何の話?」


「いや、だから……おう、なんでもねえわ」



 答える気が無いアインに気が付き、バッツは言葉を遮った。

 その判断の裏には、レオナードのきつい目線があった事は言うまでもない。



「ですが……王太子殿下はお優しくて、気配りが出来る――素敵なお方ですよ」



 話す言葉自体は本心からだ。

 しかし、それをこの場で口にしたのは、クローネ自身の悪戯心が見え隠れしている。

 背中を向けるままなら、貴方を照れさせてあげるから。

 そんな気持ちが前に押し出されているのだ。



「……殿下」


「う、うん……なに?」


「クローネ殿は見る目があるお方のようですね」


「あ、うん……そうね」



 アインの周辺は個性的な人物ばかりで暇がない。

 友人一人とっても、その会話一つとってもそうなのだ。

 だが、このまま彼女を野放しにするのはまずい。

 原因は背を向けた自分にあるが、アインはクリスに目配せをして立ち上がると、



「ごめん、あの子――クローネは、俺が背中を向けてたことが気に食わないみたいなんだ」


「……だと思ったぜ。ったく、照れてないでさっさといってこい」



 まるで気の良い兄のように手を振り、バッツがアインの背中を押す。

 レオナードも優し気に笑うと、頭を下げて見送った。

 立ち上がったアインはクリスと合流し、楽し気に会話をつづける三人組に近づく。



「――歓談を楽しんでるみたいだけど、失礼するよ」



 少し歩いて、三人の令嬢の席に近づいた。

 二人の令嬢は怪訝な顔をむけたのだが、すぐさま、やってきた人物の立場に気が付く。



「ッ――お、王太子殿下……!?」


「え、え……ど、どうしてこちらに……?」


「俺が通ってる学園が近いんだ。悪いけど、クローネを借りていってもいいかな?」



 二人に断りを入れると、笑って首を傾げるクローネを見る。



「……あら。殿下にお誘いいただけるなんて、光栄ですわ」


「やんちゃな王太子だからね。こんな場所でも気にしないんだ」



 令嬢たちははらはらした様子でアインをみた。

 もしかすると、クローネの言葉に怒っているのかもしれないと。

 しかし、アインはそう言った後、クローネに手を差し出した。



「今日は城に?」


「えぇ。ウォーレン様からの課題もあるもの」


「ちょうどいいし、一緒に帰ろうか」


「ふふ……背を向けたことのお詫びかしら?」


「まぁ、そんな感じかもね」



 アインとクローネの二人は、慣れた様子で会話をしてみせる。

 王太子に向けてのクローネの態度もそうだが、王太子からの態度のそれも、親しみやすくて気を奪われた。



「お二人とも。本当に申し訳ないのだけれど、今日はこのあたりでお暇いたしますわ」



 呆然とした令嬢たちに頭を下げ、彼女はアインの隣に立って歩き出す。

 少し離れた場所からは、バッツとレオナードも見送っていた。



「あのクローネ様が……悉く殿方をお断りしていたクローネ様が……」


「えぇ……素敵な笑顔で、王太子殿下と一緒に……!」



 去り際に、こんな会話が聞こえてきたりもしたが、アインたちはそれを笑って流す。

 少なくともいえることは、王家はアインとクローネがどういう関係かを公表していない。

 しかしながら、彼ら王家は、二人の仲を否定することもないだろう。



「お二人とも? 今日ぐらいの者たちなら構いませんが、人が多い場所では言葉遣いをですね……」


「ごめんね、クリスさん。気を付けるよ」


「私も、申し訳ありませんでした」



 二人は口にしていないが、こうして、学園都市で会えたことを嬉しく思っていたのだろう。

 これを思い、クリスは強く言いつけることはしなかった。

 楽しそうに歩いている二人を見ていると、そんな気分にもなれないのだ。



「――あら? それ、新しい教科書かしら?」


「そうだよ。難しくて気落ちしてたら、クリスさんからペンを動かせば解決……って助言をもらったんだ」


「素敵な助言ね。それが何よりも近道だわ」



 若干不満げなアインの顔を、クローネは覗き込むように眺めた。



「お城に帰ったら、私が教えてあげる」


「え……ク、クローネ……分かるの……?」


「私の方が年上だもの。それに、私だって努力してるんだから」


「……お手柔らかにお願いします」



 教えられっぱなしと言うのも好きじゃないが、今日は彼女に甘えることにしよう。

 悔し気に頷いたアインを見て、クローネとクリスの二人は、今日という日の出来事を思い出に残したのだった。




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