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魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
十七章 ―無限色のトカゲと、龍信仰の者達―

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友人と。

夕方頃、活動報告で明日の更新とお知らせしたのですが、意外と余裕が出来て書けたので更新します。

お騒がせして申し訳ありません。


 アインはクリスと二人で外に出た。目指すのは訓練場だ。



「立ちなさい。立つのをやめた者から、この屋敷を去るのです」



 訓練場に近づいたアインの耳に、マルコの声が届く。

 基本的に、彼ら黒騎士や近衛騎士の休日というのは不定期だ。

 だというのに、マルコが休日を取った日というのは、いまだかつて見たことがない。



 石畳を見てみると、息絶え絶えの三人の姿。

 ディル、クライブ、そしてエルフのサイラスだった。

 三人の武器は性格が分かる。



 ディルはその実直な性格ゆえか、中型の直剣を持つ。

 つづいて、クライブは直情的な性格のとおり、ロングソードを持つ。

 最後に、サイラスは長弓を使う戦士だが、この場においては短剣を所持している。

 彼の場合は、性格よりもエルフに向いている武器――といったところだ。



「……黒騎士の訓練は、相変わらず厳しいようですね」



 壮絶なこの場をみて、クリスが言った。

 近衛騎士団の団長を務める彼女からしても、頬がひきつる光景のようだ。



「そうみたいだね。さてと、訓練の邪魔をするのは忍びないけど――」



 アインがゆっくりと訓練場に近づく。

 訓練を遮ることに申し訳なさそうに感じ、そのまま声にだした。 



「訓練中にごめんね。マルコ、少し用があるんだけど、大丈夫?」


「おぉ、これはアイン様……」



 マルコはアインに答えると、三人から離れてアインに近寄る。



「少しの間休憩にしましょう。昼食の後に再開します」


「はっ!」



 まずはじめにディルが答え、



「はぁ……はぁ……あ、ありがとうございました……ッ!」



 呼吸すら辛そうにクライブが答える。

 立つことすら厳しそうで、足元がふらついていた。



「ご、午後の訓練に向けて、英気を養ってまいります……」



 最後にサイラスが答えるのだ。

 三人は去り際にアインに対して頭を下げると、時間を無駄にしないようにと、急ぎ足でこの場を後にする。



「その、三人とも大丈夫?」



 三人の後ろ姿を眺めながらアインが案じた。



「……実は、以前の訓練はもう少々、大人しいものだったんです」


「厳しくなっていったのは、何か理由があるの?」


「ございます。団長が筆頭となり、それを望んだからですよ」



 なるほど。アインは頷いた。

 まさかそうした事情があるとは思わなかったが、向上心が凄まじいということだろう。

 自らそう申し出たということは、決して訓練に不満はないはずだ。

 そう、アインが安堵する。



 そういえば、と。

 三人の返事を聞いて感じたのだが、三人には体力差があるようだ。



(一番元気に答えたのはディル。息を切らしながらだったけど、それが表に出ないように気を付けてた)



 つまり、マルコの厳しい訓練についていけてるのだろう。

 アインはつい嬉しさを感じてしまう。



 残り二人はそう大差がないように思えるが、サイラスの方がクライブよりは体力があるようだ。

 エルフの里で戦士長を務めていた影響だろう。



「ごめん。話がそれちゃったけど、ちょっと意見を聞きたいんだ」



 若干の申し訳なさを顔に乗せ、アインが尋ねる。

 前方にいるマルコは、熟達した老兵のような直立で聞く。



「俺もさっき、クリスから聞いたんだけど――」



 語るのは犯罪組織とやらについてだ。

 未だ情報は少なかったが、マルコは真剣にそれを聞く。

 そして、すぐにアインが足を運んだ目的が明かされるのだ。



「今のシュトロムは大事な時期だ。だからこそ、犯罪組織にだけ全てを向けることはできない」


「仰る通りかと。都市を――そして、国の長たる者ならば、ただ一つのことに見向きすることは愚行でしょうね」


「そうなんだ。だから俺は、人員を選んで調査することに決めたんだけど」



 ここでマルコは察した。その人員とやらが自分なのだと。

 一方でアインは心配だった。そんなこと、そんなことというには些か不謹慎だが、マルコに任せるようなことなのかと。

 しかしそれは杞憂だ。



「また新たな任務を頂戴できたこと。我が騎士道に新たな誇りが連なります」



 彼は膝をついた。

 すると、上半身を低くし、胸に手を当てて喜んだのだ。



「あ……えっと、受けてくれる、かな」


「主君から頂戴する任務。その栄光を他人に譲ることはできません」


「――感謝してるよ。マルコ」



 アインはそう言うと、正式に命令を下す判断をした。

 請願や陳情の書類が届くときのように、アインは命令書を(したた)めることを決める。

 後ほど、部屋へ戻ったら羊皮紙にペンをとることにする。



「ですがアイン様。一つ、提案してもよろしいでしょうか」



 主君のアインが言い終えるのを待ち、マルコが尋ねる。

 声は彼にしては珍しく、アインの顔色を覗うような遠慮が見え隠れしている。



「私がこのシュトロムを調査するには十分ですが、もう少々……手が欲しく存じます」


「手……つまり、調査をするための仲間ってことだよね?」


「ご推察の通り」



 当然だ。アインも同じことは考えていた。

 いくらマルコだろうとも、一人に任せるつもりはさらさらない。

 苦労を掛けるにはことが過ぎる。



「城に連絡をして、いくらか調査する人員を選ぶつもりだった。この際だから、マルコの意見を聞きたい」


「私が求めるのは優秀な文官と、引き際を弁え、体力のある武官です」


「……なるほど、そうきたか」



 難しいな。と首を傾げる。

 どちらも探せばいるはずなのだが、ちょうど手が空いてるかという疑問がある。



「あ、いえ、アイン様。そう難しく考える必要はございません」



 すると、マルコが手を振って言った。



「得体の知れぬ悪辣さを秘めた者を相手取るとき、私が求めたいのは引き際と、冷静な判断力でございます」



 悪辣。犯罪組織には当然の言葉だ。

 マルコの声には、正義というよりかは、アインの御許でその行いをすることへの不快感が募る。



「戦士としての強さは求めておりません――とはいえ、歩き回ることができる程度の体力はほしく存じますが」



 いかがでしょうか? どなたか、人員はいませんか?

 と、マルコは最後に尋ねたのだった。



「そうか、これはあくまでも調査だから、奴らの殲滅は目的じゃない……」



 十分に条件がゆるくなる。

 だが、道義をそれた者たちをどうするべきか。

 それにたいして熱誠をもって対峙できる人物を選ぶ必要がある。



「このような調査であれば、最低条件を満たしさえすれば、後は心の持ちようを重要視したいものですが」


「……クリスは誰か覚えはない?」



 斜め後ろに控える彼女に語り掛けた。

 真っ白なシャツを金糸で彩り、耳の下で艶やかに揺らしながらクリスが思考する。



「文官として優秀な方に……ある程度の教養がある武官……そして、人となりを信じられる人物ですか」



 意外と条件は多い。クリスの返事に、アインはそう感じた。



「正直言えば、おおよその文官と武官が該当すると思うのですが……」


「俺もそう思う。それに、皆が信用に足る人物だって、俺はそう考えてるんだけど」


「ですね。ただ、欲を言えば……アイン様と密接にやり取りができる相手がいいんじゃないかなーって思います」



 しまった。条件が新たに追加されてしまった。

 痛感したのだ。調査とやらは、やはり難しいことなのだと。

 自らが赤狐の調査を行っていたときとは事情が違う。



 当時はイシュタリカそのものが調査を動かし、資金や人員、数えきれない多くの条件が選定の末に進んでいたのだ。

 そこには宰相ウォーレンや、多くの重鎮の協力もあり、アインはここで、経験不足を痛切に思った。



「例えば俺とクローネみたいな感じってことか……」


「むしろ、私とアイン様でも大丈夫ですよ? 私もアイン様も、文官仕事はいくらでもできますし……私とアイン様で頑張りますか?」


「あ、うん……確かにその通りなんだけど。俺とクリスだとしても、調査にはいけないからね?」



 何がむしろなんだろう。唐突な張り合いだ。

 だが、前者も後者も現実味は無い。アインが行動できないからこそ、こうして調査の計画を練っているのだ。

 苦慮しながらも、正解へと少しずつ近づくしかない。



「文官に武官……それが二人……ついでに、俺とのやり取りとかに問題がない……」


「――あれ?」



 ふと、クリスが手をぽん、と叩く。



「今考えたんですけど……その二人って、ちょうどよく居た気がしたんですが」


「え? 嘘。誰のこと?」


「アイン様の学園時代のご友人ですよ?」



 うわの空にクリスを眺めた。

 学園時代の友人、こういっては何だが、一組(ファースト)は生徒数が少なく入れ替わりが激しい。

 つまり、友人という存在は作りにくいのだ。

 胸を張って友人と言えるのは三人。レオナード、バッツ、ロランだ。



「あ……そっか。レオナードとバッツか」



 文官としてのレオナードは本当に優秀だ。それに加え、バッツは見習い騎士扱いだが、それはあくまでも、騎士となって間もないからだ。

 その実力は、同年代――そして、熟練した近衛騎士相手でなければ、勝利を収めることができるぐらいには成長している。



「でもさ、二人とも貴族なんだけど。レオナードなんて、公爵家だよ?」


「こういっては何ですが、ディルも同じく公爵家の人間ですし、突き詰めれば、アイン様は王太子なんですけど……」



 ――意外と何とかなりそうな気がした。

 アイン自身が行動派だったという事実もあるのだが、ディルの例を言われれば納得できる。



「あの……手紙、書いてみるのはどうでしょう? 聞いてみなきゃわからないですし……」


「そうしようかな。……マルコ、こんな感じで進めてみても構わない?」


「お心のままに、アイン様」



 まさか、こうして一緒に仕事ができるようになるとは考えた事もない。

 彼らの返事待ちとなるのだが、アインは密かに期待感を募らせた。



先日感想欄にいただいたんですが、制服?的な話を書きたくなりました。

もしかすると、姦しい閑話をあげるかもしれないので、その際は楽しんでいただけるよう頑張ります。

今日もアクセスありがとうございました。

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