表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)  作者: 俺2号/結城 涼
少年期の終わり ―暴食の世界樹と、薔薇の宝石―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

237/623

少年期のエピローグ2

たぶん、あと一話か二話で少年期をまとめられるかともいます。

 アインがようやくイシュタリカに戻る。だが、詳しい説明は王都民にされていない。

 例えばアインが暴走してしまったことや、アーシェたちがこの場にいるということは、一先ず伏せる方が上策だ。

 つまり、王都民に届いた情報といえば、アインがハイムから帰国する――ということのみとなる



 ハイムで何があったのかという疑問ばかりが残っているが、一般的な王都民からしてみれば、そうした詳細よりも、英雄たるアインが戻る方が何よりも重要なのは違いない。



「……陛下。やはり感づかれましたね」


「致し方あるまい。余がここにおり、カティマやロイド……それに」


「えぇ。私もいるのですから、そればかりは避けられませんね」



 王都民は決して城からの報告を受けたのではない。彼らは、シルヴァードやララルアといった、王家の人間が数人で港にやってきたことで気が付いたのだ。

 王太子アインがついに帰国するのか、と。



「――エルとアルだニャ……!」



 皆が港で待つなか、車椅子に乗ったカティマが双子の姿に気が付いた。

 双子は我が物顔で海を進み、海龍艦リヴァイアサンを先導する。ときおり舞い上がる水しぶき……それがまるで祝砲のように光を反射させた。




 ◇ ◇ ◇




 ――わぁぁぁぁあああああああッ……!



「ッ――す、すご……」



 リヴァイアサンから小船に移ったアイン。そのアインが姿をみせると、王都民は物凄い盛り上がりをみせた。



「マグナに調査に行ったときもすごかったけど、それ以上だ……」


「ふふ……英雄さまなんだから、当然でしょ?」



 その英雄というのも、今回はハイムに渡って戦争を終わらせた……と追加される。



「言わんとすることは分かってるけど、クローネは落ち着きすぎじゃない?」


「私だって、前だったらもう少し驚いていたと思うわよ?」



 そう。クローネも同じ歓声を浴びているのだ。だというのに、彼女は妙に落ち着いており、アインと対照的な態度をしている。



「――でも、アインを待ってた時の心境に比べれば、あとはもう些末事にしか感じられないもの」


「……なるほどね」



 結局のところ、クローネも大物だったということだ。

 すると、アインも覚悟を決めて深呼吸をし、



「クローネ。行こうか」


「……えぇ」



 クローネに手を差し出し、彼女の手をとる。

 滑らかで温かい感触がアインに伝わり、それだけでも舞い上がりたくなるような気持ちになれた。

 一方のクローネは、珍しく照れたように微笑みを漏らし、軽く頬を上気させる。



「あれ? もしかして、照れてるの?」


「――ふふ。照れてたらどうするのかしら?」



 だが、クローネはあくまでもクローネだ。

 照れ隠しすら上品にこなすと、むしろアインにどうするのかと尋ねる。



「別にどうもしないよ。ただ、可愛いなって思っただけ」


「……もう」



 軽口をたたき合い、アインがゆっくりとクローネの手を引く。

 二人はタラップを進んで港に降りる――はずだったが、



「でも、手を引くってだけじゃ……凱旋らしくないかな」


「え……? きゃっ……ア、アイン……!?」


「怖かったら下ろすけど、だめ?」


「……お、下ろしたら私がアインを袖にしたみたいで、アインが笑われてしまうから」



 いわゆるお姫様抱っこをされたクローネが、顔をアインの胸元に埋めながら答える。

 アインを気遣ったようなセリフではあるものの、クローネが喜んでるのは言うまでもない。その証拠に、見え隠れする彼女の耳元が真っ赤に染まっていた。



「まったく。王太子の心まで気遣えるなんて、素晴らしい補佐官だよ」


「――分かってていってるんでしょ。もう……!」



 アインが惚けたようにクローネに話しかければ、クローネは照れ隠しをしながらもアインの服をそっと摘まむ。

 そのまま胸元で『ばか……』とつぶやくと、身体中から力を抜いて、全てをアインへと委ねる。




 ◇ ◇ ◇




「帰国そうそう何イチャついてるのニャーッ!」


「今日ぐらい大目に見てよ。って……な、なんで車椅子に?」


「……色々あったのニャ!」



 一番に声を掛けたのはカティマだった。彼女はクローネを抱くアインをみて、茶化すように話しかけたのだが、逆にアインから反撃を食らう。



「い、色々?」



 だが、色々と言われてもアインが知る由もなく、アインはクローネを下ろすと、シルヴァード達に目線をそらす。



「――お爺様。ただいま戻りました」


「……余の言葉を無視して向かった挙句、最後は暴走したとな?」


「返す言葉もありません。自分の力を過信した結果です」



 アインは素直に謝罪する。自分が多くの迷惑をかけてしまったことは分かっている。

 だからこそ、ここで赤狐を倒して大団円なんだから――と終わらせる気はさらさらない。



「とはいえ、暴走したのはクローネも同じことであるが」


「はい。私も理解しております」


「余は信賞必罰を信条としておる。よって、二人には罰を与えよう」



 アインとクローネは神妙な面持ちで耳を傾けた。シルヴァードが語ることはもっともで、なぁなぁにするのは良くない事だ。

 だからこそ、シルヴァードの罰を待ったのだが……



「二人に与える罰は、イシュタリカを余の治世よりも繁栄させよ――ということだ! この、愚か者共が……ッ!」


「お爺様ッ! それは罰とは――」


「陛下……ッ!?」



 二人がシルヴァードの言葉に異論を唱えようとした瞬間。シルヴァードが二人をまとめて包み込んだ。



「よくッ……よくぞ帰ってきた! この、愚か者共が……ッ!」


「……ご心配をおかけしました。お爺様」


「陛下……」



 シルヴァードは涙していたようだ。アインの首元に一滴の涙が流れていったのがその証拠となる。

 彼はそのまま数秒二人を包み込むと、突然、身体を翻して歩き出す。無言で歩き出したことで二人は戸惑ってしまうが、



「ごめんなさいね。二人とも。……あの人はまだ王様だから、隠さなきゃいけないこともあるのよ」



 すると、入れ替わりにララルアが近づいた。



「アイン君。お帰りなさい。……クローネさん。アイン君のために命を賭けてくれて、本当にありがとう」



 ララルアはアインを抱きしめると、つづけてクローネを抱きしめた。彼女も涙を流すのを堪えているのだろう、目元が潤んでいるのがわかる。



「私と陛下は先に城に戻ってるわ。二人も、ゆっくり帰ってらっしゃいね――オリビアも城で待ってますよ」


「あっ……お、お婆様……!」



 まだ何も話せていない。オリビアがここに居ないことも気になっていたアイン。

 ララルアを引き留めようとするが、クローネがアインの手を強く握って合図をする。



「……お二人の気持ちも汲んで差し上げるべきよ」


「――わかった。城に帰るまで我慢するよ」


「えぇ。……あ、ごめんなさい。私もお爺様たちがあっちに待ってるみたいだから……叱られてくるわね?」


「それなら、俺も一緒に――」


「駄目よ。これは私の責任なんだから、ね?」



 諫めるようにアインを止めると、クローネは小走りでグラーフたちの元へと駆けていく。

 アインとしては、原因は自分なのだから共に謝りたい……という気持ちだったのだが、



「今度改めて会いに行こう」



 この場はクローネの言葉に従い、場を改めることにする。

 すると、一人になったアインの元へと新たな者がやってくる。



「――アイン様!」



 その声は忘れるはずもない。昔から付き従い、アインのために命を賭けてきた男の声なのだから。



「ディルッ! 無事で……無事、で……あ、あれ……?」



 だが、そのディルの姿が見えなかった。

 アインは困惑した様子で辺りを見渡すが、一向にディルの姿が見当たらない。



「ここですよ。アイン様!」


「……えぇッ!?」



 そこにいたのは、ライオンのような毛並みのケットシーだ。

 腰に剣を携え、アインが見慣れた騎士服に身を包む。だが、どこからどう見てもケットシーだ。



「――グ、グレイシャー家は、他の種族に転生する秘法でもあったの……?」


「は、ははは……話すと長くなるのですが、カティマ様に助けていただき、ケットシーとなってしまったといいますか……」



 ――なにいってるんだこいつは。

 意味が分からずアインは駄猫に目を向ける。が、駄猫は誇らしそうに腕を組むばかりだ。

 奴は使いものにならない。アインはそう考えてディルに目線を戻す。



「ですが! カティマ様のおかげで命びろいできたのです!」


「あ、うん。それは感謝したいんだけど。なんかカティマさん……じゃなくて、駄猫の態度がイラッとしただけだから」



 ディルは困ったように笑い茶を濁す。



「お話したいことがたくさんございます。ですが、私ばかりが話しているわけにもいかず……」


「ッ――と、ところで……ここに居ないけどクリスは!? クリスはどうしてるの……!」


「ご安心ください。クリス様は城で休養中でございます。もうそろそろ目覚めるのではないかと……バーラ殿が仰っておりました」



 ようやくだった。ようやくアインはクリスの無事を確認する事ができたのだ。ハイム王都で合流するはずだったクリスを思い、アインは深く安堵する。



「アイン様。この度は、我々の……いえ、私の力が足りないが故、こうして多くのことを背負わせてしまい……」


「……ロイドさん。ロイドさんはよくやってくれたよ。俺の方こそ苦労をかけたから、むしろ謝りたいぐらいで――」


「そのようなことは……! む? ところで、アーシェ様方はどちらに……?」


「あぁ。あの四人なら、リヴァイアサンの中で休んでるよ。後で城に来るっていってたから、任せていい?」


「む……お任せくださいませ!」



 すると、ロイドは挨拶軽めに歩き出し、四人を迎え入れるための連絡をしに行く。



「申し訳ありません。父上が相変わらず忙しなく……」


「いやいや。元気で何よりだよ。……さてと、それじゃ」


「――アイン! お爺様たちも城に向かうらしいから、そろそろ行きましょう!」



 ある程度話し終えたのだろう。クローネが戻ってくると、城に行くことを提案した。先に向かったシルヴァード達を追うためにも、アインは素直に頷く。

 そして、アインは歓声がつづく王都に目を向け、声高らかに言葉を口にする。




「……ただいま。イシュタリカ!」






今日もアクセスありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
>>>原作書籍版、コミックス版もどうぞよろしくお願いいたします!<<<
kk7v3ln45t9go535jpgm38ngs0a_1dgr_is_rs_
― 新着の感想 ―
お帰りアイン王太子(*ノ゜Д゜)八(*゜Д゜*)八(゜Д゜*)ノィェーィ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ