巽さんは、反復横跳びが学年一位らしいんだってよ
「ねぇ、牧村くんちょっといい?」
私は顔を赤くなっているのを感じながら声をかける。
さっき職員室では、緊張で変なことを言っちゃったけど、ここはしっかりしないといけない。
「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」
牧村くんはこちらを見て、答えてくれた。
「話したいことがあるんだ。一緒に帰らない?」
私達は教室を出て、近くの川原を歩いていた。
「で、話って何?」
「牧村くんって中学でバレー部してたでしょ?」
「!・・・・・う、うん。」
「高校では、入らないの?」
「うん。」
「でも、バレーの事で悩んでるんだよね?」
「どうして、そう思うの?」
「私が牧村くんを見たのは中学2年の時だったんだ。その時の牧村くん、本当にバレーボールが大好きで、楽しそうに見えたから、今の牧村くんは凄く苦しそうに見えるのかも。」
「そ、そっか。」
牧村くんは立ち止まってしまった。
「ちょっと俺も相談したいことがあるんだけ───」
「聞かない!」
「え!?」
私は牧村くんが言い切る前に声を上げる。
「今の私が無茶苦茶なことをいってるのは分かってるよ。でも、それを聞いたら私は自分のしたいことを突き通せなくなりそうだから・・・」
「牧村くんは、したい部活ないんだよね?」
「う、うん。」
「じゃあ私が先生を説得するから・・・」
「せ、説得するから?」
「あなたの時間を私に下さい!!」
私の人生初の告白は、相手に困惑を与える形で終わったのだった。
その日のバイトは上の空で私は全く覚えて無いけど、後日店長から聞いた話によると、超エキサイティングしていたらしい。
同じ机を5分間も拭き続けたり、急に厨房に入りメニューに無いタコライスを作り始めたり、コーヒーのおかわりを運ぶ際、ラテアートを披露したしていたらしい。
「もしもし、由岐姉?」
「おーどうした?」
バイトを終え、家に着いてから私の従兄弟であり担任の先生でもある由岐姉こと白石由岐に電話をした。
「私と牧村くんの部活事なんだけど・・・」
「あぁ何か進展があったのか?」
「部活を免除して頂きたい!」
「・・・・・・は?どゆこと??」
私は今日あった事とこれからしようと思っていることを説明した。
「───ってことなの。」
「お、おう。それで、それはお互い話し合って決めたのか?」
「いや、私だけで決めた。」
「おいおい、大丈夫なのか?有紀お前は大体1人で突っ走る傾向にあるんだ!本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だって!」
「はぁ、こうなると何を言っても無駄か有紀には・・・わかったよ!他の先生にも明日聞いてみるから。」
「ありがとう、白石せんせー!」
「はい、はいじゃーな。」
由岐姉との電話を切り、
牧村くんに「明日、朝6時半、運動できる服装で体育館シューズ持って校門集合」
と書き、すぐにライルのグループ方にも書き込む。
「牧村くん説得完了。作戦開始だ。」
牧村くんからの了解という、返信を見たところで眠りに落ちた。