巽さん、まかないの唐揚げにマヨネーズが無いのが不満なんだってよ
「ますたー」
私はまかないを食べながら机を隔てて対面にいる店長に話しかける。
「何だ、巽アルバイター」
「お願いがあるんですよー」
「何だ?3時間遅刻して、ランチタイムのピーク時をおっさん1人に押し付けるだけでなく、遅れてやっと来たかと思ったら働いてもないのにまかない食わせろと図々しいことをぬかし、今唐揚げを食べてる巽アルバイター。」
私は耳の痛い嫌味を無視して話を続ける。
「ある人のことを調べて欲しいんれす。」
「ん?依頼か?」
マスターはグラスを拭くのをやめ、視線をこちらに向ける。
「牧村 謙介って人」
「あぁ謙介か?知ってるぞ。」
「えっなんで知ってるんすか!?」
ガタッ バンッ
驚きで立ち上がって机を叩いてしまった。
「うおっびっくりした!い、いや、実家が近所だからな」
「幼なじみって奴ですか?」
「ま、まぁ歳はだいぶ離れてるけどそんなとこだな。」
「マスターって今何歳でしたっけ?」
「29」
「14も違うじゃ無いですか!そんなの幼なじみじゃありませんよおこがましい!」
「お、おこがましい!?」
目を見開いている店長を他所に私は食べ終わった食器を持って厨房に入った。
そこから3時間ぐらい食器洗いや店の清掃をしてから、マスターに調査を依頼して家に帰った。
「いたんだよ!牧村くんが!!」
私はお菓子を持っていたお菓子を投げつけ、叫んだ。
「うるさいよ!」
「それで、私たちを呼んだの?」
私はコクンと頷く。
投げられたお菓子を拾いながら話しているの
は瑞希と晴香。
今朝ライルしていた2人だった。
2人とも高校は別になっちゃったけど、相談したいことがあると言ったらすぐに家に来てくれたのだ。
「アンタの事だから見間違いとかじゃないの?」
「違うよ!私の憧れの人なんだよ!見間違う訳無いじゃん!!」
「でも見たのって1回だけなんでしょ?なら有紀だもん見間違いに決まってるわ。」
「2人とも私を何だとおもってるの!!」
「で?本題は?」
瑞希がお菓子を食べながら私に聞いてくる。
「あぁ私バレーしたいと思ってるって話はしたよね?」
「「うん」」
「だから、自主練に付き合ってほしいなぁーって思って。」
「「え?」」
「部活入るんでしょ?」
「まだ分かんない。」
「「え?」」
「え?」
私はメモ帳を持ってくる。
『1日10時間練習。』
というタイトルの1日スケジュールが書かれたメモを2人に見せる。
バシッ
バシッ
「・・・い、いたい。」
「こんなの出来るわけ無いでしょ。」
「アタシ達も部活あるし、これは無理。」
瑞希はテニス、晴香はバレーと2人とも入る部活はもう決めているらしい。
「有紀もバレー部に入ればいいじゃない?」
と晴香がどうして入らないの?といった顔で聞いてきた。
「私も最初はバレー部に入ろうと思ってたんだけどね・・・・・・」
「「???」」
私は自分の考えを2人に伝えた。
「ま、しゃーねぇな。付き合ってやるよ!」
「そういう事なら私もできる限り協力するわ。」
と嬉しい返事をしてくれた。
「よーし!頑張るぞー!」
私は天高く拳を突き上げ、決意を固めたのだった。