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過不足ない日々の終わり

人物紹介の説明を省いてるので記述します。


唯宏太

 深久高校一年の文芸部副部長。

 無頓着な生き方を強いている男の子。


浅井ゆい

 深久高校一年の文芸部部長。

 深久高校は私服校のはずなのに

 カーディガンにスカートを着用している。


園田真穂

 深久高校一年の文芸部と図書委員を兼任。

 赤ぶち眼鏡をかけた女の子。

「私と一緒に、物語を創ってみませんか?」


 彼女は夕焼けに溶け込んだかのように儚げな笑顔を見せていた。


「大は小を兼ねるは嫌い。それなら私は、大も小も適材適所って言葉に変えた方がいいです」


 彼女はお昼下がりの賑わうファーストフード店で一人、悲しい表情になり言った。


「起きてください! 起きてください! 唯さん」

「……ん、え、ああ……」

 夢を見ていた。四月と五月のゴールデンウィーク最終日のことを思い出したんだろう。

「もう、中間テストが終わったからって気を抜きすぎですよ! 次にやることは決まってるんですから」

 次にやることは決まっている。それはわかってる。部活に所属しているというのはそういうことだ。

 それが、運動部であっても文化系であっても同じだ。

「私たち、文芸部には息を抜く暇なんてありませんよ!」

「ブラック企業か!」

 昨今、ブラック企業が流行してるがそれ以前に、ブラック部活が根付いているのではないかと思うが、部活をやってる人は好きでやってるんだからそんなことは問題ですらないのだろうとも思う。

「そんな、ブラックにするつもりはありませんよ。ブラック要素を抱えるのは、部活動の責任者である顧問と部長と副部長が抱えればいいんですから」

 それでも、それが問題だ! だって、俺が副部長で浅井が部長じゃないか!

 結果的に、俺がブラック部活の煽りを受けてるじゃないか!

「浅井さん……? 責任者もホワイトカラーにしようか……」

「ふふっ、冗談です。それより、執筆に取りかかりましょう? 本当にブラックになりますよ」

 得意気な表情だった。

「初対面のときより、煽るようになったよな」

「馴れてきてるんですよ。さて、そろそろ創りましょう? 物語を」

 彼女、浅井ゆいはそう言って数十枚の原稿を突き出した。


 俺は、文芸部員だ。そして文芸部の活動は、今は文化祭までに物語を紡ぐことだ。そして本としてちゃんと装丁して出版する。

 それが今、文芸部の課せられた目的だ。


「はいはい」

 俺は、原稿用紙を十枚程度の抜いて返事をした。



 少しだけ昔話をしよう。……と言うほど昔でもないが言い換えるなら、思い出話だな。そう、思い出話をしよう。

 遡ること約二ヶ月前の四月……丁度、入学の時期の話だ。



 四月某日。

 俺は、新生活に興味を見出だせずにいたとこを姉の助言とその場の流れで文芸部へ入部した。そして偶然部室に居合わせたのが浅井ゆいだ。

 なんとも小説らしい出会い方をしたと今になって思う。

 更に浅井は、出会って早々に文芸部について質問攻めにしてきた。勿論、その質問を答えれるわけでもなかった。

 その質問とは「なぜ文芸部が残っているのか」だ。話を聞くと文芸部は、推定で数年間誰もいなかった。

 なのになぜ、文芸部は廃部にならずに残っていられたのか? 浅井は、疑問に思っていた。俺は別にそんなことは、そういうものだと思ったので疑問にすら思わず浅井の質問を一蹴したが、それでもと迫ってきた。

 そして、浅井と一緒に考える羽目になった。

 詳しい話は、また別で語ろう。

 その日だった、たぶんその日が浅井に気に入られた日なんだろう。

 その日を思い出すと、夕方帰りの田んぼ道で「私と一緒に、物語を創ってみませんか?」と言われたのだ。

 詳しい話は省くが話の前後関係を考慮すると、浅井は俺に学園ミステリーとして物語を創ってほしいという意味が含まれる。

 無頓着な俺にとってその言葉の無意味なのはわかってる。それでも俺は困惑したんだ。


 彼女は俺を可能性だと言った。



 四月終盤。

 日曜日の昼下がりの暖かい日、俺は寂れかけた喫茶店で浅井の相談を聞いた。

 それで、浅井の浅井家の事情を知った。

 詳しい話は別で語ろう。

 ともあれ、俺は学園ミステリーの誤解をとかれた浅井本来の願いである「物語を創る」を協力することになった。



 日々は流れて、五月のゴールデンウィーク最終日。

 文芸部は、文化祭までのロードマップが完成した。

 詳しい話は別で語ろう。

 そんな連休最終日に浅井にまた相談を持ち掛けられた。

 きっともっと、互いを知りたかったのだろう。伝えたかったのだろう。

 そこで浅井は『大も小も適材適所』と自分の座右の銘を教えてくれた。詳しい話は省くがそこで俺は、その座右の銘は、素晴らしいと感心した。



 と、まあコレが俺が入学から今に至るまでの経緯だ。

 少し長くなってしまったが、この経緯からこれからのことを話すなら、俺たち文芸部は文化祭に向けて小説を創って売ることだ。



「私は跳んだ。日々の生活から、環境から、学校から、家庭から自由を獲るために跳んだ。

 風を受け、目を凝らしながらも目の前の行き先だけを見て跳んだ。

 行き先は、加速し続ける先。例えるなら、高い高い平均台からプールに飛び込むように跳んだ。

 ただ行き先の中間ではプールのような水面ではなく、コンクリートと煉瓦。そして、私は感覚的には水に落ちたようにザブーンという感覚だった。最後の感覚は、強い痛みだけが残った」


 浅井の癖は声にしながら物語を書くことらしい。

 部室より公共の場なら情報漏洩の限度を越えてるような気がする。

「朗読ご苦労様」

 一言で労うと、浅井は我に帰ったように顔を赤くしていた。

「……声、出てました?」

 耳を傾けないと聞き逃してしまいそうな小さな声に俺は頷いた。

「私の悪い癖ですね。治さなくては……」

 浅井はそう言うと、静かに執筆を続けた。

 さて俺は、何を書こうか……。



 SF、ファンタジー、ラブコメ、ラブロマンス、ミステリー、時代物、ホラー、サイコパス……等々多様なジャンルを考えるがどれも書いたことがないので書き出しの一行を書いては消して、書いては消してを繰り返していた。

「なかなか苦戦してますね」

 ずっと前から見ていたのだろう、浅井はくすくすと笑っていた。……こいつ……。

「小説なんて初めて書くんだ仕方ないだろ!」

「初めてなんですか!?」

 目を丸くして驚いていた。ころころと表情が変わるやつだな。

「いきなり本文に書くから、馴れてるのかと思いました」

「馴れてる? 小説っていきなり書くものじゃないのか?」

 それを聞くと浅井は、くすくすと笑始めた。

「書き方に間違いはありませんけど、初めて書くなら最初はジャンルから始まる連想ゲームをするんですよ。そこからフローチャートを組んで整理して、あらすじを書き起こして本文に移る方が楽ですよ。

 でないと、マンガのテコ入れみたいに作品の行き先が自分自身でわからなくなりますから」

「ありがとう。文芸部の部長みたいだ」

「文芸部の部長です! 私を何だと思ってるんですか?」

 浅井をなんと思ってるかと言うと、

「学園ミステリーの夢を抱いてる、妄想癖あるいは夢想家」

 と言うのが第一印象だった。

「じゃあ、唯さんが探偵ですね」

 その一言は、釈然としなかった。

「俺は高校生探偵でも――」

「ゆいちゃん! 大変……!」

 弁解を遮断するように、文芸部の唯一の純粋な文芸家である園田真穂が慌てた様子で部室に入ってきた。


 たぶん、このときが事の発端なんだろう。

 このとき、園田が浅井に助けを求めなければ俺は、悩まずに日々を過不足なく過ごせたのだろう。

続きからのような書き方ですが、

入学直後の話は、また別で公開します。

今回は、ゴールデンウィーク後の中間テストが終わった後の話のプロローグです。

続きも執筆中です。


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