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レイジー・リバース・レイン  作者: かずず
序章 異世界へ。
4/42

4. 神代の勇者達

 ■■■■■■■



 いつもの、そう、本当にいつもと変わらない下校だった。いつもの家までのほんの少しだけど、楽しい時間。今日は、お菓子が有ったからだろう、いつもより楽しかったのは覚えている。美咲がはしゃいで、俺が応えて、楓香がなだめて、三人一緒の制服を着て笑える、卒業までの後わずかな時間。

 光り輝いていたように思うその時間は、更に強く輝く光に飲み込まれて、終わった。



 イデア歴3017年

 ヴェルの月 14日



 目を焼くような強い光が収まったかと思うと、俺達はどことも知れない、美しい場所にいた。

 両手に感じる柔らかな感触に安堵しつつ、ゆっくりと強く瞑っていた目を開くと、目の前にまず飛び込んできたのは、浮いている開いた立派な鉄の門、次に目に入ったのは、その後ろの輝くような白亜の大きな城の城門だ。


「おい、美咲、楓香。大丈夫か?怪我とか、無いか?」


 左右の、体を固めた何より大事な少女達に声を掛ける。


(なんで楓香はそんな格好?)


 電柱か何かに片手で掴まっていたのだろうか、両腕で自分にしがみついている美咲とは対照的に、左手を自分と繋ぎながらも、こちらとは逆の方を向き、右手をいっぱいに伸ばしているように見える。


「うっ…、あ、ユウお兄ちゃん。良かった…ボクたちどうなって…いっぱい光って、それで…」


「はっ…、、ユウ。うん、痛いところは無いわ。大丈夫よ。ユウも大丈夫?ここ、どこ?」


意識がはっきりしてきた二人は、体勢を整え、繋いでいた手をほどき自分の身体に異常がない事を確認する。


「うん、ボクも痛い所も怪我もないよ!大丈夫!」



 二人とも大丈夫そうだ。自分の目から見ても以上は今の所視られない。


「はぁ、二人とも、無事で良かった…。俺も大丈夫だよ。俺も二人と同じで、光に包まれたと思ったらここにいたってこと以上は分かんないんだよ。」


そう言って辺りをゆっくり、見回そうとした時。優しい光が、魔方陣と共に俺達を包んだ。


(暖かい。さっきの光とは違うみたいだけど、この光は?魔法?)


「これで言葉は通じるようになったかのう。ようこそ、選ばれし異界の勇者達よ。ここは、神界、妾達の住む、神と善なる者のみが入ることの出来る聖なる領域である。」


 不意に、鈴がなるような、美しい声が上から聞こえた。三人とも一斉に上を見ると、三人の光輝く美しい女性がゆっくりと、目の前に降臨した。

 一番最初に着地したのは、純白のシスター服を着用した女性だ。たれ目気味の目は優しげで、ふっくらとした唇が、緩やかにカーブを描き、美しく、慈愛に溢れた表情をこちらに向けている。着地した瞬間、胸元に着けた銀の円環と、豊満な胸が揺れ、円環からチリンと澄んだ音が鳴った。

 二番目に着地したのは、眉の上で切り揃えられた赤いストレートの髪を持つ、褐色の肌を持つ少女だ。左右に裾から脇まで、深いスリットの入った赤いローブを纏い、片手に銀色に光り、太い植物の蔦が複雑に絡んだような装飾が入ったハープを持っている。シスターも美しいが、こちらはレベルが違う。ややつり目がちな、大きくて切れ長の、左右の色の違う美しい目、スッと通った鼻梁に細い顎、細い首からは歯車を模した飾りが何個も付いたネックレスを幾つもつけている。布が薄いのだろうか、赤いローブ越しにも、体のラインが見える。スリットから覗く褐色の脚と腰と脇腹が艶かしい。

 最後に、一番高くから降り立ったのは、三対六枚の白銀の翼を持つ、純白に輝くドレスを身につけた女性だ。ウェーブがかった長い金色の髪が豊かな胸に流れる。ピッタリとしたマーメイドラインのドレスは、美しい胸から、細い腰を通り、女性らしい臀部まで、恐ろしく魅力的な曲線を描いていた。 白金に輝く小手と、白い鳥の意匠の飾りが先端にあしらわれた杖を持ち、揺ったりと舞い降りたその姿は、正に、天使か、女神か、といった姿だ。

 今までに見た女性の美しさランキングのトップ3が一気に塗り代わる。


「あ、あの、あなた方は」


 目のやり場に困っているのか、それとも目移りしているのか、自分でもよくわからない。顔を赤くしながら視線を踊らせながらおろおろさせていると、シスター服の女性が柔らかく微笑んだ。


「ふふっ、では、私からご挨拶させていただきます。私の名は、アリア、と申します。王都の教会にてシスターをさせていただいております。この度、皆様の案内を任されました。宜しくお願い致します。」


「あ、はい、あの、おれ、私は、神代勇也と申します。こちらこそ、宜しくお願いします。」


 優しい目と同じ、優しそうな魅力的な笑顔を向けられ、顔が赤くなり、慌てて答えた声は上ずっていた。


「はいっ!ボク、じゃない、私は陸奥美咲です!」


 元気よく手を上げて、美咲が自己紹介する。こんな状況でも余り緊張していないようだ。


「あ、天海楓香(あまみふうか)です。宜しくお願いします。」


 対して、楓香の方は混乱しているらしい。こっちの方が一般的な反応だろう。


「大丈夫ですよ。平易な言葉遣いで。そんな事で怒る狭量な方は、ここにはおりません。」


 シスターのアリアが微笑みを絶やすことなく此方を見つめると、そう気遣ってくれた。


「その通り。楽にすると良い。さて、妾達も自己紹介からしようかの。妾は人族の女神、ミューリア」


 六枚の翼をもった美しく輝く女性が名乗りを上げる。正に女神を名乗るにふさわしい姿と声だと思った。


「運命の女神、ヴェル」


 柔らかく、暖かい雰囲気の女神ミューリアとは違い、必要最低限の言葉で運命の女神と名乗った少女の方は、余り感情を感じさせない冷たい雰囲気だ。声も、姿も、とても美しい少女であるのに、SF映画やアニメで見る感情のないロボットが喋っているかのような感触を受けた。


「もう一人いたんじゃがの、今は、その、そなたらを呼んだ魔法で、ちと問題が、発生しての…。その調査というか、後始末も出来ればというか、そういうのをしてもらっておる。」


 どうやらもう一人いるらしい。その人も美人なのだろうか。

 そんな事を考えていたら、楓香がおずおずといった風に手を上げて、女神に向かって質問した。


「あの…もしかして、問題って、横のいたおじさんの、ことでしょうか?」


「えっ、そんな人いたの?」


 さっきは二人の手を掴むのにいっぱいいっぱいで、いまいち周りを見ていなかった。光の中に入ってからは音も視界もなくなってしまったし。だが、思わず口に出た俺のその言葉に、楓香が反応を示した。


「いたよ!私達が、光に飲まれそうになったとき、助けようとしてくれたの!私、捕まえちゃって、もしかして、それであの人が、巻き込まれてたら、私のせいだ…」


 自分の言葉に青ざめていく楓香の顔色が痛々しい。確かに自分達を助けようとした人が自分のせいで巻き込まれれば心配にもなる。どういう事態なのか分からず女神達の方を伺うと、女神ミューリアが少し考え、こちらに言葉を投げかけた。


「いや、大丈夫じゃ。話を聴くに、確かに巻き込まれはしたろうが、その時動いていた時点で、そやつに魔法は発動しておる。そなたらを助けようとした事と、そやつに召喚の魔法がかけられたことは関係あるまいて。」


「それに、さっきミューリアが言ってたみたいに、その事で此方から一人向かってる。」


 良く見ると、運命の女神ヴェルの持つハープの弦が一本、陽光を受けキラキラと光ながら、宙に浮く扉に向かって長く伸びていた。それをくいくいと引きながら、更に運命の神は言葉を続ける。


「この先に、彼はいる。多分もうすぐ帰ってくるし、その時にその人の話は聞けば良い。それより、今はこれからのこと。」


「うむ、そうじゃな、では、説明しようか」


「ほら、神様たちもそういっているし、巻き込まれたとしても楓香のせいじゃないよ、な?」


 楓香の肩に手を置き、慰めると、美咲も加わって楓香を元気づける。


「うんうん!大丈夫だよ。それになんかあっても神様たちなんとかしてくれそうだし!」


 二人して慰めると楓香も、少し落ち着いてきたようだ。青ざめた顔に、すこし暖かみが戻った。


「うん…ごめん、ユウ、美咲。ちょっと、あせっちゃった」


 三人の様子を落ち着いたと見たのか、シスター・アリアが口を開いた。


「では、私からご説明します。」


 それからの説明をまとめると。

 今いるのは、中世ヨーロッパ風の剣と魔法のファンタジー世界。その中でも神々が住まう神界、と言うところらしい。

 俺達三人がこれから行くのは、異世界の大陸の内、ディルード大陸にある国の一つ、ミリタニア王国。この国は女神ミューリアを強く信仰している国で、昔より伝わる勇者召喚の秘術によって、魔王討伐の為に召喚されたらしい。

 転移前に魂だけ神界に寄って、魔王と戦えるだけの力を授かり、体と合流して、ミリタニアの首都郊外の王族管理の神殿に転移する予定との事だ。

 現在、俺達に加護を与える為に、余り長くは止められないが、下界の時間は止まっているとの事。魂抜きで体の時間進めると死んでしまうらしい。

 シスター・アリアと、いま巻き込まれたおじさんの調査だかに行っている人は、人間側からのお迎えで、転移してきた人間のケアをする為に、来てくれたのだとか。魔王退治の仲間でもあるとの事だ。

 説明聴いてる内に、どんどん気分が暗く重くなる。15歳に、魔王との戦争終わらせるのは無理だと思うのだが。

 だけど、なんだろうか、暗く重くなるだけじゃない。心のどこかで、俺は高揚感を覚えていた。男なら一度はなりたいじゃないか。勇者に。


「あの、なんで、私達に?この世界の人に加護を与えるなり、若しくは神自ら魔王を倒せば良いのではないのですか?」


 復活してきた楓香が、おずおずと手を上げて質問する。


「当然の疑問じゃな。まず、この世界の中に、魔王を倒せる勇者の加護を与えられる者が居ないのだ。魂の器と言うべきか、質と言うべきか、それに適合するのが、そなたら三人じゃった。この世界と、地球、といったか、そなたらの世界の神との会合によって決められた。」


「んな理不尽な。」


 自分の知らない所で、自分のこれからを決められるのはちょっと納得いかない。せめて選択肢が欲しい。


「転移者の条件は、勇者の資格を持つ者達の中で、不幸にも若くして死ぬ運命のもの。転移のタイミングは死ぬ直前。でもかの?」


「えっ…!!」


 俺を含め三人ともそれを聞いて顔色を変えた。それは、転移されなければあの直後に三人とも死んでいたと言う事だ。


「地球の神も此方の神も、自分の作った我が子らを無闇やたらと他の世界に、送りはせんし、他の世界の子を、さらいもせぬよ。そんな事するのは、邪神位じゃの」


「そんな…」


「そして、もう一つの質問に答える。その邪神どもと、我ら神は戦争中じゃ。神の力は下界の人々の祈りの力。魔王の勢力が強まれば邪神は強くなり、逆に我らの勢力は弱まるだろう。最後にはこの世界が滅ぶ。妾達聖なる神が下界の為に動けぬのは邪神共を抑えて置かねばならぬからよ。」


「神から下界の魔王へ直接手を出せないのはそういう理由ですか。」


 神は神で頑張ってくれているらしい。


「うむ、すまぬ。何とか、この世界の頼みを頼みを聞いてもらえないだろうか。魔王を倒して貰えたら、向こうの世界に返す事もできよう。この世界であれば、どんな望みでも叶えることも出来よう。頼む。この通りじゃ。」


 ゆっくりと、女神の美しい顔が下を向き頭を下げる。シスター・アリアも女神より深くこちらに向かって頭を下げていた。運命の女神だけは扉の方を向き、手に持った光る糸をぐいぐいやっていたが。


「俺は、やっても良いと思うよ。」


 女神が頭を下げる前から、俺の答えは決まっていた。元の世界への未練はもちろんあるが、困っている異世界の人を救うのに、否やはない。


「勇者様…!」


 胸の前で手を組み、熱の籠った視線でシスター・アリアがこちらを見つめる。その目で見つめられるのは、少し照れる。


「ボクも!やっても良いと思う!」


 美咲も明るい声で同意してくれた。うん、やっぱり困った人は放って置けないよな。


「ちょっとユウ!美咲まで!戦うのよ?魔物よ?魔王よ!?痛いし、死んじゃうかもしれないのよ!?分かってるの!?」


 だけど、楓香の意見は違うみたいだ。確かに、そういう事も有るんだろうと思う。当然だ。でも俺達は、この世界の神に命を救われてる。


「でも、そうしないと、この世界が、滅びてしまうんだろう?女神ミューリアや女神ヴェル。それにシスター・アリアも、死んでしまう。会って少しだけど、俺達が頑張って、何とかなるのであれば、何とかしたいよ。」


「それにいまのお話しだと、女神様達はボク達の命の恩人じゃない?恩人の頼みは断れないよっ」


 うん、その通りだ。美咲の言う通り、命を救ってくれた恩は返したい。


「それに、魔王を倒さない限り、帰る方法は今はない。」


 異世界の門を向き、糸をぐいぐい引っ張っていた女神ヴェルが、此方を不意に振り向きそう言った。


「そもそも、異世界転移は時間的なタイミングと、世界間の距離がとても重要。それに、いまこの世界を繋いでいる魔法が終了してしまえば、魔力も神力も、もう、三人を、送るための力が、私達に残されていない。」


「直ぐには、帰れない、ってこと?」


「そもそも今すぐ帰ったら、あなた達は死んでしまう。向こうの神も、世界の時間は止めている。」


 まあ、確かにそうだ。俺達は死ぬ直前にここに着たのだから。


「そう、だけど、、、その魔力と神力だかが、私達を向こうの世界に返せるだけまた貯まるのは、どの位掛かるの?」


「自然の状態だと、力を貯めるのに300年かかる。」

「「「はぁ!?」」」

 三人の声が重なる。


「そんなの!ボクおばあちゃんになっちゃうじゃん!」


 美咲は300年生きるつもりなのだろうか。でも、そんな突っ込みよりも今は…


「でも、さっきは魔王を倒したら帰れるっていってたような。」


 シスター・アリアが俺のその問いに答える。


「はい、力を直ぐに集める方法は、あります。王国は今回、神への願い、異世界から勇者を呼ぶ魔法の発動に、神の宝珠を使いました。そして、神の宝珠は一つではありません。魔王に奪われた世界の魔力と神力をためた宝珠、それを取り戻し、人々と神々と力を合わせれば、何とかなるはずです」


「魔王を倒して、宝珠とやらを取り戻して。それに何年掛かるの?十年掛かっても、私達は、戻っても、もう…」


 確かにそうだ、全部終わった後に俺達が帰っても、もうあの日常には戻れない。周りが全部変わってしまっているだろう。

 それに答える声は、またしても上から降ってきた。


「大丈夫。時間は戻せる。世界そのものの巻き戻しは無理だがね。限定条件下での時間移動は可能だ。」


 多少掠れたその声が上の扉の方から聞こえる。声に釣られて上を見上げると、一人の男が、扉からゆっくりと降下してきている所だった。

 顔全体を覆う仮面で表情は見えない。額に5センチ程の卵のような宝石を埋め込まれている。


(なんだあの厚着の男。あれがさっきから女神達がいっていたもう一人なんだろうけど)


 白銀のローブとその下に白いコートという厚着で降りてきたその男に、女神ヴェルが咎めるように声をかけた。先程までの冷たい表情とは違い、その顔には安堵の色が見える。


「ようやく帰って来た…二回引くのは『すぐ帰って来い』の合図だと教えたはず」


「申し訳ない。女神ヴェル様。巻き込まれた人間の調査と、向こうの世界の神への確認に時間を取られまして。これでも行ってすぐ帰って来たつもりなんですよ。いやぁ、遠いですねー向こう。」


 女神に対して余り物怖じしないなのか、声音からは反省しているようには感じられない。

 女神ヴェルはその言葉を聞きながらも、さっきも時折引いていた、その男につながっているハープの光る弦を引っ張る。すると、男の着ていた白銀のローブが一度光り、瞬く間に糸が解れた。そして解れた糸がハープに吸いこまれていく。女神が持っていた一本の糸が、そのローブを作っていたらしい。人が飛んでる時もびっくりしたが、これにも驚いた。

 女神の魔法だったらしいそのローブがハープに全て吸収されると、こちらを向き男が胸に手を当て礼をした。


「初めまして。勇者の皆様。この様な姿で失礼します。私は王立魔法研究所所属。次席魔導師のレイジー=レイン=リバエルと申します。」


「俺達の住んでた所じゃ、挨拶する時は頭に被ってるものを取ると、習うんだけどな。」


「それについては申し訳ない。この神界で何も無しに活動するには、普通の人間にとっては辛い事なのです。肉体を持ったまま、神界で活動出来るのは一部の者達だけです。貴方方のように選ばれた魂や、そこにいらっしゃる聖女アリア様が特別なのですよ。」


 頭を上げた仮面の男がそう言い、アリアを見ると。アリアは顔を赤くしていた。


「えっ、、聖女?だったの?」


 何だか、とてもぴったりな表現だ。まさに女神達と比べても遜色ない神々しいまでの美しさも、立ち振る舞いも。その称号がぴったりだとおもう。


「言ってなかったんです?」


 仮面が首をかしげる。


「その称号は私の身に余ります!なにより恥ずかしいんですっ!ずっと言ってるじゃないですか!レイジー先輩の意地悪!」


 真っ赤な顔で仮面に抗議する姿がとても愛らしい。そしてなんだろう。仮面と仲が良さそうだ。今のやりとりで胸がちくちくする。


「あ、いや、身に余るなんて、そんな事ないよ。寧ろ、ぴったりだと…」

「そんな事より!!」


 つい、声に思いが出てしまった俺の台詞を遮り、楓香が怒鳴った。


「時間、戻せるんですか!?」


 楓香の真剣な眼差しに答え、仮面が此方をまっすぐに向き、背筋を伸ばす。


「はい。可能です。但し、制約はあります。使用者、及びその周囲の者が時間移動するという形になります。そして、問題の一番は、やはり魔力量ですね。恐ろしく魔力を使うはずです。そして二番目は因果のバランスです。過去の世界で何かをすれば、その影響が今の運命を、歪め、変えてしまう。良い方なのか、悪い方なのか、やってみないと解りませんが。」


「神力があれば、因果の歪みは私が何とかする。」


 なんだろう。あいつが戻って来てから女神ヴェルの表情が地味に明るい。そして何か積極的だ。


「ありがとうございます。流石は、運命の神ヴェル様ですね。となると、やはり魔王の持つ宝珠ですか」


「結局そこに行き着くのね…あの、魔王が持つ宝珠以外に宝珠は無いのでしょうか、王国のものは使った、とは聞きましたが、もしかして、他の国にもあるのでは?」


 段々、魔王と戦う事に関しては避けられないと分かってきているのだろう。楓香のあの顔は、七割がた諦めて要るときの顔だ。


「確かにある事はある。王国にも、もうひとつあるの。だが、魔法によって発展した技術の根幹である魔力を溜め、供給する。それが宝珠である。各国にとって大事なものでもあるのだ。魔王の手にある宝珠以外の者から奪えば、その国は貧困にあえぐならまだしも、命にかかわる大事となろう。」


 こちらでいう、発電所、みたいなものだろうか。であれば、それを奪われればひどい事になるのは、容易に想像できる。そしてそれを俺達三人の為には使えないだろう。こうなればもう方法は、一つしかない。


「楓香、君のことは、ちゃんと俺が守るよ。きっと、みんなで力を合わせれば。なんとかなるさ」

 戦うしかない。だが二人を傷付けさせははしない。俺が守る。そんな決意を込めて、楓香を見つめる。


「楓おねえちゃん。私もだよ。私も二人を守る。絶対。」

 美咲も同じ気持ちなのだろう、その目に決意の光が見える。


「はあ…分かった。私も、協力するわ…魔王退治。どうやっても、避けられなさそうだし…それに、ここで私が断っても、二人で言っちゃいそうだし。私が知らない所で、二人が傷つくのも、嫌だし。」

 渋っていた楓香も、漸く決意を固めてくれたようだ。


「すまぬのう。恩に着る。異世界の勇者達よ。妾達神族も、出来る限りの協力をしたいと思う。」


 もう一度頭を下げて、感謝の意を示してくれた女神ミューリアは、優しい笑顔を向けてくれた。


「王国も、援助を惜しまないでしょう。ありがとうございます。」

 仮面も腰を折り、丁寧な礼を示してくれた。


「もちろん、教会もですわ」

 そして聖女アリアの顔は、輝くような笑顔もが浮かべられている。


「さて、下界の時間停止術式の制限時間までもう少し時間があるかの。そなたの調査結果を聞こうか。転移の時に一体何が起こったのじゃ?」


 ぴくっと楓香の身体が震え、仮面の男の方を向く。


「はい。では結論から。転移の時にすぐ近くにいた男は魔方陣に触れ、転移に巻き込まれ死亡しました。」


「えっ…」


 楓香の顔がまた、青ざめていく。血の気の引く音が聞こえそうな勢いだ。


「ちょっとまて、それならば勇者殿達がこちらに来た時点で扉は閉まり始めているはずじゃ。あの扉は魔方陣に触れたものが全て此方に来れば勝手に閉まるはずであろう?何故扉が閉まらぬ」

 女神が美しいカーブを描く眉を、眉間に寄せた。


「向こうの神の話も含め考えると、恐らくは、ですが、王国で、神の力を持って使用された転移魔法陣は、神に勇者として選ばれた者を中心に魔方陣を展開し、魔方陣に触れたものの身体と魂をこちらに運び、その後魔法陣に触れた魂のみが女神ミューリアに面会し、加護を与え勇者とするものだと思います。そして、巻き込まれたものは、死亡したとはいえ、魔方陣には触れていた。」


「つまりは、巻き込まれた者の魂がこちらの扉に出てこないと、魔法は完了せず異界の門は閉まらないと。」


 仮面は頷き肯定を示す。


「その通りかと思われます。」


「色々と欠陥のある魔法じゃな…。」


 額に手のひらを当て、美しい髪をかき上げる女神ミューリア。その姿を見て仮面は頭を下げた。


「申し訳ありません。まさか王国側も、2000年も伝えられている転移魔法にこんな欠陥があるとは思ってもみなかったのです。記録に残っているのは二回分ですが、そして今までの召喚時には巻き込まれた者に関しての記述はありませんでした。」


「ミューリア。こんな事態は、今回が初めて。それに、この魔法は人がおいそれと実験できるものでも無い。今回は、仕方ないと思う」


 運命の女神ヴェルが仮面を、と言うか王国のか、フォローをするように、仮面の言葉に自分の言葉を重ねた。


「うむ、まあ、確かにヴェルの言うとおりか…。それに、向こうに繋ぐ時間や発動時間は、此方が神託を与えておるし、我らの落ち度もあるのう。死んだ者については、此方でもう一度生を与えるほかあるまい。生の神に後ほど連絡してみるが…あとは、その者が許してくれるか否かじゃな…」


 死んだという単語を聴いて、青くなっていた楓香の顔が今度は白くなる。


「あの…ごめんなさい。私が、掴まったりしたから、ごめんなさい。ごめんなさい」


 神々に報告していた仮面が、今度は楓香の方を向き、少し近づき。優しげな声で語りかけた。


「落ち着いて下さい。大丈夫ですよ。その事であれば、その人からの伝言を承っております。『私が死んだのは、不幸な事故みたいなものだ。君のせいじゃない。だから、どうか気に病まないで欲しい。そしてこちらこそ、すまない』との事です」


 その言葉に、少し楓香の顔に安心したような色が戻った。


「ふむ、良き者のようじゃのう。それなら、此方でせめて幸運の加護でも与えるとしよう。完全に安全という場所は、今は下界には無いが…出来るだけ安全に過ごせる場所に転生出来るよう見繕っておこう」


「あの、直接謝る事は出来ないですか?」


 俺も女神にそう問いかけてみる。もし助けようとしてくれたのであれば、俺も直接お礼を言いたい。楓香が俯かせていた顔をあげ、俺と共に女神ミューリアを見つめた。


「難しいのう。直ぐに此方に来れば出来るが。そうであればそこの魔導師が連れてきてるじゃろうし。その辺りはどうじゃ?」


 首を仮面の方に傾け、直接あったであろう仮面に問いかけた。


「向こうの神によれば、現在、魔法によって傷ついた魂を修復中とのことです。こちらに来るまで三日はかかるかと」


「で、あれば、残念ながら、今すぐには無理じゃの。勇者となり、旅をしていれば会う事もあろう。此方も転生先が分かれば神託で教えよう。」


「そう、ですか…。すいません。お願いします。」

 楓香が女神と仮面に涙を浮かべながら頭を下げた。


「大丈夫さ、楓香。気にしてないって言ってくれてるし。それにこっちに魂だけでも来て、完全ではないけれど安全な場所で生き返るんだろう?俺達が頑張って魔王を倒して、平和な世界にしたら、その人だって危険に合う確率もへるしさ。」


 涙目で落ち込んでいる楓香を見て心が痛む。


「うん…。」


「楓香お姉ちゃん。大丈夫だよ!ボクもその人生まれ変わったら会ってお礼言いたいし!助けてくれようとしたんでしょ?ボクも頑張るよ!」

 元気付けるように美咲が楓香の手を握って励ましている。向こうでは、試合前の緊張していたり、テスト後で落ち込んでいたりした美咲を、同じように楓香が手を握って励ましていた。


(今は、立場が逆だな。)


「うん、ありがとう。ユウ、美咲」

 楓香の顔に少し笑顔が戻った。うん、嬉しい。


「さて、ではそろそろ、加護を与えるとしようかの」


 ふわりと、女神の背中に折りたたまれていた三対六枚の白く大きな翼が広がる。


「こちらへ、神代勇也殿。」


「は、はいっ」


 緊張しているのか、変な歩き方になってしまった…。近づくにつれ、その美しさが増していく。

 女神ミューリアの目の前に着いた。手を伸ばせば、触れ合える距離だ。


「異世界より来たりし、我が世界を救う勇者よ」


 ゆっくりと、輝きをもって六枚の翼が広がる。


「いま、神の祝福を受け」


 六枚の翼が、女神ミューリアと、俺の体をゆっくりと包んでいく。


「魔なるもの、邪なるものを打ち倒し、弱きもの達を守り、」


 女神の両手が、頬を包む。祈りの言葉が続くにつれ、女神が暖かな光に包まれ、その輝きが増していく。


「我が世界に、安寧をもたらさん事を」


 顔が近づき、そして。


「っ…!」


 柔らかい唇が自分の唇に押し付けられた。

 身体に会っても熱い何かが流れ込み、満たされ、巡る。

 突然の事にぼーっとしている間に、加護の付与は終わったらしい。

 ゆっくりと女神の唇が、顔が離れ、手が離れ、翼がまた、開かれる。直前。


「仮面の魔導師には、気を付けての」


 聞こえるか聞こえないか、そんな小さな声だった。

 その言葉に、熱を持っていた頭が一気に冷静にる。目を開き、その言葉の真意を探ろうと女神を見つめる。目が合うと、ウィンクをされた。


「ふう、これで、勇也殿の加護は終了じゃの。」


 優しく微笑み、終了を制限されてしまえば、先程の言葉は、ここでは言えない秘密の忠告だったのだろうと察することが出来る。


「あっはい!ありがとう、ございます」


 顔が熱い、確実に、加護のせいだけではないだろう。


「勇者の加護の特徴は、正に魔王を打ち倒すに相応しい加護じゃ。鍛えれば、邪神すら打ち倒すやもしれん。人の何倍もの体力と魔力の成長。強化された才能。そして唯一無二の魔法。とても強力ではあるが、故に、正しき心を持つものにしか扱えぬ。努々、力に溺れんように注意するのじゃよ?どうかその力で、妾達の世界を救ってくれ。」


 女神のその言葉に、力強く頷く。


「はいっ!頑張ります!」


 女神は微笑み一つ頷くと、今度は美咲の方を向いて話しかける


「次は、美咲どのかな?」


「はいっ!宜しくお願いします!」


 元気よく手を上げ、小走りで此方に走ってくる美咲と入れ替わるように楓香やシスター・アリアの待つ場所へ帰る。皆で並んで加護を受けているのを見ると、俺の時とは違い、輝く手の平を頭に手をのせられ、先ほどと同じような文言を唱えている女神と、女神の前で跪いて神妙な顔で加護を受ける美咲の姿がある。


(仮面に気をつけろ。か。なんだろうか。ていうか加護、俺の時と随分違うな)


 無意識に、唇に指が伸びた。


「どうしたの?」


 指が唇に触れ、あの柔らかい感触を思い出してしまい。顔が赤くなる。その時、楓香がその様子を怪訝に見つめ、声をかけてきた。


「あ、ああ、大丈夫!加護のせいか身体が熱くて!体調悪いわけじゃないんだけど。それより、そろそろ楓香の順番じゃないか?」


  赤い顔をごまかす様に美咲の方に向けると、満面の笑みを浮かべて丁度こちらに向かってきている所だった。


「ああ、もうなんだね。うう、緊張するなぁ。」


「大丈夫さ。俺も美咲も、大丈夫だったろ?すぐに終わるし、気楽に行ってこいよ。」


「う、うん。分かった!頑張ってくる!」


 胸の前で両手を握り気合いを入れてる姿はとても可愛い。そんな様子を見て、心の中で応援しながらふとその様子をみている異世界人の二人に目を向けた。


「そういえば、あんた達二人も加護とか貰うのか?」


「私達は身体をもって此方に来ているので、加護はもらえないのです。それに、私はもう女神ミューリアに加護はもらっておりますし。」


 勇者様ほど強力ではありませんが、と付け加えながら答えるシスター・アリア。


「私も加護持ちですが、女神ミューリアのものではありません。加護はひとつの神から一つだけ、というものです。また、複数の加護は、人の身では耐えられないらしいです。」


 仮面が補足してくれた。不気味な仮面と、先程の女神の言葉で今一信用できないが。


「基本的にはそれで合ってる。けど、勇者は違う。身体まで、加護はもらえるはず。女神の加護以外にも出来るなら戦神や魔神の加護を受けた方がいい。」


 さらっとした様子で付け加えられた運命の女神からのアドバイスに驚いたのは、仮面だった。


「それは、初耳ですね…。それならば魔王も、邪神も倒せそうです。」


「でも、いまは戦神も、魔神も連絡が取れない。邪神に封印されたのかも。よく分からない。ごめん。」


 目を伏せ、上目遣いで、仮面を見つめる運命の女神は、俺達が会ったときとは大違いだ。あの一人と一柱の間には何かあるのだろうか。

 

「女神様が謝ることじゃないっ!悪いのは邪神だしつ!神様助けて邪神に仕返ししちゃおう!」


 美咲が女神を励ましている。姿だけ見れば同年代の二人を、みていると心が温まるようだ。


「そうですよ、私達も魔王討伐の旅の間探してみますし。何か分かれば、連絡しますよ。」


 その言葉に目を輝かせて仮面に向かって顔を上げた女神ヴェル。


「うん。ありがとう。頑張って。私も出来るだけ応援する。」


 そんな会話をしてる内、楓香も無事加護を得ることが出来たようだ。顔を赤くして此方に向かってきた。


「なんだか身体が熱くなるんだね。加護。」


 パタパタと顔を掌で扇ぎながら楓香も戻ってきた。


「だねー!でも何か元気出てきた!」


 その場で走りながら楓香に答える美咲はいつもより元気一杯だ。


「ふふっ。加護の本領は身体に戻ってからじゃよ。美咲殿。さて、全員に加護は行き渡ったの。そろそろ身体と合流じゃの」


 そんな様子を見ながら優しく微笑んだ女神ミューリアもゆったりと歩いて此方に来た。


「はい。ありがとうございました。女神様」


 三人で女神に頭を下げる。


「良い、此方の世界の為に来てくれたのじゃ。礼を言うのは此方である。我が世界の二人も、勇者達を確と導いてやってくれ」


 優しい顔で一つ頷くと、キリっとした表情でシスター・アリアと仮面に言葉を投げ掛けた。


「はっ、承知しました。」


「畏まりました。女神ミューリア様。」


「レイジーなら大丈夫。頑張って」


「頑張りますよ。ありがとうございます、女神ヴェル様」


 なんだろう、本当に仮面だけに感情ある顔を向けるな。運命の神様。


「身体に魂が戻れば、下界の時間は再び動き出すであろう。この世界の命運をそなた達に託す。加護もある故、魔物にそう簡単にはやられはせんが、くれぐれも油断せずにの」


「はい。頑張ります」


 ゆっくりと、三人が浮き上がる。あの全てを飲み込むような強い光ではなく、仄かに暖かな優しい光りだ。


「あ、と、そうだ、皆さん。向こうについたら、私が合図するまで目を開けないで下さい。すぐに私も行きますので。そんなに時間は掛からないと思いますが。特に天海さん。お願いします。」


 同じように光だした仮面が、此方を見上げて、飛んだ後の注意事項だろうか。話しかけてきた。


(なんだ?何故、楓香だけ?)


 楓香は素直に頷き返事をしているようだ。


「分かりました。目は瞑っておきます。」


 仮面は安心したように頷く。


「はい、宜しくお願いします。」


 女神に言われたからか、仮面を今一つ信頼出来ない。


(俺達が目を閉じている間、何するのか…、薄目だけでも開けて、警戒しておこう。ベタな言うこと聞かせる奴隷の首輪とか有りそうだし。)


 そんな事を考えている内に、光が段々と強くなり、身体の感覚が無くなっていく。


「では、またのう、そなたらの幸運と武運を祈っておる。神々の祝福が勇者と共に有らんことを。」


 光りの中に飲み込まれる直前に、美しい声が響く。

 視角も、聴覚も段々と無くなる光りの中で、此方に来た時と同じように、しっかりと二人の手を握る感触だけは、意識が消えるまで続いていた。


 ◼◼◼◼◼◼◼


 三人の勇者の魂と、それを追い、守るように飛んでいった聖女と魔導師の姿を、感慨深げに見送りながら、女神ミューリアがため息をつく。


「行ったのう…。さて、後は、これか」


 異界に続く、後ろの大きな扉を振り仰ぎ見て、眉根を寄せて考え込む。


「早くて3日か…。ヴェルよ、どの位、神界の力は流れ出るかの?」


 ぼーっと、勇者達が飛んでいった方を見ている運命の神に振り向き、問いかける。


「防壁が薄くなる。通常時の50%位まで落ち込む模様。三日で扉が閉じたとして、防壁の復活まで7日ほどかかる。」


「そうか、星の位置を見るに、次の戦いまではまだ数ヶ月あるが…未来はどうじゃ?」


 空から視線を外し、此方を見て一度首を横に降る。


「ごめん。わからない。今日から先は色々な情報が入り乱れて予想が立たないのもあるけど…、その情報に見えない霧や闇が増えて来ている。勇者召喚の影響か、強い光も増えた。」


 未来を見通すとも呼ばれる運命の女神ヴェルの権能。それを持ってしても、最近は見通せない事が増えて来ている。正確には500年ほど前から、少しずつだが、運命のズレが生じている気がする。

 異世界に、巻き込まれる人間が居るなど、勇者が三人もいるなど、運命の神が見落とす等、今までは有り得なかった。

 運命の神だけではない。人族の女神たる権能の読心、魅了、それが全く通じない、あの仮面の男のような者が、同時に我が子らの中から多数出てくるなど、未だ嘗て無かった。


(邪神や魔王達の活動が、今より活発化していた1000年前の大戦時もこんな事か何度か有ったと聴いてはいたが…。)


 分からないとは、不便で、不安なものだ。愛しい我が子らを導く事も出来ない。


「確かな未来は分からぬか…。出来る用心を出来るだけしておくか…。」


 強く、翼を広げ一度羽ばたかせ幾つもの羽を舞わせると、何十枚と宙に舞った幾つもの美しい羽。女神が手に持った杖を優雅に一振りすると、宙に舞うの一つ一つの羽が、様々な武器をもった天使に変わっていった。


「龍神に連絡を。今の神界の位置なら、奴の所が近かろう。それと、そなたらも、戦の準備を怠らぬようにな。」


「「「はっ!!了解しました!!」」」


 女神の指示に美しい統率できびきびと動いている自慢の眷族達を見ながらも、女神の不安は消えない。

 美しい白亜の神の城。その前に浮かぶ、今も少しずつ神界の力が流れ込んでいる扉。

その奥の暗い深淵を再び見つめる。

 この胸をじわじわと蝕む未知への不安は、扉の向こうに流れ出す神界の力と入れ替わりに、扉の闇からゆっくりと此方の世界に這い出しているようだった。


◼◼◼◼◼◼

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