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最強の格闘技とは触手拳にあらず!  作者: 猪子馬七
最終章 触手決戦
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第57話 決着!究極の奥義!!



 ショクシュ子は幼い頃から、触手の素晴らしさを理解していた。

 しかし、腑に落ちない事もあった。


 触手拳は最強である。仮に触手拳が負けるとするならば、同じ触手拳であると思っていた。



 そんな触手拳の創始者である両親が、毎日の様にしている組手。

 毎日欠かさずの組手によって切磋琢磨に技を磨く、格闘家の鑑とも言うべき姿であった。



 だが、二人の組手による決着は、いつも父である岸ベシローの敗北によって終了する。それも、いつも同じ奥義を繰り出すことによっての敗北である。


 触手拳が敗北する時、相手が同じ触手拳であるのだから、それは納得が行く。

 しかし、いつも同じ奥義を繰り出して敗北する父の行動には納得がいかなかった。



 ある日、ショクシュ子は父に聞いた。何故、いつも同じ様に奥義を繰り出して敗北するのか?最強を目指すのであれば、同じ敗北を繰り返してどうするのかと、至極当たり前の疑問を問い質した。


 そんな娘の問い掛けに、父である岸ベシローは普段の厳格なる態度とは違って、はに噛んだ笑顔でこう答えるのであった。



「いいかい、ショっちゃんよ。確かに触手拳は最強の格闘技だ。最強の格闘技を学ぶのであれば、勝つことを第一に考えるのは至極当然のことかも知れない。しかし、だ!触手拳は最強である前に最愛で無ければならない!何故ならば…」


「何故ならば『愛なくして触手語らず、触手なくして愛を語らず』でしょ?『触手の教え八箇条』なら耳にタコが出来る程、聞き飽きたわよ」


「ハッハッハッ!流石はショっちゃんだ!その歳で触手拳の真髄を理解するとは恐れ入った!」


「誤魔化さないでよ!何で負けると分かってる奥義を繰り出すのか、質問にちゃんと答えてよ!」


「…ふむ。正直、今のショっちゃんでは理解出来ぬと思うぞ?まあ、急ぐ必要は無い。いずれ大人になれば分かる時が来る筈だ!」


「そうやってすぐに誤魔化す〜」


「誤魔化している訳では無いのだが、納得出来ないのならば仕方ない。では、言い方を変えて…『敗北しても、勝利より得難い物を得る事が出来る』…これでどうかな?」


「得難い物って?」


「それは母さんの顔を見れば分かるだろう?あの笑顔を見たら、例え奥義が敗れても悔いは無いと思えないだろうか?父さんの奥義にあれだけの笑顔を見せるのだぞ?敗れる事など大した問題では無いのだよ!」


 いつも最強を語る父が、敗北する事に抵抗を見せない。なんとも不思議な話である。

 そのあと「まあ、父さんも気持ちイイから繰り出すのだがな」と、はに噛んだ笑顔を見せるのであった。





 幼少時代のショクシュ子には、理解の出来ない話であった。

 しかし、今のショクシュ子ならその意味が分かる。勝敗よりも大切な想い。それがあるからこその触手拳なのだと。



 触手拳を触手剣とし、女騎士拳へと覚醒昇華させたショクシュ子。

 それでも触手への愛を失った訳では無い。




『愛なくして触手語らず、触手なくして愛を語らず』


 その真意を理解した岸ショクシュ子が、象形拳48ドーム上空にて…女騎士拳究極奥義を繰り出すのであった。














「女騎士拳!究極奥義‼︎」

























一亀(イッキ)頭閃(トウセン)!!!」




 ショクシュ子の繰り出した究極奥義とは、かつて父である岸ベシローが生まれてくる我が子のためにと、血の滲む修行によって作り上げた神技とも言うべき奥義であった。


 しかし、神技と呼べる程の奥義でありながらも、妻である益美の神技に打ちのめされて、最強の奥義と成し得なかった奥義でもある。


 そんな最強の奥義と成し得なかった奥義を、岸ベシローは妻である益美に毎日の様に繰り出すのであった。敗北必至と理解しながら。



 幼い頃のショクシュ子には理解の出来ない行動ではあったが、武者修行の旅を経てその真意を理解するに至った。


 そして触手拳を触手剣とした時、父の代で究極の奥義と成し得なかった奥義が、娘の手によって初めて究極奥義として完成するのであった。



 ショクシュ子の作り上げた聖剣ショクシュカリバーが一筋の閃光となり、オークキングの急所を目指して襲い掛かる。


 奇しくも岸ベシローが一亀(イッキ)頭閃(トウセン)の会得の際、練習用に作り上げた木人。その木材は(ナラ)(カシ)などの、いわゆるオーク材によって作られたものであった。

 オークに対抗する奥義としては、これ以上のものは無いと言えよう。



 岸ベシローと岸ショクシュ子、親子二代の共演によって繰り出される奥義一亀(イッキ)頭閃(トウセン)

 一分間に千回…いや、それ以上の激しい突きが、眩いばかりの閃光となって急所を目掛けて襲い掛かるのだ。

 オークキングとしては、悪い予感しかしない。


 必死になってショクシュ子の奥義から逃れようとするオークキングではあったが、上空に吹き飛ばされてからの落下中。

 逃げ場など、どこにもある筈が無かった。





 もしも詡王がオーク拳では無く白鶴拳の使い手であれば、両翼を巧みに使って上空でも体勢を立て直すことが出来たかも知れない。


 もしも詡王がオーク拳では無く熊掌拳の使い手であれば、相打ち覚悟のカウンター攻撃にて、一矢報いることが叶ったかも知れない。


 もしも詡王がオーク拳では無く蟷螂拳の使い手であれば、迫り来るショクシュ子に斬撃を飛ばして、近寄らせる事すらさせなかったかも知れない。




 しかし、詡王はオークの中のオーク、醜悪なるオークキングの化身である。


 鶴でも無ければ熊でも無い。ましてや蟷螂でも無いのだ。

 迫り来るショクシュ子の奥義に対して、為す術などあるわけが無かった。






 多くの仲間達との出会い、そして触手による繋がりを以って今に至る岸ショクシュ子。


 反して凌辱のみに捉われて、孤独の中に生きて来た王 詡王。


 二人の天才格闘少女が歩んだ相反する道が、その勝敗を分けることになるのであった。

















 ズシュッ!!!!!





 オークキングの急所に、情け容赦無く突き刺さる聖剣ショクシュカリバー。








 予想通りの出血。






 予想通りの激痛。






 予想以上の快感。





「ピギャルゲラァァァァっ!!」


 オークキングの口から溢れ出す、歓喜にも似た奇声。

しかし、ショクシュ子は御構い無しにと、奥義を繰り出し続けるのであった。


 全身全霊を以って、最後の力を振り絞っての奥義である。これが通じなければもう、闘う体力も気力も残ってはいない。


 我を忘れて奥義を繰り出し続けるショクシュ子。その顔に大量の体液が降り注ぐまで、奥義を繰り出し続けるのであった。



 一分間に千回をも超える、激しい突きからなる奥義がピタリと止まった。

 大量の体液を浴びて我に返ったショクシュ子。その眼前にはグズグズと音をたてて、禍々しいオーラが崩れ始めるオークキング。



 崩れ行くオークキングの中から出て来たのは…アヘ顔ダブルピースの王 詡王。


 白目を剥き、力無く垂れ下がる舌。そして口から溢れ出す大量の泡。その見事なまでのアヘ顔ダブルピースを見て、ショクシュ子は己の勝利を理解した。



「わ、私…勝てたの…?」


 未だに半信半疑のショクシュ子。


 今まで闘ってきたどの格闘家よりも苦戦を強いられた、オークキングを相手にまさかの大金星。すぐには信じられないのも無理はない。


 しかし、会場に鳴り響く大歓声。オークキングを打ち倒した女騎士への惜しみない称賛の声と、鳴り止まない拍手。


 それを一身に受けて、ようやく自身の勝利を確信した。


 勝利に安堵して気がゆるまったショクシュ子は、そのまま気を失った。

 意識を失って落下する詡王とショクシュ子。


 その二人を下で受け止めたのは華や裴多達、この激闘の影の功労者達であった。



 激闘を繰り広げた二人を受け止め、そのまま担ぎ上げると、今度は一目散に逃走。


 途中、衣装部屋で衣類を盗んで、そのまま象形拳48ドームを後にするのであった。





 こうして、象形拳48ドームの杮落としを台無しにした乱入者達は、触手の素晴らしさを世界中に配信することに成功。


 それと引き換えに、象形拳48はその存続をも危ぶまれる程のダメージを受けるのであった。




 世界中に配信された二人の激闘の数々。これによって触手の素晴らしさを世界に拡散する事になったのだが、勿論日本にもその映像は配信。


 日本にいる両親、岸ベシローと益美の元にも、この吉報はいち早く届くのであった。



ここまで読んでくれて、本当にありがとうございました!

ついに明日、最終話の投稿となります。


その後はエピローグ、あとがきとなります。最後まで応援の程、よろしくお願いします!

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