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最強の格闘技とは触手拳にあらず!  作者: 猪子馬七
最終章 触手決戦
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第56話 走馬灯



 攻め手を失い防戦一方のショクシュ子。

 受けに回ってから既に小一時間、オークキングの攻撃から必死で逃げ惑うだけとなっていた。



 誰の目にも明らかである。女騎士がオークキングに、勝てる訳が無いのだと。


 世界の理であるオークキングと女騎士との凌辱関係。それが覆る事などあり得るわけがないと、誰もが諦めかけていた。


 そんな敗色濃厚のショクシュ子に対して、諦めていない者達がいた。


 共に修行に励んだ華や裴多達、そしてショクシュ子本人である。


 修行に明け暮れた日々を思い出し、その全てが徒労に終わるなど、絶対にあってはならないのだ。だからこそ、諦めない。


 たとえ最期の瞬間まで、ショクシュ子を信じ…そしてショクシュ子も仲間と触手を信じ、心折れることもなく闘い続けるのだ。


 しかし、勝機を見出すために必死で回避に徹するショクシュ子に対して、オークキングは未だに余裕の表情を見せていた。


 余裕があるのは、本気を出していないからでは無い。本気で女騎士を嫐っているからこその、余裕での攻撃なのである。



 女騎士が屈することによって解き放つ言葉を、オークキングは今か今かと待ち望んでいる。それ故、本気で嫐り続けるのだ。


 そう、あの言葉を女騎士の口から解き放たさせる為に…。





 勝機を見出せず、焦りを覚えるショクシュ子も、自身が嫐られているのは理解出来た。しかし、打つ手が無い。

 下手に攻撃に転じても勝算が無いのだから、嫐られ続けるしか無いのだ。


 無闇矢鱈に振り回されるオークキングの豪腕。その攻撃が掠っただけでも、ショクシュ子にとっては冷や汗ものであった。


 女騎士としての本能である『オークからの凌辱願望』が、掠っただけでも自身の中で芽吹き始めるからだ。


 聖剣ショクシュカリバーの聖なる力によって押さえ込んで来た凌辱願望が、度重なるオークキングの攻撃によってショクシュ子の精神を蝕んで行く。


 攻め手が無く、防御に徹していても、いずれは敗北するのは必至。敗北すれば、待ち受けているのは凌辱。


 それも、これだけお預けを喰らってからの凌辱である。さぞかし濃ゆい凌辱になるであろう。



 ショクシュ子の脳裏に敗北の二文字と、オークキングに凌辱される自身の姿が浮かび上がる。


 必死で振り払おうとする最悪の未来に、ショクシュ子は躍起になるが、それこそ最悪とも言える悪手であった。


 凌辱から逃れる為に精細さを欠き、避けなければならないオークキングの拳を避け切れず、ショクシュ子は防御で受け止めてしまった。


 人知を超えたオークキングの豪腕。それを真っ向から受け止めて、無事で済むわけが無い。


 オークキングの一撃によって吹き飛ばされるショクシュ子。30m程先にある壁に、ノーバウンドで叩きつけられた。




会場が静まり返る。壁に穴が空き、そこに埋もれる一人の女騎士。

 これから行われるのは一方的な凌辱だと、誰もが確信したからだ。



 女騎士であるショクシュ子もまた、覚悟を決めた。オークキングの一撃によって身体の節々は軋み、骨にもヒビが入っているのが分かる。


 だが、それだけでは無い。オークキングの一撃は、ずっと押さえつけていた女騎士の本能である『オークからの凌辱願望』をも、完全に覚醒させてしまったからなのだ。


 肉体と精神、その双方が『オークからの凌辱願望』によって侵食。


 薄れ行く意識の中、このまま凌辱に身を委ねるのも悪くは無いと、完全に心が折れかかっていた。


 そんなショクシュ子の脳裏に、打倒オーク拳の為に華や裴多、李羅達との修行に励んだ光景が映し出された。


 共に修行に励んだ光景から始まり、修行を始める前の34名からの献身なる触手責め、オーク拳との初めての対峙から34の道場破りを続けた詡王との旅路。


 そして中国へと向かう飛行場にて、見送る両親への元気な挨拶。

 走馬灯の様に脳裏を駆け巡る記憶の数々。

 どんどん過去へと巻き戻る記憶が(ツイ)える時、完全に気を失うのだと理解した。


 忘れかけていた昔の記憶。殆どが触手拳の修行の数々であったが、修行に明け暮れる日々に後悔は無かった。


 後悔があるとすれば、その修行によって培ってきた触手をこの様な形で失う事。


 今、オークキング拳に敗北すれば、完全に触手との決別が待ち受けている。


 不可避の凌辱。それを受け入れようとしている自分。情けない。


 目に涙を浮かべるショクシュ子。触手と共に生きて来て、それを失うという事は、人生の全てを失うと同義語。


 それを受け入れることの悔しさに、涙が留まる事を知らずに溢れ出す。


 しかし、そんな泣き崩れるショクシュ子に相反する様な、はに噛んだ笑顔がショクシュ子の脳裏を掠めた。ほんの一瞬の事である。

 人生で一度だけ見た、いつも厳格である父の、はに噛んだ笑顔。


 走馬灯に映し出された一瞬の過去の出来事。それを思い出した時、ショクシュ子は忘れかけていた触手の本質をも思い出した。


 あれ程、愛してやまなかった触手。その本質を見失っていては、勝てるものも勝てるわけが無い。


 諦めかけていたショクシュ子を奮い立たせる事となる、触手の真の力。それこそ見出せなかった勝利への活路となる、女騎士の真の力として昇華。


 失いかけた意識も取り戻し、溢れ出る涙もピタリと止まった。ショクシュ子は触手の素晴らしさを思い出したのだ。

 偉大なる父の、はに噛んだ笑顔を思い出すことによって…。



 めり込んだ壁から、おぼつかない足取りで立ち上がるショクシュ子。


 誰の目にも満身創痍のショクシュ子に、誰が勝ち目などある様に思えるだろうか?


 そして、この後のショクシュ子の言葉を聞き、その思いは更に強まるのであった。


 ショクシュ子は…いや、女騎士は立ち上がると、オークキングに対して放ってはいけない、あの言葉を解き放つのであった。











「くっ…殺せっ!!!」


 女騎士の凌辱ウェルカム発言を聞いた瞬間、オークキングがヨダレを撒き散らしながら突撃を開始。


 これだけ待たされたのだ。それはもう、タップリとネップリとヌップリと、余すこと無く凌辱を繰り出し続けるであろう。


 オークキングの目にはもう、女騎士しか映らない。ただ、女騎士を凌辱することのみが思考を埋め尽くす。

 そしてそれこそ、ショクシュ子の狙いでもあった。


 ショクシュ子の全身は『くっ…殺せ!』発言によって弛緩が始まり、凌辱受け入れ態勢が始まった。

 まず、これをどうにかしなければならない。



 弛緩が完全に始まる前に、ショクシュ子は聖剣ショクシュカリバーによって全身の快楽秘孔を刺激。

 自らに繰り出した奥義黄金触手(ゴールドテンタクルス)によって、全身の快楽神経に触手が迸る。

 これによって『オークからの凌辱願望』を払拭。


 オークキングがドM属性によって触手渇望症を払拭した様に、ショクシュ子もまた、触手によって凌辱願望を払拭したのであった。



 足の竦みが解け、全身の弛緩も収まった。しかし、オークキングは迷いも無く、突っ込んで来る。

 ショクシュ子の思惑通りに、一心不乱の突撃である。実に都合がイイ。



 オークキングの突撃に合わせる様に、ショクシュ子もまた、同じ様にオークキングに向かって突撃を開始した。


 お互いに突撃しあうオークキングと女騎士。


 その二人がぶつかり合う瞬間、ショクシュ子はオークキングの懐に潜り込み、下から()ち上げる様にしてオークキングを天高く上空へと弾き飛ばす。

 相手の勢いと発勁の力を利用して相手を吹き飛ばす、それは熊掌拳の熊 李羅との修行によって培ったものであった。



 象形拳48ドーム上空に吹き飛ばされたオークキング。その落下地点を予想して、ショクシュ子は助走をつけると、そのまま天高く飛翔。


 その飛翔能力は白鶴拳の鶴 裴多との修行によって会得したものであった。



 落下してくるオークキングに飛び掛かる女騎士。その手に作り上げたのは、手刀によって成し得た聖剣ショクシュカリバー。


 手刀は人差し指と中指のみを立たせた状態に変化し、聖剣ショクシュカリバーの鋭さが飛躍的に向上された。


 斬撃を得意とする蟷螂拳が使い手、拝 華との修行を元に再構築された聖剣は、その鋭さが更に増すのであった。







 多くの仲間達との出会いによって成し得たこの瞬間。象形拳48ドーム上空にて二つの影が重なり合う時…女騎士拳究極奥義が炸裂するのであった!



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