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最強の格闘技とは触手拳にあらず!  作者: 猪子馬七
最終章 触手決戦
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第55話 禁じ手



「奥義!触☆手池肉林(ショクシュチニクリン)!」


 オークキングの周りを神速によって駆け巡るショクシュ子が、八方から襲い掛かる。


 全身を聖剣ショクシュカリバーによって斬り刻まれるオークキング。痛みは無いが、全身を無数の触手に襲われる感覚に囚われる。


 並の人間であれば一瞬にして触手渇望症を発症して、急所から大量の体液を放出するのが奥義触☆手池肉林(ショクシュチニクリン)の真髄。

 しかし、禍々しいオーラに身を包み、女騎士への凌辱衝動を高めているオークキングには、まるで通じなかった。


 触手よりも魅力的な女騎士への凌辱。オークキングとしての本能が、触手渇望症を容易に払拭するのであった。






「奥義!移触手術(イショクシュジュツ)!」


 オークキングの指先に、聖剣ショクシュカリバーによる無数の連撃が繰り出された。

 聖剣ショクシュカリバーによる猛攻が収まると、オークキングの指先がまさかの触手化。


 強制的に指先を触手化させ、触手の素晴らしさを強制開眼させるのが、奥義移触手術(イショクシュジュツ)の真髄。


 しかし、触手の素晴らしさよりも、女騎士への凌辱衝動の方が素晴らしさでは勝っている。

 触手の素晴らしさに開眼して、オークキング化が解けるなどと言うことは、あり得るわけが無いのだ。



 完全無欠のオークキング。女騎士への凌辱衝動は揺るぎ無い。


 触手化した指先も直ぐに元に戻り、ショクシュ子の奥義を完全に無効化するのであった。




 今回、ショクシュ子が用意した奥義は三つ。そのウチの二つが完全に無効化と、散々たる結果であった。


 残る一つの奥義。これは余りにも凄まじい破壊力故に、あえて禁じ手とした奥義。


 まさか、この禁じ手を出さざるを得ないとはと、ショクシュ子は感嘆の声を漏らす。

 しかし、出し惜しんでいては敗北の憂いを見るのは明らか。封印していた禁じ手を、今こそ解き放つのであった。







「奥義!黄金触手(ゴールドテンタクルス)!」


 聖剣ショクシュカリバーによる乱れ突きが、オークキングの全身に襲い掛かる。


 だが、ただの突きでは無い。突きの一つ一つが的確にオークキングの快楽秘孔へと突き刺さり、快楽神経を触手が駆け巡る感覚に陥るのであった。


 鷹爪拳が奥義『黄金鷹(ゴールドフィンガー)』をも超える破壊力。それが奥義黄金触手(ゴールドテンタクルス)の真髄。

 常人ならば一撃にて悶死する攻撃を、無数に全身にて浴びたオークキング。


 手応えはあった。


 触手を愛して止まない女としての自我が、オークキングの凌辱衝動を凌駕…する筈であった。




 禁じ手とした奥義は間違い無くオークキングにクリーンヒットした。しかし、オークキングはショクシュ子を見てニタリと笑う。


 その瞬間、ショクシュ子の背筋に悪寒が走る。

 己の認識の甘さを、そして見誤っていたオークキングの凌辱衝動の凄まじさを、垣間見たからだ。





 詡王の凄惨なる半生。それはろくでなしの父親による誘拐事件から始まった。


 子育てなど出来ない父親の、児童虐待とも言える修行によって覚醒、育成させられたドM属性。


 友達も作れずに引きこもりとなり、その後は父親の復讐の為の道具として生きる羽目に。


 辿り着いた象形拳48のメンバーとしての、華々しいアイドルとしての道も、相変わらずの虐待を強いられるしまつ。それもタダ働きで。


 …余りにも不憫なる半生であった。





 これだけの人生を生きて来た詡王にとって、ショクシュ子との出会いは衝撃的であった。


 自分の様なド変態と普通に接してくれて、友達と呼んでくれたのだ。嬉しくない訳が無い。


 しかし、屈折した人間関係しか築けなかった詡王の半生では、『友達との普通のコミュニケーション』が取れる事は無かった。


 人間関係が『虐待』のみの半生。そんな詡王だからこそ、ショクシュ子とも普通の人間関係では満足が行かなかったのだ。



 奇しくも詡王が学んだ象形拳は、凌辱を本懐とするオーク拳。そのオーク拳を極め、オークの自我との完全融合を果たした時、凌辱衝動の権化とも言うべきオークキングへと成長を遂げていた。


 コミュニケーション能力が凌辱のみのオークキング。触手での繋がりなど、通じるわけが無かったのだ。



 禁じ手すら通じず、攻め手を失い立ち尽くすショクシュ子。


 それを見ていやらしい笑みを浮かべるオークキングが、唯一のコミュニケーション能力である『凌辱』を以って、再びショクシュ子に襲い掛かるのであった。



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