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最強の格闘技とは触手拳にあらず!  作者: 猪子馬七
最終章 触手決戦
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第45話 乱入者



 象形拳48が舞台にて、歌と踊りを披露している。


 それを控え室のモニターで眺めているのは王 詡王。

 この後の出番で、皆からリンチを受ける予定だ。


 歌も終盤にさしかかり、そろそろ詡王も出番の用意を始めようと立ち上がると、モニターに映っている会場が、にわかに騒がしくなった。





 モニターに映る突然の乱入者達。それが舞台にいる象形拳48に向かって突撃を開始した。


 勿論、スタッフが止めに入るが、そんなものは御構い無しにと、突撃は止まらず一直線に突き進む。


 舞台に辿り着いた先頭集団の一人が、マイクを奪って宣言をする。


「さあっ!最強の象形拳を決めようかしらね!これだけの象形拳の使い手が揃ってるんだから、最強を名乗る象形拳の使い手は一人や二人はいるんでしょう?蟷螂拳?白鶴拳?熊掌拳?それとも…オーク拳?さあ、最強を決める舞台は整ったわよ!始めましょうか、最強の最高の最後の闘いを!」


 突然現れた乱入者達に、最初は面食らった会場ではあったが、客は演出の一つだと勘違いして大歓声を。


 逆に象形拳48のメンバーは、各流派を追い出された面々の乱入だと気付き、杮落としを邪魔しに来た事を即座に理解して臨戦体制に。




 ショクシュ子率いる34名の猛者達と、300名を超える大所帯にまで膨れ上がった象形拳48。


 10倍近い戦力差に物怖じしない猛者達と、人気絶頂のアイドルグループとの世紀の対決の火蓋が、切って落とされたのであった!






「じゃ、予定通りに行くわね」


 そう言うとショクシュ子は、裴多と共に詡王の居る控え室に向かった。

 残された面子の中から李羅と華が前に出る。


「それじゃあ私達が…」


「雑魚の相手と行きましょうかね」


 かつて三大天才格闘少女と謳われた李羅と華。

 その武名は色褪せるどころか、人並外れたオーラによって未だ健在だと物語っていた。



 象形拳48のメンバーも、ここで引くわけには行かない。

 すでにワールドツアーの話まで来ており、売れる事を前提に計画は組まれているのだ。


 ここで下手をうって人気が急落しようものなら、今までかけた経費も狂産党への多額の賄賂も、全てが台無しになる。


 メンバーにとってもピンクの象にとっても、引くことも負ける事も許されない闘いなのであった。



 乱入者達の思惑通りに、闘わざるをえない状況下に追い込まれた象形拳48。そのウチの二名が先手必勝とばかりに、黄ばんだ熊の着ぐるみを着た熊掌拳が使い手、熊 李羅に向かって襲い掛かる。



 たとえ三大天才格闘少女と謳われた李羅であっても、二人がかりなら勝てると考えての先制攻撃である。

 勿論、たった二人で敵う程度なら、三大天才格闘少女などと謳われる訳が無い。




「奥義!発勁世追(ハッケィヨオ)い!」


 李羅の発勁の力を利用した突き飛ばし技が、襲いかかる二人をカウンター攻撃として、容赦無く吹き飛ばす。


 30m程の距離を、ノーバウンドで壁まで吹き飛ばされる二人。

 受け身もとれずに壁に激突すると、そのまま意識を失いガクリと倒れ込む。


 本来であれば壁に激突して体制が崩れたところに追い討ちをかけ、この世からあの世へと送り出す程の破壊力のある一撃を繰り出すのが、奥義発勁世追いの真髄。


 しかし、その真価を見せる前に敵はグロッキー。怠けていた頃の自分では無いと言わんばかりの、見事なまでのキレのある奥義であった。


「相変わらず、凄い威力のカウンターね」


 普段、人を褒めることの無い華も、李羅の奥義には素直に称賛を贈る。


 そんな華を今度は標的にと、三人の象形拳48のメンバーが襲いかかってきた。


 二人で駄目なら三人でと、何とも安直な思考での攻撃であったが、華の容赦無い奥義により返り討ちに会うのであった。




「奥義!八鎌囲離(ハカマイリ)!」


 三方向より襲いかかる象形拳48のメンバーを、華は全身を回転させる動きから繰り出す鎌鼬によって対応。


 元々、死角からの攻撃に対処する為に編み出された奥義である。その八方からの攻撃に対応出来る程の奥義であるにも拘らず、敵は僅か三人。幾ら何でも見誤り過ぎている。

 三人は華に触れることすら叶わず、繰り出された鎌鼬の餌食となり、全身から血飛沫をあげながら倒れ込むのであった。



 一瞬にして五人ものメンバーを倒された象形拳48。


 メンバーはまだ300人以上も居るにも拘らず、たった二人の李羅と華に恐れをなして後退りをするしまつ。


 そんな怖気づく象形拳48メンバーの中から、二人のメンバーが前に出る。


「久しぶりだね、熊 李羅!まさかこんな形で再び合間見えるとは…何とも運命を感じるよ!」


 出て来た二人のウチの一人、オカッパで巨乳の女が李羅との再会を懐かしそうに語る。


 だが、それは旧友との思い出話を語る様なものでは無く、被害者と加害者との対面によるものであった。


「本来であれば私はあんたへの復讐の為に、これまで生きて来たんだけどね。それが、ひょんなことからアイドルにスカウトされ、瞬く間に人気アイドルの頂点になったのよ。今や人気、実力共にナンバーワンのセンターを務める程に!今更、あんたへの復讐心なんてものはどうでもよくなって、忘却の彼方に置いて来たつもりだったけど…まさか再び私の前に現れて邪魔だてするとはね!そんなに私の人生を狂わせたいのかっ⁉︎」


 恨み辛みを吐き捨てる。


 そしてそれに応える李羅の言葉によって、更に発狂するのであった。


「…すまん、誰だお前は?」


「は?」


「ひょっとして誰かと勘違いしてないか?私はお前のことなど全く知らぬぞ?」


「いや、あんた何言ってんの⁉︎私よ!(キン)よ!同じ熊掌道場に居た金 田魯(タロ)よ!あんたの宿命のライバルの田魯ちゃんよ!」


「…田魯ちゃん?」


「そうよ、思い出した⁉︎あんたと一緒に道場に居た田魯ちゃんよ!」


「…いや、やはり知らぬな」


「冗談…よね?私…あんたに復讐する為に…死に物狂いで…修行に励んできたのよ?あんたに道場を追い出されて…私の転落人生が始まって…落ちるトコまで落ちて…それをピンクの象の幹部に拾われて…ここまで必死になって登り詰めて…そ、れ、を…知らないだと⁉︎」


 田魯はピキピキと青筋をたてると、怒りに顔を歪める。


「だったら!思い出すまで痛めつけるまで!この私の存在を忘れたことを後悔しながら!懺悔しながら死ぬがイイ‼︎」


 物凄い形相で発狂しながら李羅に襲い掛かる田魯。

 その横で田魯と共に前に出た、もう一人の女が華に向かって見えない斬撃を繰り出した。


「まさか、あんたも私の事を忘れたとか言わないわよね?」


「はて?この程度の斬撃使いなど、山程見てきたからな。一体誰だったか、皆目見当が付かないのだが?」


 華はそう言うと、襲い掛かる斬撃を軽くあしらう様に、同じ数の斬撃を繰り出して相殺。


 挨拶代わりの斬撃であったが、いとも容易くいなされると、流石に小さく舌打ちをする。


「チッ!触手なんぞに敗北した負け犬の癖して口だけは一丁前ね!日本人の汚い血の混じった雑種が、偉そうにしてるんじゃ無いわよ!」


「おお、思い出したぞ!確か私と組手をする時になると原因不明の腹痛を起こして逃げまくる、何とも惨めな蟷螂拳の使い手が道場の片隅に居たのをな。確か名を…ハラグロとか言ったかな?」


(ハラ) 糜路(ビロ)だ!それと私は野蛮な日本人の血が混じった雑種とは、関わりたくなかっただけで逃げてたわけでは無い!だが、それも今日まで!貴様なんぞと関わりたくは無かったが、この象形拳48に(あだ)なす者が居るのであれば排除するのみ!汚らわしいが、相手をしてやろう…象形拳48副センターであり、現蟷螂拳がトップの原 糜路様がな!」



 李羅VS田魯、華VS糜路。

 二組の猛者達の死闘が始まると、それを中心に全員が入り乱れて乱戦が始まるのであった。


「田魯さんと糜路さんに続け!敵は僅か30人かそこら!こちらは300人を超える大所帯の象形拳48!複数で取り囲んで蹴散らかしてやるのよ!」


 メンバーの一人の号令に呼応して、象形拳48のメンバーが一斉に襲い掛かる。

 それに怯むことも無く、李羅と華を除く31名の猛者達も一斉に立ち向かう。


 今世紀最大の象形拳による大乱闘。


 犬が、兎が、蠍が、鴨が、猿が、龍が、多くの動物達が、所狭しと暴れ出す。






 世界中へと生放送で配信されている杮落としの映像が、象形拳最強を決める映像として配信されるのであった。



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