第44話 杮落とし
象形拳48ドーム。中国象形拳組合ピンクの象の、権力の象徴とも言うべき建造物。
その完成を祝して大規模な催しがなされていた。
大賑わいの催しの中、屋台の肉まんをかぶりつきながら、密談をする35の影があった。
「首尾は?」
「上々。あとは時間になったら突入するだけよ」
「そう」
「まあ、時間が来るまで肉まんでも食べてましょ」
「肉まんを食べるのもイイんだけどさ、この肉って何の肉?」
「そりゃネズミ肉でしょ?」
「…マジ?」
「普段ならネズミ肉を豚肉に混ぜて挽肉にするところだけど、屋台の関係者が溝鼠拳の関係者ばかりだからね、今回は100%ネズミ肉だと思うわよ」
「……」
「あそこの獅子舞を踊ってるのは獅子拳の関係者だし、花火を取り扱ってるのは蟷螂拳、賭場を開いてるのは黒兎拳の関係者ね。象形拳48を中心に、各流派がこぞってお金儲けに躍起になってるわよ」
「そっか…それじゃ、なんか悪い事をするみたいね、私達」
「自覚があるなら止めにする?」
「冗談。今更、止める訳無いでしょ。でも、皆は私と行動を共にする必要は無いからね。止めるなら今のウチよ?」
「それこそ冗談でしょ?ここまで来て怖気付くなら、最初から逃げ出してるわよ。格闘技をお金儲けや枕営業で穢す様な連中とは、こっちから縁を切ったんだから。真の格闘家の力、見せつけてやるんだからね!」
「そうね。私達の修行の成果、折角の杮落としで、お披露目と行きましょう!ピンクの象が用意した舞台だけど、私達が乗っ取らせて貰おうかしら!」
岸ショクシュ子が立ち上がる。それに続いて34名の猛者達も立ち上がる。
時は来た。
最強の象形拳を決めるべき最高の舞台が整い、格闘界に刻まれる伝説の闘いが今、幕を開けるのであった!
ジャジャジャジャーン!
第5章 完




