第38話 荒治療
裴多がショクシュ子を保護してから、半月程経ったある日の事。裴多はショクシュ子の部屋に来るやいなや、荒治療の提案を申しでて来た。
未だに復活しない触手拳の、打開策としての提案である。
「今まで自然に回復するのが一番だと思ってたから待ち続けたけど、どうにも埒が明かないわよね?そこでここは、思い切って荒治療に踏み出そうと思うの!」
裴多の提案にショクシュ子は訝しげに眉を顰める。
荒治療をして治るのなら、確かに試してみる価値はある。しかし、この半月のショクシュ子の努力は、既に荒治療と呼べる程の努力でもあった。
つまり、裴多の言うところの荒治療とは、今まで以上の荒治療になると言うこと。
「この半月、私はそれなりに努力して来たつもりだけど…それよりも荒治療だと言える事をするわけ?」
「そうよ。今までそれなりの努力はして来たかも知れないけど、私に言わせればあんなのオママゴトみたいなものなのよ!これからする事は、本当の荒治療になるんだから!」
裴多の発言に流石にショクシュ子も戸惑う。
触手拳の復活は確かに願ってはいることではあるのだが、これ以上の荒治療ともなれば、生命に関わる話となるからだ。
「ねぇ、裴多ちゃん…その荒治療って…生命に関わるとか…」
「あ、下手したら死ぬかもね」
裴多がしれっと爆弾発言。だが、裴多の発言はそれだけでは無かった。
「荒治療するって言ったけどさ、これはもう決定事項なの。一応確認の為に話しただけで、ショクシュ子ちゃんに決定権は無いのよ、残念ながら」
「ちょ…なんで私に決定権が…」
「さあ、みんな〜入って来て〜♪」
ショクシュ子の話など御構い無しにと、裴多は待機させていた客人達を部屋の中へと招き入れた。
ゾロゾロと部屋に入ってくる面々。ショクシュ子にも見覚えのある顔触れであった。
裴多を含む34名のピンクの象を代表する猛者達が、ショクシュ子の居る部屋に所狭しと立ち並ぶ。
そう、ショクシュ子に敗れた34名が、ショクシュ子の触手拳復活の為の荒治療に、自ら名乗りを上げたのであった。
「な、なんで皆が…」
驚くショクシュ子に答えたのは熊掌拳が使い手、熊 李羅であった。
「今さら何を言ってるのだ?ここは我が家の敷地にある隠れ家だぞ?ショクシュ子ちゃんを逃がす時に、裴多ちゃんの顔が割れているから、私の所有する隠れ家に匿ったのではないか」
そんな話は勿論、初耳である。
てっきり、裴多のみが助けてくれたのかと思いきや、ここにいるメンバー全員がショクシュ子を助ける為に、尽力してくれたのであった。
詳しく話を聞くと、ショクシュ子が詡王の襲撃に怯えているから、あえて話さなかったのだと。
これだけ多くのメンバーがショクシュ子の居場所を知っていると分かれば、どこかで情報が漏洩するかも知れない。
そうなるといつ詡王が凌辱しにやって来るかと、下手に不安を煽るかも知れない。だから話すわけには行かなかったのだと、説明を受けた。
確かにこの半月だけでも、ショクシュ子は詡王の襲撃に酷く怯えていた。
凌辱は確かに怖かったかも知れない。しかし、凌辱されることよりも凌辱を細胞レベルで受け入れてしまう、その自分自身が怖かったのだ。
肉体も精神も、その全てが凌辱を受け入れる様になる。それを恐れたショクシュ子は、詡王の影にいつまでも怯えているのであった。
説明を聞いてショクシュ子は納得。
しかし、聞かされなかった事には納得出来ても、これだけのメンバーが自分の為に尽力を厭わないのは納得が出来ないと言うか、信用が出来ないと言ったところ。
そんな不審に思うショクシュ子に、裴多はもの凄く素敵な笑みを浮かべて答えてくれた。
「ショクシュ子ちゃん、貴方はそんなんだから触手拳を使えなくなったんだよ?ここにいる面々はね、み〜んな触手の素晴らしさに開眼したのよ。ショクシュ子ちゃんとの死闘によってね!触手の素晴らしさを知って、今さら裏切るわけが無いじゃない!」
つまり、全員が触手渇望症を発症したのだと説明。だから裏切るわけが無いと。
そして、ショクシュ子がそんな触手の素晴らしさを忘れて、皆の気持ちを理解出来てないから、触手拳を使えなくなっているのだと話す。
触手拳の使い手だったショクシュ子が触手の素晴らしさを忘れ、触手拳に敗れた者が触手の素晴らしさを理解している。
なんともおかしな話ではあるが、これが荒治療をするきっかけとなり、皆がショクシュ子の前に集結したのだった。
満面の笑みを浮かべる裴多の右手が、ニュルリと触手化する。
触手拳の使い手で無くても、身体の一部を触手化することは可能。
それも裴多達の様な熟練の格闘家であれば、誰もが見事な触手化を可能に。
全身を触手化出来る猴模拳の猿 摩根以外、全員の右手が触手化。
それを見たショクシュ子は、荒治療の正体にやっと気が付いた。
すぐさま、窓に向かって走り出すショクシュ子。
勿論、逃走など誰もが許すわけが無い。
ここにいるメンバーは、誰もがショクシュ子の触手によって敗れている。
そのショクシュ子が触手拳を使えずにいるのだ。ここぞとばかりに触手で責めるのは当然の事といえよう。
恨み辛みでの触手責めでは無い。ショクシュ子に完全復活して欲しいと願っているからこその、荒治療なのだ。
その割りには、誰もが嬉々としてショクシュ子に襲いかかっているが、恐らくは気のせいであろう…多分!
そんな右手を触手化させ、嬉々として襲いかかって来る連中から脱兎の如く逃げるショクシュ子ではあったが、多勢に無勢である。
飛び出して来た飛燕拳の燕 乃素が、超高速回転足払いによってショクシュ子を転ばせる。
そのまま全員の触手に捕まり、あえなくベッドまで引きずり戻された。
ベッドの上に押さえ付けられたショクシュ子と、それを取り囲む34名の猛者達。
そのウチの一人鷹爪拳が使い手、鷹 香冬が容赦無くショクシュ子の全身にある快楽秘孔へと、攻撃を繰り出す。
続いて蛇毒拳の蛇 韋湖も「あの時の触手の暴走は凄かったからね〜これで暴走すれば触手拳を思い出すかもよ?」と、言いながら媚薬手による急所への攻撃を繰り出す。
その後は皆で触手責め。
泣きながら大量の体液を放出するショクシュ子。勿論、そんな事では終わらない。
ここぞとばかりに責め続ける34名の猛者達…の、触手。
その触手の宴とも呼ぶべき狂乱の宴は、ショクシュ子の完全復活を願うがあまり、一ヶ月にも及ぶのであった。




