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第31話 最後の触手拳



 ピンクの象を代表する猛者達の中で、膂力の強さのみで競い合えば、猛虎拳の使い手であるトランスが一番だと言われている。


 自称、宇宙人を名乗る不思議ちゃんのトランスは、人間離れした怪力によりショクシュ子を大いに苦しめた。


 そんなトランスを相手に、辛くもショクシュ子が勝利を収める事が出来たのには、二つの理由がある。



 そのウチの一つが猛虎拳の特性によるもの。


 猛虎拳は相手の武器や防具を破壊して、素手で蹂躙するのが特徴の象形拳。

 徒手空拳のショクシュ子に役立つ象形拳では無かったのだ。



 そしてもう一つの理由が、トランスの体質。

 ショクシュ子は今まで多くの格闘家と触手拳にて闘ってきたが、トランスほど触手が馴染む身体は見たことが無かった。


 まるで触手が絡み付く為に存在するのではと思わせる程の、見事なまでの『触手絡み付き体質』。

 それに輪を掛ける様に、トランスは奥義を繰り出すのである。



 奥義虎舞流(ラッキースケベ)

 トランスの繰り出した波動により、ショクシュ子の着込んでいた宇宙人の衣装は弾け飛び、一糸纏わぬ姿に。

 そして何故か奥義を繰り出した張本人である、トランスの衣類も弾け飛ぶ。


 悪魔の様な黒い尻尾のアクセサリーだけはそのままだが、それ以外は全て弾け飛んだのだ。



 まさに触手を絡ませて下さいと言わんばかりの、見事なまでの手際。

 トランスは格闘家でありながら、まるで勝利に対する貪欲さが欠如している様だった。



 ならばとショクシュ子は、お望み通りに触手を絡ませてトランスを捕縛。

 トランスは勢い良く体液を放出するのであった。



 トランスの怪力に何度か危ない場面もあったが、最後は呆気なく触手によって撃沈。


 しかし、勝利した筈のショクシュ子ではあったが、この勝利には不満があった。


 あれだけ大量の体液を放出したトランスが、目の前ですぐに立ち上がる。

 そしてケロッとした姿で笑顔を見せるのだから、己の勝利に疑問を持つのも仕方が無い。



 別にショクシュ子は勝ちを譲られたわけでは無いのだが、トランスの格闘家としての信念の無さによって勝利したのが不満だった。


 可愛い顔をしているのに、自分を宇宙人だと不思議ちゃんを演じているのも、いただけない。



 そんな不満気なショクシュ子に、トランスは「また遊ぼうね♪」と言いながら笑顔で手を振って帰るのであった。


 勿論、全裸で。




 着替えを持ってショクシュ子の元にやって来た詡王。

 二人でトランスの後ろ姿を見送るわけだが、何故か尻尾のアクセサリーがひとりでに動いた様に見えた。


 アクセサリーが勝手に動く訳が無いので、目の錯覚だったのだろうと、二人は結論付けるのであった。








 こうして多くの格闘家達を撃破して来たショクシュ子。


 先日に撃破した飛燕拳の使い手、(ツバメ) 乃素(ノス)は回転足払いによる低姿勢の攻撃を得意とした。


 さながら低空を滑空する燕の如く、低い態勢から相手の足元を狙う闘い方は、お互いに立って向き合う闘いに慣れた者には、些か不利な状態と言えよう。



 奥義飛LOW燕(ヒロウエン)による超高速回転足払いが、ショクシュ子に襲いかかる。

 しかし、今までの猛者達との死闘により得た経験値の前では、乃素の奥義は無力に等しかった。


 触手を絡ませ瞬殺したショクシュ子。残りはあと一人となった。





 そしてバスに揺られて三時間。最後の一人との対戦の場に到着した。






 詡王が毎度の様に用意しているコスプレ…いや、変装道具。

 今回、荷物から取り出したのは女性用の甲冑であった。


「へえ〜今回は甲冑を用意したの?」


 ショクシュ子は取り出された甲冑を珍しそうに眺めた。


「うん。最後はこの甲冑を装着して貰うことになるけど、甲冑の装着は大丈夫?」


「日本の甲冑ならサムライ対策に着込んだ事はあるけどね。西洋の甲冑は未体験だから、詡王ちゃん手伝ってくれる?」


 そう言うと詡王に手伝って貰いながら甲冑を装着。

 日本人であるショクシュ子だが、何故か西洋の甲冑はえらく似合っていた。


「じゃ、行こうか…最後の闘いに!」





 ショクシュ子と詡王、長い二人の旅路の果ての、最後の闘いが遂に始まるのであった。


 そしてショクシュ子にとって、生涯最後の触手拳での闘いとなる。




 この日を境にショクシュ子は、人生の全てを捧げた触手拳を…二度と使えなくなるのであった!



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