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第30話 触手快進撃



 鷹爪拳の(タカ) 香冬(カトウ)を撃破して、その次に向かったのが猴模拳の使い手である(サル) 摩根(マネ)の元。



 バナナの叩き売りのオッさんに扮して摩根との対戦に備える筈が、ショクシュ子によるオッさんの変装に詡王の納得が行かず、無駄に時間を浪費。



 ちょび髭を生やしてそれなりの完成度ではあるものの、詡王は何故か納得しない。


 暫くして「そうだわ!」と、ポンと手を打ち取り出したのが、一房のバナナ。


 バナナを一本もぎ取ると、ショクシュ子の股間にセット。これで完成だと、やり遂げた感溢れる満面の笑み。


 苦笑いするショクシュ子などお構いなしに、詡王は大絶賛。

 流石にこれは無いだろうとは思いながらも、ショクシュ子は摩根との対戦に挑むのであった。





 摩根との対戦が始まった。


 ショクシュ子がいつも通りに触手拳の構えをとると、摩根も同じ構えをとった。


 ショクシュ子が別の構えをとると、摩根も同じ様に構える。


 まるで鏡に映しだされた自分と対峙するが如く、摩根はショクシュ子の動きを完全にトレースして対峙する。



 奥義猿仲達(サルシバイ)。相手の動きを真似して、格上の敵に対しても互角の勝負へと持ち込む、猴模拳が奥義である。


 自分と同じ動きをする敵との、決着のつかない対戦。それに焦り、憔悴して隙を見せたところを狙いすまして、攻撃してくる奥義である。


 勿論、隙をつくだけが奥義の本質では無い。

 相手の動きをトレースすることにより、癖や弱点を見出し対応するのが猴模拳の真髄。


 触手拳の動きを初見でトレースする摩根は、まさに天賦の才を持つ者と言えよう。




 触手拳は同じ触手拳との対戦が最も難儀だと、触手拳の開祖である岸ベシローは語る。


 何故ならば、触手拳は最強の格闘技だから。


 最強である触手拳が敗れるとしたら、同じ触手拳に他ならないと、揺るぎ無い触手への信仰がそう語らせるのだ。



 そんな最強の格闘技である触手拳に対峙するのが、猴模拳によって生み出された触手拳。


 まさか中国の地にて自分以外の触手拳と相対するとは、夢にも思ってもみなかったショクシュ子。


 しかし、多少の驚きはあったにせよ、負けるとは思えない。何故ならば猴模拳とは所詮、猿なのだから。




 実は触手拳には、猿が唯一会得してはならない奥義と言うものが存在する。

 それを発動すれば負けることなどあり得ないと、ショクシュ子は見ていたからだ。



 ショクシュ子は奥義マンG固めショクシュパスホールドを繰り出した。それも自分自身に。


 相対する摩根も真似して同じ様に自分自身に奥義マンG固めショクシュパスホールドを繰り出した。

 …そう、猿であるのにも拘らず!




 その後の展開は予想通りであった。

 一気に精細さを欠いた摩根の動き。モジモジと腰を捻じりながら、何かを我慢している。



 あとはもう、赤子の手を捻るが如きであった。

 今度は奥義マンG固めショクシュパスホールドを摩根に発動。これにより、三分と経たずして決着はついた。



 しかし、決着がついても、摩根は自身の急所への攻撃を止める事は無かった。


 このままでは死ぬまで自身への攻撃を止めないと判断したショクシュ子は、香冬との対戦で学んだ経絡秘孔への攻撃を発動。


 摩根の両腕を完全に動かなくしたのだった。



 それでも摩根は自身の急所への攻撃が諦め切れなかった。

腕が動かないならばと、舌を自らの急所に向かって伸ばし始める。

 勿論届かず、そのままでんぐり返しに。


 なんとも哀れに思ったショクシュ子は、決着がついた後も摩根を触手で責め続ける。


 自分で自分を慰めるのは卒業しろと言わんばかりの、見事なまでの触手責めであった。



 摩根は幾度となく触手によって昇天。ショクシュ子は摩根が動かなくなるまで、存分に責め続けるのであった。






 猴模拳の猿 摩根を撃破して、次に向かったのが鮫鰭拳(サメヒレケン)が使い手、(サメ) 派舵(ハダ)である。


 水中での闘いに特化した鮫鰭拳は、相手を水中に引き摺り込んだ時点で勝利が確定すると言っても過言では無い程の、水中戦でのスペシャリストであった。



 そこでマネージャー詡王の考えた作戦は、水場の無いところに誘き出しての戦闘。


 しかし、ショクシュ子は詡王の作戦を聞いて難色を示し、陸地での戦闘を拒否。


 たとえ陸地で勝利したところで、相手の得意とする条件を満たさずでの勝利では、納得がいかないのだと説明。



 完全なる勝利の為にも、完全なる敗北を与えなければならない。それが最強の格闘技の宿命(さだめ)なのだからと、熱く語るショクシュ子に詡王も仕方がないと作戦変更。



 詡王は作戦を練り直す為にも、ショクシュ子がどれくらい泳ぎが出来るのかを聞いた。


 しかし、「ビート板さえあれば前に進めるよ!」と、笑顔で答えられたら作戦もクソも無い。




 ロクな対策も思いつかないまま、海にて派舵との対戦が始まった。


 ビート板を使いバタ足で進むショクシュ子から、派舵は容易にビート板を奪うと沖へと放り投げた。

 ビート板を失い、なんとか海面に浮くことだけは出来るショクシュ子に、派舵は容赦無く水中から襲いかかる。



 奥義刀娘(トコ)(ジョーズ)

 手刀を背鰭に見たて、水の抵抗を極限にまで減らした水中戦用に特化した斬撃である。



 水中にてマトモに動けないショクシュ子が、斬撃によって四方から切り刻まれる。

海面はショクシュ子の血で覆われ、本物の鮫をも呼び寄せる程の勢いであった。



 本物の鮫が来る前に決着をつけるべきと判断した派舵が、ショクシュ子にトドメを刺しに猛スピードでやって来る。


 と、ここでショクシュ子がやっと反撃に打って出た。


 猛スピードで泳ぐ派舵に、同じ様に猛スピードで立ち向かうショクシュ子。勿論、派舵は驚愕する。


 先程までマトモに泳げなかったショクシュ子が、見事なまでの泳法で派舵に向かって来るのだ。

 それも、派舵と同じ動き…まるで鏡に映る自分自身が如くである。



 ショクシュ子は猴模拳との闘いにおいて、相手の動きをトレースする術を経験していた。

 その経験を活かし、派舵の泳法をトレース。


 時間はかかったが、ショクシュ子は水中にて自由に動ける程の体術を、身につける事に成功していたのだった。



 ショクシュ子の闘いながらの目覚ましい進化に驚きを隠しきれない派舵ではあったが、水中戦にて鮫鰭拳が遅れを取るわけにはいかない。


 意を決してショクシュ子に再び襲いかかるが、獲物であるショクシュ子を横取りする者が現れた。



 派舵では無い、何かがショクシュ子に猛然と襲いかかる。

 血の匂いに誘われてやって来た、本物の鮫である。



 体長2mをゆうに超える鮫。それがショクシュ子に襲いかかったのだ。


 普通の人間が水中にて鮫に襲われたら、ほぼ間違い無く喰い殺される。それが世間の常識。


 しかし、ショクシュ子の触手拳は、世間の常識を超えた結果を導き出すのであった。


 襲いかかる鮫に、触手化したショクシュ子が絡み付く。


 絡み付くと同時に『メキッ!』っと鈍い音が鮫から聞こえると、先程まで元気に泳いでいた鮫がそのまま力尽き、海底へと沈み始める。


 鮫を捕食する巨大なる水蛸が如く、ショクシュ子は水中にて難なく鮫を屠るのであった。


 それを目の当たりにした派舵は、水中に居ながらも冷や汗が流れ出るのを感じた。



 鮫の乱入によって自身の攻撃の手を止めたわけだが、もしあのままショクシュ子に突っ込んでいたら、海底へと沈む鮫が自分の姿であったのだと、理解出来たからだ。


 ショクシュ子に挑む。それを思うだけで巨大な蛸に絡みつかれる自身の姿や、巨大なイソギンチャクに呑み込まれる自身の姿が脳裏をかすめる。



 そして触手の凄まじさを本能で察した派舵は、思わず陸へと飛び出してしまった。


 だが、陸に上がってすぐに気付く。鮫鰭拳の使い手である自分が、水中戦から逃げ出してしまった事を。



 本能に従い水中から離脱することは、格闘家として間違いでは無い。

 しかし、水中戦を得意とし、水中での戦闘に誇りを持つ鮫鰭拳の使い手が咄嗟にとは言え、陸地へと離脱したことは恥じるべき行為であった。



 顔を真っ赤にしながら悔やむ派舵に、水中から顔を出したショクシュ子が、指でクイッと招き出す。


 この挑発から逃れる訳が無い。派舵は再び水中へと飛び込み、ショクシュ子に立ち向かう。




 派舵は水中にて最速の手刀による斬撃を繰り出した。恐らく、人生で最も最速の斬撃であろう。しかし、ショクシュ子は無情にも、その上を行く。


 振りかぶる手刀よりもモーションが少なく、最も最短で相手に届く触手による突き。

 派舵が水を切り裂く鰭なら、ショクシュ子は水を撃ち抜く触手。


 軍配は触手拳に上がるのだった。





 派舵に絡み付いた触手が、邪魔な(サラシ)(フンドシ)を無理矢理に剥ぎ取る。


 ショクシュ子の着ていたスク水も、派舵の奥義により斬り裂かれており、これもショクシュ子の激しい動きに耐えられずに千切れ落ちる。




 一糸纏わぬ二人の美少女が、水中にて絡み合い…そして一人が痙攣して動かなくなった。


 水温の変化で大量の体液の放出を確認したショクシュ子は、触手拳が水中戦でも最強であることを、改めて証明して見せたのであった。



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