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第29話 4ヶ月の成果



 ショクシュ子が中国へと渡り、およそ4ヶ月近くの時が流れた。



 触手拳が使い手、岸ショクシュ子とマネージャーの詡王とが、バスに揺られて最後の目的地へと向かっていた。


「ついにここまで来たわね、詡王ちゃん」


「うん…長い様で短かった旅も、もう終わりなのね」


 ショクシュ子は詡王の協力により、この4ヶ月で中国象形拳組合ピンクの象に名を連ねる、名だたる猛者達を撃破。


 そして今回、最後の猛者との対戦に挑むのであった。


「私ね、詡王ちゃんと出会わなかったら、ここまで結果を出せなかったと思うの。邪魔が入らずに対戦するまでの手際もそうだけど、傷付いても詡王ちゃんが居るって分かってたから、本当に心強かったの!」


「な、何を言ってるのよショクシュ子ちゃん、今さら水くさい!だってほら、私達…と、と、と、と、と……友達じゃない⁉︎」


 顔を真っ赤にしながら照れる詡王に、ショクシュ子も笑顔で応えた。



「ねぇ詡王ちゃん…私ね、子供の頃から両親と共に、道場破りの武者修行で日本中を旅してたの。だからさ、学校も転々として友達なんか出来なかったし、詡王ちゃんが初めての友達なの!」


「わ、私もショクシュ子ちゃんが初めての友達だよ!中学に入ってすぐに不登校の引きこもりになったから、友達なんか出来なかったし…」


幼くても強かったが故に、いつも組手で年上との相手をして来たショクシュ子は、同世代との交流が著しく少なかった。


 詡王もまた、引きこもりで不登校児だった故に、同世代との交流と呼べるものが無かったのだ。


 お互いに初めての友達。

 それを満喫するが如く、二人は苦楽を共にしながら旅を続けたのであった。



「でもね、詡王ちゃん。今にして思うとアレはやり過ぎだったかも知れないよね?」


「アレ?」


「うん。邪魔が入らない様に闘う為とはいえ、バナナの叩き売りのオッさんに扮したりとか、流離(さすら)いのギャンブラーに扮したりとか、やり過ぎだったかなぁってね」


「アハハ…でも、お陰で邪魔されずに闘えたから結果オーライでしょ?」


「まあ、そうだけどさ…でも、宇宙人のコスプレして闘いに挑むとか、中国まで来てこんな格好をさせられるとは、夢にも思わなかったからね」


 この4ヶ月の死闘の旅を振り返る二人。


 闘いに明け暮れた思い出もさることながら、邪魔が入らずに変装して(おび)き出す詡王の作戦には、毎回苦笑いするショクシュ子であった。



「ところでショクシュ子ちゃん、今まで闘った中で一番強かった人って誰だった?」


「強かったの?う〜ん…やっぱり蟷螂拳の華ちゃんかな?天才格闘少女の名は伊達では無かったし。でも、強さだけじゃ無くて誰もが個性的な闘い方だったから、みんな印象には残ってるよ。学ぶべきことも沢山あったからね」





 ショクシュ子は今まで繰り広げてきた、死闘の数々を思い起こした。



 蟷螂拳の華を撃破した後、ショクシュ子達が向かったのは蛇毒拳の使い手、(ジャ) 韋湖(イコ)の元だった。


 蛇毒拳は自らの手を毒に染め、触れるもの全てが毒に侵される、毒手と呼ばれる手法を用いる格闘技であった。


 しかし、毒手を作り上げるまでの過酷な鍛錬に多くの者が挫折。

 門下生の数は増えるどころか年々減る一方であった。


 そんな蛇毒拳はピンクの象に加盟している流派であるが為に、門下生が減る事による弊害にいつも悩まされていた。


 ピンクの象の理事や副理事は門下生の多い蟷螂拳や白鶴拳の関係者。

 門下生の減る一方の蛇毒拳は役職にもつけず、理事会での発言力など皆無に等しかった。



 そんな現状を打破する為に取られた対策が、毒手の毒を薬に変更する改革案であった。


 毒では無いが、敵の動きを鈍らさせる薬。これを使えば敵を翻弄し、かつ毒手を作り上げるまでに挫折する門下生の数を、減らすことが可能だと考えたのだ。


 あまりにも都合が良過ぎる薬ではあるが、門下生を増やす為には仕方が無い事だと、割り切った。


 そして蛇毒拳の幹部達が必死になって厳選した薬こそが…媚薬だった。



 媚薬を手に馴染ませる。


 毒手ならぬ媚薬手。


 これが現在の蛇毒拳の使い手達の右手であった。



 この素晴らしい改革案によって門下生の数は激増。

 34の流派の中で下から4番目の門下生の数であったが、今では上から9番目の門下生の数と、20年で大躍進を見せるのであった。



 そんな勢いのある蛇毒拳の使い手で、最も恐れられているのが(ジャ) 韋湖(イコ)である。


 致死量とも思える高濃度の媚薬を手に馴染ませ、両腕を完全に蛇化する体術は誰もが畏怖する使い手であった。


 誰もが恐れおののき、近付く事すら忌避する韋湖と対峙したのが、インドの蛇使いの格好をしたショクシュ子である。


 意気揚々と「レッドスネークカモ〜ン」と言ってスベり倒したのは、ご愛嬌。




 こうして始まった対決だったが、二人の闘いは始まると同時に呆気なく決した。


 韋湖が奥義蛇媚閃(ジャビセン)により媚薬手でショクシュ子を攻撃すると、ショクシュ子の触手が本人の意思を無視して暴走。


 勿論、暴走の向かう先に居るのは、呆気に取られている韋湖の姿が。



 まさか媚薬を投入することによって、触手が暴走するなど想像だにしていなかった韋湖は、そのままショクシュ子の触手に呑み込まれて、体液を勢い良く放出。


 しかも韋湖は藻掻きながら暴れた為、媚薬手で更に触手を傷付けるなどして、状況は更に悪化。


 そんな事が幾度となく繰り返されるウチに、数時間が経過してやっと触手の暴走が収まった。


 触手の暴走によって疲労困憊のショクシュ子。

 その前には体液を出し尽くした、哀れな姿の韋湖が横たわっているのであった。






 蛇毒拳を撃破した後に向かったのは、鷹爪拳の使い手である(タカ) 香冬(カトウ)


 鷹爪拳は相手の経絡秘孔を鋭い爪で突くと、その動きを封じる効果があるのが特徴。


 獲物を取り押さえる猛禽類の如く捕まったが最後、身動き一つ取れずに敗北を喫するのである。



 そんな猛禽類を思わせる香冬の前に対峙したのが、鷹匠の格好をしたショクシュ子。


 本物の鷹を用意する予定だったが間に合わず、代わりに鷹のヌイグルミで代用を試みたが、それも用意するのが間に合わず…。


 仕方ないのでペンギンのヌイグルミを腕に乗せた鷹匠ことショクシュ子は、香冬からの白眼視に気付かない振りをして、死闘を開始するのであった。




 闘いは香冬の猛攻から始まった。


 それを凌ぎ切れずに、ショクシュ子の右腕が動かなくなる。

 鷹爪拳による経絡秘孔への攻撃が、ショクシュ子の右腕を完全に封じ込めたのだ。


 しかし、ショクシュ子は右腕が動かなくなっても、慌てること無く対処。


 動く左腕を触手化させると、右腕の快楽秘孔を刺激。

 すると動かなくなった右腕が瞬く間に復活。


 触手拳は鷹爪拳による経絡秘孔への攻撃を、完全に相殺する術を有していたのだ。



 経絡秘孔への攻撃が無効となるならばと、香冬は逆に快楽秘孔への攻撃へと切り換えた。


 快楽秘孔への攻撃を重ねて感度を過剰に高めると、常人であれば一撃で悶死する程の感度となるのだ。



 香冬の奥義黄金鷹(ゴールドフィンガー)による快楽秘孔への猛攻が始まった。

 ショクシュ子も負けじと、快楽秘孔への攻撃で反撃に打って出る。


 お互いに防御を無視した快楽秘孔への猛攻。

 鬩ぎ合う二人であったが、先に屈したのは香冬の方であった。



 ショクシュ子は蛇毒拳の韋湖による媚薬手での攻撃により、過剰なまでの快楽に対する抵抗力を身につけていた。


 快楽に対する抵抗力と、女の子が欲してやまない触手での快楽秘孔に対しての攻撃。

 この二つが、香冬との接戦を制する事になったのだ。




 感度が異常なまでに高まった香冬の急所を、ショクシュ子の触手が一撫で。


 体液を勢い良く放出する香冬が、痙攣しながらショクシュ子の前に跪くのであった。



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