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第21話 日本人の中の日本人



 最後の三大天才格闘少女である(オガミ) (ハナ)との対戦の為に、ショクシュ子は詡王との入念なる打ち合わせを済ませていた。



 華は日本人とのハーフが故に、中国人の集う道場では嫌われ者であった。


 嫌われ者でありながらも最強の蟷螂拳の使い手。実力のみで最強の座に居座り続けるのは、その場に到達する事よりも更に難儀な事である。


 蟷螂拳を学び始めてからおよそ八年。最強無敗の天才格闘少女として君臨し続けるのは天賦の才と努力、そして狂気にも似た格闘技に対する姿勢であろう。



 愛を知らずに孤高の格闘家として成長した華。そこに後悔は無かった。


 最強とはたった一人に与えられる称号であるのだから、孤独の中に生きる華にとっては寧ろ自分の居るべき場所だと認識していた。


 孤独だからこそ、最強の座に居座る。


 最強の座に居座るから、引きずり落とそうと挑まれる。


 挑まれるから、斬り伏せる。


 狂気を纏って、斬り伏せる。


 情け容赦無く、斬り伏せる。


 触れる物、全てを斬り伏せる。


 何人たりとも、この座は明け渡さない。


 何故ならここは、自分以外が立ち入ることの許されない、最強という名の聖域なのだから。


 自分以外は全て排除の対象。それが華の認識。


 この狂気の思想こそが、華を最強の座に留める原動力なのであった。








 華との対戦は容易に実現可能であった。天涯孤独で仲間など居ない華のプライベートとは、常にボッチ。タイマンを張るのに、何の支障も無いからだ。


 しかし、仲間は居なくても華を付け狙う者は星の数ほど存在した。


 華の寝首をかこうとする者は後を絶たず、毎日の様に闇討ちをする者が現れるのだ。



 ショクシュ子も闘いに挑みたいところではあったが、付け狙う連中に邪魔される可能性が高い。


 華と対戦して両者が傷付いたところを、複数の刺客が襲いかかって来ることだってあり得るのだ。


 どちらが勝つにせよ負けるにせよ、闘いの場に部外者が居るのは望ましくない。


 華が負ければ恨みを持つ者がここぞとばかりに復讐するであろうから、死闘を繰り広げるのであれば、部外者を完全に引き離さなくてはならないのだ。



 その為に必要なのが華の協力。


 ショクシュ子は華に手紙を送り付けた。それは拙い中国語での決闘状。

 部外者に邪魔されたく無いので、尾行する者が居たら撒いて一人で出向いてくれとの内容。


 しかし、華は学校に行くことも無く、格闘技のみに明け暮れる毎日であった。難しい言葉は殆ど読めなかったのだ。


 それをリサーチしていたマネージャー詡王は、あえて難しい中国語でショクシュ子に決闘状を書かせる。

 読み取れない言葉が多い手紙。華は手紙を見て顔を顰めるが、その手紙の二枚目を見ると更に顔を顰めた。


 難しい中国語の一枚目とは逆に、二枚目の手紙には言葉が一切書かれておらず、下手くそな絵による説明がなされていた。『尾行を撒いて、一人で、ここに来い』と、それだけが分かる様に描かれていた。



 つまり、どうせ字が読めないだろ?だから絵で説明してやったぜと、頭の悪さを挑発しての決闘状を送りつけたのだ。


 手紙の真意を理解した華は、みるみる怒りを露わにした。

 相手の挑発通りに文字が読めなかったのだから、腹が立つのも仕方がない。


 しかし、問題は手紙に同封されていた三枚目。それは写真であり、華の怒りの頂点を爆発させる為の物であった。



 写真に写って居たのは7:3分の頭に眼鏡と出っ歯。首からカメラを下げて、着ているTシャツには寿司、天麩羅、芸者、FUJIYAMAと書かれている。


 日本人であるショクシュ子が、誰にでも分かる日本人に変装して、自らを写真に納めたのだ。

 日本人でありながら日本人に扮する。

 何ともおかしな話ではあるが、華を挑発する事は大成功であった。





 翌日、華は自分にいつも纏わり付いている尾行を撒いて、誰にも邪魔されない様ショクシュ子との決闘を実現させる。



 三大天才格闘少女との最後の闘いの火蓋が、ついに切って落とされるのであった!



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