僕じゃダメなの?
私はまったくそんなつもりはなかったのですが、友達に見せたらこれはBLだといわれました。
苦手な方はご遠慮ください。
僕じゃ、ダメなの?
僕の両親は早くに他界した。
でも、寂しくなんかなかった。
だって、僕には兄さんがいたから。
世界でたった一人の僕の肉親。
僕が世界でたった一人無条件で信頼できる人。
あなたの側にいるのは僕じゃ、ダメなの?
「誠、彼女は新郷美菜実さん。俺、彼女と付き合ってるんだ」
兄さんはある日、彼女って言う人を連れてきた。
黒いロングヘヤーにウェーブが掛かった髪が印象的な美人さんだった。
「そっか、おめでとう、兄さん。僕はてっきり兄さんは一生一人身なのかと思ってたよ」
「失礼な奴だな~」
彼女は確かに綺麗だったけど、僕の兄さんを取るなんて……
気に入らないな。
「誠くん?」
彼女は目を大きく見開いて僕を見ていた。
「うん、その顔だよ。僕の兄さんを取るならそれくらいの綺麗な顔をしてくれないとね」
僕は微笑んで頷いた。
でも、彼女は僕に何も言うことは出来なかった。
「誠……美菜実が―――」
「そっか、残念だったね。大丈夫、兄さんはカッコいいんだから、すぐに新しい人が見つかるよ」
僕がいるよ。
誰が兄さんの下から去ったって、僕はずっと兄さんと一緒にいるよ。
それからも、兄さんは半年に一回くらいのペースで新しい彼女を連れてきた。
でも、その彼女は一ヶ月もしないうちに兄さんの元から離れて逝く。
誰もが、首から血を流して殺されるのだ。
「どうして……どうして俺ばっかり」
「大丈夫だよ、兄さん。僕がいるから、ね? 兄さんは一人じゃないよ」
僕は兄さんに気付かれないようにして笑った。
これで、兄さんは僕の物。
「誠、彼女は友波薫さん、俺の彼女なんだ」
兄さんはまた懲りずに彼女を連れてきた。
もちろん、彼女は僕の手に掛かってしまったけど―――
「誠、お前何を……」
彼女を始末した後、すぐに兄さんが現れた。
あの女、死ぬ間際に短縮1で兄さんの携帯に電話をかけたのだ。
「嗚呼、兄さん。見てしまったんだね」
「だから、お前はなにをしているんだ!」
「何って、兄さんに言い寄る邪魔な虫どもを退治してるんじゃないか。見て分からないの?」
兄さんは絶句して立っていた。
僕がスッと近寄ると兄さんは肩をすくめた。
「大丈夫、兄さんを殺したりしないよ。ただ……少し眠ってもらうだけ」
兄さんの首の後ろを鉈で叩くと、すんなりと眠ってくれる。
「兄さん、これからはずっと、一緒だね」
誰もいない2人だけの家で
僕と兄さんは
一生2人だけで
ずっとお互いだけで
「兄さんには僕だけいれば―――」
痛かった。
何かが刺さったような痛みだった。
「誠……俺はただ、お前に新しい家族を作ってあげたかったんだ。でも、それが間違いだったんだな。だから、一緒に逝こう。彼女達が、きっと待っている。地獄にでも天国にでも一緒に―――」
僕が最期に聞いたのは、兄さんがそう言う声と、ぐさっと何かが刺さる音
僕と兄さんは微笑みながら
永遠と言う闇へ落ちて逝った。
不快にならない程度に読んでいただけたら本望です。