Story〜1
ある街に1軒の小さなCafeがありました。
『Cafeサージ』と言う名のその店は、目の前に海が広がり、テラス席からの眺めは絶景でした。
お店は1日3時間だけ。
マビアという女性が1人でやっており、メニューはコーヒーと紅茶をそれぞれ数種類とケーキを用意していました。
そんな小さなカフェでしたが口コミで拡がり、オープンから3年で全国からお客が集まるほどの、人気店となりました。
夏の始まりを知らせる7月の初め…。
いつものように気持ちよく目覚めたマビアは、ポットを火にかけると部屋の窓を開けて深呼吸しました。
朝食を準備してバルコニーへ出ると、海を眺め波音を聴きながらコーヒーを飲みました。
マビアの自宅は店の2階にあり中でもバルコニーはマビアのお気に入りの場所でした。
「今日は、いつものシフォンとフルーツタルトと…そうだ!オーシャが来るからアップルパイも焼こうかな」
食事が終わるとエプロンを付けてベレー帽をかぶり、お店の準備が始まります。
まずはケーキを作ってショーケースに並べます。この店は紅茶のシフォンが人気で常に用意されており、日替わりでもう2~3種ケーキやプリン、ゼリーなど様々なスイーツが用意されています。
ケーキの準備をしていると、パン屋のコトハさんがやって来ました。
「マビアさんおはよう!」
「コトハさんおはよう!いつもありがとう」
「今日は新作のパンを作ってみたから、
試食してみてもらえないかな…と思って」
「もちろん!おっ…これはコーヒーにも紅茶にも
合いそうね。ウチの店にも是非入れてほしいな」
「ホントに…嬉しい!それじゃあ次回持って来るね」
「やったー!コトハさんのパンは本当に人気なのよ。
お願いします」
「ハーイ。それと今度ね…ライブの件でも相談に
乗ってほしいなと思って」
「OK!そちらは、もう1人プロがいるから
連絡しておくね」
「プロがいるの?」
「そう。ステージのプロがいるの。今度、
コトハさんにも紹介するね」
「是非。それじゃあ、また今度…毎度!
ありがとうございましたー」
「ハーイ。ありがとう。また」
コトハさんが帰った後…店の電話が鳴りました。
「ハイ、Cafeサージです。あっ…今、電話しようと
思っていたのよ、元気?」
電話の相手は、ライブハウスでプロデュースもしてくれている友人のアーチからでした。
「Hi、マビア!元気だよ。そろそろ帰ろうと
思って連絡したの…以心伝心ね。連絡しようと
してたのって…ライブの依頼入ったの?」
「そうなのよ。今ね…1件依頼が入ったから、
いつ戻れるのか連絡しようとしてたの。
グッドタイミングだね。アーチがこっちに
戻って来たら、また話すね。会えるの楽しみに
してるね」
「OK!じゃあ…来週中には戻るね。Ciao!」
Cafeサージの隣には、マビアがもう1つオーナーを兼任している『Sea side サージ』というライブハウスがありました。ここでは年に数回プロ・アマ問わずライブが開催されアーチはライブステージのプロデュースも行っています。アーチは世界中を旅する事が好きなので、仕事の依頼が入った時だけ連絡すると戻って来てくれます。
開店1時間前になりました。
「Hi、マビー!スグに手伝うね」
「Hi、オーシャ!いつもありがとう。今日もよろしくね」
お客様も多い夏の間は、近くに住んでいる友人のオーシャもスタッフとして手伝いに来てくれます。
「あっ…この香り!私の好きなアップルパイ!私の分も取っておいて」
「もちろんよ。帰りに渡すわね」
オーシャは元々完全予約制のエステサロンを経営しており、同時にラッキーカラーに合わせてアロマを勧める事が出来るという、とても人気の占い師でした。このカフェでも占いは人気でオススメのアロマも好評でした。
そして閉店時間にはスイーツも完売となりました。
「オーシャ、後は私がやるわ。今日も本当にありがとう。いつものルイボスティーも入れておいたから、休んでから帰ってね」
「いつもありがとう、マビー。アップルパイも
包んでおいてくれて嬉しい!ごちそう様」
「占いもどんどん人気が出てきて私も嬉しいよ。
明日もよろしくね」
「ホントよね…私も人気が出てきてくれたのは嬉しい。
それに…Cafe楽しいしね!それじゃあ、また明日…」
そして数日後…。
アーチが帰ってきました。
次に続く…