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9:絶望の光景
「晴秋!」
オレは躊躇せず晴秋の家を合鍵で開ける。
しかし、晴秋の部屋から気配はしない。
「晴…」
オレはその光景を一生忘れないだろう。
雨でぐしゃぐしゃになった花壇の前で立ち尽くす晴秋。頭から足まで雨に打たれてずぶ濡れになったまま、裸足で庭に立っていた。
「晴秋…!」
オレは土足のまま台所を横切って庭へ出る。
「…どうしよう…」
顔を上げた晴秋の顔は雨とも涙とも言えないものでびしょびしょになっていた。
「…コスモス、流された…」
晴秋の前には倒れて根から折れたコスモスが、剥き出しのまま、水たまりとなった花壇に浮かんでいた。