22:その先へ
夏生は俺に対して感情をストレートに伝えてくる。
今だってそうだ。
好きだ、と言いながら俺の手を握る。
それまで蓋をされていた感情が溢れ出すように。
俺もそうだよ。
本当は、今日自分の家の花壇に植えたコスモスが咲いてるかどうかなんて、どうでもいいんだ。
お前と一緒に、あの花壇の前で過ごした日々。
夏生は俺の家の鍵を開けると、どこかぎこちない手つきで玄関のドアを開けた。
「……」
二人、少しの沈黙。
「……咲いてる」
その声はどちらともつかない。
「ちゃんと、咲いたよ!」
夏生は俺に飛びついてくる。
二人で庭の花壇の前にしゃがみ込む。
そこには背丈の低い、たった一輪花をつけたコスモスがあった。
「よかった…」
夏生は隣で泣き始める。
俺は震える手でその花をそっと撫でる。
確かに感じるその生命力。
「…ありがとう」
俺は花壇と夏生に言う。
「……夏生」
俺はそっと呼びかける。
夏生は顔を上げた。
夏生の瞳を見て、そっと口付ける。
俺に大切なものを、たくさん与えてくれたコスモスという儚い植物。
その花は毎年いろいろな色で花をつける。俺の…俺たちが歩む先を示すように。
来年も、再来年も、ずっとその先も。
「ありがとう」
俺はもう一度、夏生に微笑みかける。
「俺はもう、独りじゃないよ」
隣に夏生がいるから。
そんな、小さな春から秋の話。
END
ここまで読んでいただきありがとうございました。晴秋と夏生の旅はいかがでしたでしょうか?
もしよろしければ、ご感想等いただければと思います。重ね重ねとなりますが、貴重なお時間の中、読んでいただきありがとうございました。




