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20/22

20:秋

 季節は八月後半。もう少しで夏休みも終わりを告げる。

 あれからというもの、何かにつけて夏生は俺の家に居座る事が多くなった。

 …そしてベタベタとくっついてくる。

 自分の部屋のローテーブルで課題をやっている俺に絡んできた。

「…だから、暑苦しいって」

「えーいいじゃん」

 俺の背中にくっついて頭をぐりぐりと押し付ける。

「痛いって」

 それでも夏生は俺を後ろから抱きしめる。

「お前、成人しても絶対酒飲むなよ」

「なんで?」

「酔って絡んでくるおっさんまっしぐらだからだよ」

「誰それ絡むわけじゃないよ」

 その小さな言葉や行動が、俺にたくさんの感情を与えてくれる。

 …愛おしい。

 そんなこと直接言えないけれど。


 俺と夏生が植えたコスモスは、意外と早く育っていった。夏生が必死に探し回ってくれただけある。

 背丈が出る前に開花するものらしく、摘心しなくても良さそうだ。


「お前、ずっと俺んちいるけど、課題ちゃんとやってんのか?」

「んーあんまりやってない」

「踏み倒すと卒業できないぞ」

 それを聞いて、夏生はやっと背中から離れた。

「それは困る」

 急に真剣な声を出して俺の顔を覗き込む。

「ずっと一緒にいたいから」

 そのストレートな表現に俺は面食らった。

「照れた?」

「ないない。さっさと課題こなせよ」

 俺は手を振ると夏生を追いやる。

「じゃあちょっと家から課題取ってくる」

「自分の家でやれ」

「嫌だ!」

「お前さっきからしつこいぞ」

「だって…ほら…せっかく…」

 夏生の声はなぜかどんどん小さくなっていく。

「両思いになったのに…」

 そこまで言って、夏生は自分の手で顔を覆った。

「恥ずかしくて言えない!」

 俺が何か言う前に、夏生はすごい勢いで俺の部屋を出ていった。

「…ったくなんなんだ…」

 あんなに暑苦しかったのに、急にクーラーの風を冷たく感じた。

 俺はクーラーを一旦止める。


 それから俺たちは、何となく距離が近づいたような、そうでないような、くすぐったい時期を過ごしていた。


 夏休みが終わり、秋が始まる。

 授業中、俺が何となく夏生の背中を見ていると、気づいたのか、目を合わせると笑顔を向ける。


 あいつ、わざとやってるな…。

 

 自然と、学校で一緒にいることも多くなった。

 どういう風の吹き回しか、夏生は毎日俺の弁当を作ってくれる。

 屋上で二人、爽やかな中にも少しだけ寒さを感じる風に吹かれながら、弁当を開ける。


 俺は絶句した。


 弁当箱を開けるのを、教室でやらなくてよかった…。


 蓋を開けるとそこにはギッチリと詰まったオムライスにハートマークが書いてあった。


 勘弁してくれ…。


 俺は一度蓋をしめた。


 夏生は涼しい顔で自分の弁当箱を開ける。そこには普通のオムライスが入っていた。

 …悪ノリのように思うが、こいつなりの感情表現なんだろう。


 俺の庭のコスモスはというと…。


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