12:手のひら
「大丈夫だから」
夏生のその声を聞いて、安堵した。
額に乗せられた手のひらから、優しい体温を感じる。
ああ、ずっとその温もりを感じていたい。お前は俺にとって光だよ。
過去に縛られる俺を、夏生は前に進めるように道を作ってくれる。
俺がたとえ過去に固執する生き方を選んでも、夏生は最後までその手を伸ばし続けてくれるだろう。
その手を握りたい。でも、同時に怖くもある。
もし、その手が離れた時、俺はまた失ってしまう。
大切な人を。
大切な…。
泥のような怠さの中、いつも笑顔で俺の名前を呼んでくれる夏生が脳裏をよぎる。
夏生は常に強く俺を牽引してくれる。なんで今まで気づかなかったんだろう。こんなにも側にいてくれたのに。
そこにどんな想いがあるのか、俺はやっと気付いた。
単なる幼馴染じゃなくて、もっと心深いところにある感情。
そして、それは多分、俺も同じだ。
夏生にそれを伝えたい。あいつが伸ばした手を、ちゃんと掴みたい。
「…ありがとう…」
実際の声になったかのように、俺は呟く。
それが夏生の心に届いたかはわからない。
伝わればいいと、心の底から祈った。




