表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

10:一生忘れない

「俺の、父さんと母さんが…」

 俺の声は震えていた。雨でずぶ濡れになったせいで、体は冷え切っていた。

 そのせいなのか、俺の体は小刻みに震えている。

 違う。

 俺は恐怖と絶望で震えていたんだ。

 庭に出てきた夏生は一瞬驚いたあと、俺に駆け寄って名前を呼ぶ。

 どこか遠くで聞こえるその声。

 俺はぐちゃぐちゃになった花壇のように、力を失って膝をつく。

 着たままになっていた制服が泥に沈んだ。

「晴秋!」

 もう一度、夏生は力強い声で俺の名前を呼んだ。

 俺に覆い被さるように抱きしめてくる。

 冷え切った俺の体はその体温に縋りついた。

 命を落とした両親を見たあの時の光景が鮮やかに蘇る。あまりにもそれが生々しくて、喉の奥から苦いものが込み上げてくる。俺は花壇の前で咳と共に吐き出した。

 

 俺はまた、父さんと母さんを失った。


「晴秋、大丈夫、大丈夫だから……」

 背中をさする夏生の手は温かい。


 俺は声をあげて泣いていた。

 苦しくて、呼吸ができなくなる。吸っても吸っても、息ができなくなる。


「…落ち着いて、大丈夫だから。ちゃんと、ゆっくり息吸って、吐いて」

 目の前が真っ白になったまま、俺は聞こえてくる夏生の声を頼りに呼吸する。


「そう、落ち着いて…」

 その声を遠くに感じながら、俺の意識は途切れていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ