超短編集
「お前が、僕を殺してくれるのか?」
俺は、その時見たあいつの顔を一生忘れないと思った。
諦めたような、苛立ったような、それでいてどこかすがっているような声と表情。
俺は、何も返せなかった。返せる言葉なんて持ち合わせていなかったんだ。
あいつはふと目を伏せて、笑う。
「……なんてね。嘘。冗談、冗談」
「……冗談に聞こえねぇよ」
俺もふざけて返す。
今は、そうするしかなかった。
そん時は……重たくて、気力なんてなかったんだ。
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「僕さぁ、ときどき思うんだよね。どうして、逆じゃなかったのかなーって。ねぇ、君はどう思う?」
返事が返るわけのない、ぬいぐるみに向かって問いかける。
「どうして、人は長生きしてしまうんだろう。こんなに、つまらないのにさ」
「早く、終わりが来てくれないかなぁ」
――
いつだって、僕が求めてるのは”終わり”だった。
始まったことを呪ってたわけじゃない。それなりに感謝もしてる。
でも、僕にとって過ぎてゆく時間はただただ長過ぎたんだ。