なんですとぉぉぉ
「貯金がたくさん有るわけじゃないし、管理費やら水道光熱費も必要だから、それに何か特技があるわけでもないから、収入を得る手段として配信活動はしていたよ。協力してくれる人もいたから、今はお金にあまり困らない位には資金に余裕があるんだ。ただ、以前はミレイっていう神殿神子さんがいたから、華があったんだけど、彼女が世界を見てくるって出ていったから、最近では、魔物とかのバトルとか、風景とかの映像が主体になって、視聴者からは色気が足りないってよく言われてるんだ。」
「ミレイ?もしかしてだけど… 」
「「アストレア!」」
「すみません。私、大ファンです。あれを見て、配信始めました。」
彩芽は、瑠夏の両手を取るとブンブン振り回した。
「もしよろしかったらですが、動画編集をしている部屋を見せてもらっても良いですか?」
ミレイが主だった部屋に入ると、彩芽はそこに揃えられた動画撮影機器の豊富さと、準備されているPCのスペックの高さに驚いていた。
「私も配信に参加させてもらってもよろしいですか?」
彩芽の提案に一も二もなく賛同した瑠夏は、昨日の彼女の救出の時にゴーフルで撮影していた映像をアップしても良いかを尋ね、彩芽から許可を得ると、さっそくデータにまとめて動画編集者の中丸さんと音楽担当の御影さんへと送付した。
一息ついて、彩芽の家族の話が話題になった。瑠夏と異なり、彩芽には家族がおり、その仲もすこぶる順調であることから絶対に知らせた方が良いということになった。
「この時間だったら、家族の人は誰か起きてる?」
もう日が昇り、時間は七時を回っていた。
「うん、いつもだったら朝ご飯を食べてる時間だと思う。でも、信じてもらえなかったどうしよう?あんたなんか知らないって言われたらどうしよう?」
不安でポロポロと涙を零す彩芽を見て、
「大丈夫、きっと信じてくれるよ。心配なんだったら、僕が電話をかけるよ。番号を教えてくれる?」
と言う瑠夏に、うんと頷いた彩芽は自宅の電話番号を伝えた。
「スピーカにするから、参入できるようになったらしてね。」
教えてくれた電話番号をタッチしていくと、暫くして呼び出し音がなり、誰かが電話に出てくれた。
「ハイ、立花ですが。」
その声だけで、彩芽の目からは涙がポロポロと零れ落ちた。
「お母さん(小声)」
「もしもし、立花さんのお宅ですか?朝早くに申し訳ありません。私は瀧川瑠夏と申します。亡くなられたお嬢様のことで伝えたいことがあって電話したのですが、よろしいでしょうか?」
「はぁっ、またですか!最近なかったから安心してたのに!いい加減にしてください!迷惑なんです!」
突然、怒り出した母親の豹変ぶりに、出ていた涙がピタっと収まり、彩芽が慌てて電話に参加した。
「ママ!どうしたの!いったい何があったの?」
「はぁ?いったい何のつもりですか?私には亡くなった彩芽とその妹の詩音の二人しか子供いませんけど、いったいあなたは誰ですか?『そうだよ!もしあんたがお姉ちゃんだって言うなら証拠を見せてよ、証拠を』」
横から入ってきた若い声が、かなりのイラつきを見せながら加わってきた。
「そうだよ。子供の死んだ家に娘のフリして電話をしてくるなんて、あなたはまともな死に方しないよ。」
更に低音の落ちついた声の人が話に加わってきた。その言葉に彩芽はカチンときたようだった。
「仏さんの横にかけてある私の絵を入れた額縁の裏にあるお父さんのヘソクリ、詩音の机の横のチェストの鍵付きの引き出しの裏に隠してある36点の算数のテスト、まだ足りない?じゃあ、それと… 」
「「や、やめてください。」」
「あなた達そんなことしてたの?」
呆れるような母親の言葉に、彩芽の口角がクイッと上がった。
「食器棚の箸とかフォークとか入れてある引き出しの底に貼り付けてある封筒に入れた通帳… 」
「すみません。私が悪うございました。『本当にお姉ちゃんなの?なんで私の秘密を知ってるのよ』」
「それはあなたのお姉ちゃんだからよ。」
「そうよ。何で知ってるのよ!『そうだぞ、誰にも見られてなかったぞ』」
「それは私だからだよ。色々とお手伝いしたり、部屋の片付けしたり、お掃除頑張ってたのを舐めるなよ。」




