ヤグ里
投稿初心者です。三人で相談しながら書いてますので、ごった煮状態かもしれませんが、生温かい目で見守って頂けると嬉しいです。
更新は、土曜日にまとめて十話前後を投稿させていただく予定ですが、他に良い方法が見つかりましたら、また報告させて頂きます。
よろしくお願い致します。
「お父様、お父様が行かねばならぬ理由は、私ですか?私の為なのですか?」
旅支度を終えたセキシュウの前に、生後半年程のマサシゲを抱えたトエが泣きながら立っていた。
そのトエの不安そうな顔に、思わずそうじゃないと言いたくなったセキシュウだったが、今後のウンエノ国の中でのヤグ村の立ち位置を盤石にする為には、これは必要なことなのだと既に何度も繰り返し説明をしていた。それでも彼女は納得していなかった。
孫の中に流れるアルソルトの血は、それ程までに厄介な存在だということは、トエにも十分理解できていることは判っていたが、それ以上に考慮せねばならぬこともあった。孫のマサシゲには通常の人と異なり魔臓を所有し、水魔法と雷魔法に適性を持っている。
ウンエノの民には古来より、先祖返りと言われる魔臓を持つ者が時折り出現しており、その者は救国の英雄と大切に扱われることが慣習となっていた。
マサシゲについても生後一年の時に行われる洗礼の儀において、そのことを明らかにする予定であったが、今の状況がそれを許すはずもなく、その為にも何らかの功を成す必要があった。
インガ村の諜報力を鑑みれば、マサシゲの情報は明らかに漏れていると思われ、それを族長のハントリに利用されただろうことを、セキシュウは十分に把握していたが、娘と孫の為には、それでもその役目を果たさねばならぬことをそれ以上に理解していた。
成功させねば、孫と娘の命が権力争いに巻き込まれてしまう可能性が高い。そう思い玄関で悩み続けるセキシュウは、長男ムネノリのマサシゲに向ける目に気付いた。
このままマサシゲが順調に育てば、ヤグ村の家督を奪われる可能性が高いことに納得できていない。そんな目をしていた。
このままここに残していっても、娘と孫の命の保証はないと思い直したセキシュウは、トエにこんな提案をした。
「それならば、いっそのこと儂と一緒にドラマドルへ行くか?それならば不安も少しはましになるだろう?」
「えっ!構わないのですか!行きます。私も行きます。」
「うむ。今の赤子の年では母親は絶対不可欠な存在であるから、マサシゲも一緒に連れていけば良い。ただし馬での急ぎ旅になるから、それなりの支度は必要になるが時間はあまりない。道中で足りないものは揃えることにして、まずは旅支度だけ急げ。」
そう言われたトエは、急いで部屋へと駆け戻った。
「父上!そんな勝手なことをして良いのですか!父上はウンエノ国を背負った使者なのですよ。女連れしかも赤子持ちなど以ての外ではないのですか!」
ムネノリは怒りに満ちた目で、セキシュウを睨みつけたが、彼は平然とこう答えた。
「マサシゲは、あのアルソルトの子だ。その子を連れているならば、皇帝の前までは通されるだろう。さすればこの独立宣言も確実に手渡すことができる。門番に刺されて終わりということにもならないはずだ。」
あまりの正論にムネノリは、言葉を飲み込んでしまい、それ以上言葉を続けることはできなかった。
暫くして旅支度を終えて、マサシゲを背負ったトエが出てくると、三人はそのまま馬に乗り屋敷を後にした。
「クソ親父の奴め。ハントリの狸ジジイにマサシゲとトエを連れてくるように言われていたが、どう言い訳すればいいんだ。」
残されたムネノリが、誰にも聞こえないほどの小さな声でそう呟きながら、二頭の馬を見送っていた。
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