エシュタル3
投稿初心者です。三人で相談しながら書いてますので、ごった煮状態かもしれませんが、生温かい目で見守って頂けると嬉しいです。
更新は、土曜日にまとめて十話前後を投稿させていただく予定ですが、他に良い方法が見つかりましたら、また報告させて頂きます。
よろしくお願い致します。
「キャァァァァァ」
扉の中から、先程から続いている子供の悲鳴にヌクシアは両耳を押さえて、身体を抱え込むように蹲り、いったい何人目だったのかも判らない悲鳴の連続に彼女の心はポッキリと折れていた。
傍らに置かれた籠の中の赤子は、その声に動じることもなく、両目を大きく開けて、ただ虚空を睨むように見つめていた。
「はい、次の方。あれれ、もう赤子しか残っていないのですか?ドワーフの魔臓も大したものではないのですね。」
扉から出てきた白衣のハーフリングが、ヌクシアの傍らに置かれた籠を手にして中に入っていこうとするのを、彼女は慌てて抱きしめるように奪い返そうとした。
「困った人ですね。ここに付いて来た以上覚悟の上でしょうに。衛兵!」
言われた二人の衛兵は、暴れていた子供達を束縛の魔法で捕縛したように、ヌクシアを捕らえ籠から引き剥がした。
「その女はもう用済みですから、 この子が終わったら好きにして良いですよ。念を押しますよ。この子が終わったらですよ。」
一人の衛兵が、彼女を引き剥がすふりをしながら、その身体を弄んでいるのを見て、年配の衛兵が呆れたように声をかけた。
「おい、終わってからだと言われただろ。もしも成功したらどうすんだ。」
「へん、どうせ失敗するさ。これまで何人のドワーフやエルフが命を落としてるか、お前も知ってるだろ。あいつらは気狂いだよ。失敗しても、その命を屁とも思ってない。」
その言葉を聞いたヌクシアからは、抵抗する気概も消え失せ、全身から力が抜けた。
「じゃあさ、あの気狂いの指示を守らなくて殺された衛兵の数も覚えてるだろ。」
その年配の衛兵の言葉に、その若い衛兵は渋々と彼女から身体を離し、警備へと戻っていき、その場には床に崩れ落ちて泣きじゃくるヌクシアだけが残された。
ーーーー
「赤子をベットに拘束、する必要もないですね。」
そう言いながら、そのキュシュアと呼ばれるハーフリングは、台座の上に赤子を寝かした。
「炎の精霊の核を持ってきなさい。」
「所長、上級精霊の核と思われるものしか残っていないのですが、これで構いませんか?先程の暴れたガキのせいで、用意してあった核が足りなくなってしまったのですが。」
「上級精霊の核とは、あの百年以上も保管庫に保存されていた例のやつですか?」
「そうです。何度か加工しようと試みましたが、その度に周囲を燃やしてしまうために保管庫の肥やしになっていたものです。」
その言葉を聞いて、顎に手を当ててキュシュアは仕方ないかとため息をついた。
「いつまでも置いといても、保管庫の枠を使うだけですから、今回使ってしまいましょう。もしうまく行かなければそれを理由にすれば良いだけですからね。」
その話を聞きながら、赤子はその鮮紅色の瞳で虚空を見つめ続けていた。
(あなたは誰?)
(現世の名はエシュタル。異世界より母を探しに渡って来た人間だよ)
(あなたの中にいる真っ赤に燃えている光は誰?)
(光?判らない。私はアルテミアという女神様にこの世界に送ってもらったの。光のことは判らない)
(アルテミア様!あなたは神様の眷属なのですか?)
(えっ?違うと思う。前の世界では普通の人間だったよ)
(こちらの世界の人間と違って、あなたの世界の人間は随分と霊格が高いのですね)
(う~ん、判らないなぁ、前の世界でも善い人間もいれば、屑みたいな人間もいたよ)
(そうなんですか、あなたを見ていると、私はとても優しい気分になります。もしも、あなたが私の目的の為に力を貸してくれるなら、私もあなたに力を貸しますがどうしますか?)
(あなたの目的を叶える為に、私がママの敵になる可能性があるなら、無理だと思う)
(心配ありません。私はどちらかと言えばアルテミア様側の存在です。あなたの母がアルテミア様に縁のある存在であるなら、敵になることは絶対にありません)
(じゃあ良いよ。よろしくお願いします。でも、こんな赤子でも大丈夫?)
(問題ありません。むしろ赤子の方が、私の力を移譲するのに不都合がありません)
そんな念話が赤子と上級精霊の間で交わされていることにも気づかず、ハーフリング達は融合の準備を進めており、今は赤子の上にクリスタルに包まれた真っ赤な光の塊が吊り下げられていた。
(これがあなたなの?とっても綺麗)
(ありがと、これからは私の力はあなたの力。使おうと思えばいつでも使えるわ)
(もうあなたとお話することはできないの?もっとお話ししていたい)
(それは私にも判らない。融合させられるとどんな形になるか判らないから、細かな所が私にはコントロールできなくなるから)
(じゃあ、あなたの意志で私と一つになることはできるの?)
(それは可能だけど、種族が変わるわよ。あなたはハーフスピリットと呼ばれる存在になる。それでも良いの?)
(大丈夫だよ。今でも人間じゃないし、それにママも人間じゃないと思うから丁度良いよ)
(あなた、なかなか大胆ね。よく向こう見ずとか、無鉄砲とか言われない?)
(あれぇ、判る?いつも弟に言われてた)
(私はその性格好きよ。これからもよろしくね)
突然、赤子の上に吊り下げられていたクリスタルの中の光の輝きが増したかと思うと、それと同時にそのクリスタルがパリンと音を立てて割れ、その光がそのまま赤子の中に吸い込まれるように消えていった。
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