第4話 初仕事
楽しんで頂ければ幸いです。
異世界にショットガンチートを手にして転生した俺は、その初日から濃厚だった。冒険者であるリーナさんをゴブリンから助け、彼女に案内してもらいながらも町へたどり着く、冒険者登録を済ませた。更に宿の当てやお金もなかった俺は、リーナさんの家に泊めてもらう事に。そして更に、俺は彼女とパーティーを組む事になったのだった。
異世界に転生して二日目。朝。 俺とリーナさんは目覚めた後、朝食を取って身だしなみを整えてから家を出た。無論、ギルドへ行き依頼をこなして日銭を稼ぐためだ。
朝、家を出る前にショットガンの弾は確認してある。残弾は11発。内2発は既に装填済みだから、それ以外となると残り9発。この9発を使い切る前に何とかしてお金を稼いで、弾をスキルから購入しないとな。
などと考えつつ俺はリーナさんと共にギルドへ向かった。
「リーナさん。一つ質問良いですか?」
「はい。何でしょう?」
「とりあえず、今日の依頼の予定を聞きたいんですが、やっぱり薬草採取ですか?」
「はい。そのつもりなのですが、イクタさんは他に何か受けたい依頼はありますか?」
「いえ。正直、昨日は登録だけでどんな依頼があるとか見てなかったんで。これと言って受けたい依頼は無いですね。なので、俺も薬草採取で構いませんよ」
「分かりました」
とにかく今日こなすべき依頼は決まった。しばらくするとギルドに到着し中に入ったのだが……。
「うっわっ、すごい人だかりだなぁ」
ギルドの中は無数の冒険者で溢れかえっていた。
「朝のギルドはこんな感じですよ。皆良い依頼を取ろうと必死ですから。さ、少し人がはけるまで待ちましょう」
リーナさんは苦笑し、入り口近くの壁際へ。
「あ、はいっ」
流石に冒険者として仕事をしてるだけあって慣れているのか、リーナさんの後に続いて、俺も壁際へ。
そこから依頼書が張り出されたボードの方を見ているが、皆押し合いへし合い、少しでも良い依頼書を取ろうと必死だ。『おい退けよ見えねぇだろっ』とか、『押すな推すなっ!』って声がそこかしこから聞こえてくる。
「みんな必死ですね」
「ここはそこまで大きいギルドじゃありませんからね。報酬の良い依頼はあんなふうに取り合いになる事が多いんです」
「早い者勝ち、って事ですか」
なんて話をしながらしばらく待っていると、依頼書を手にした連中が受付の方へと向かって動き出した。掲示板の前もだいぶ空いてきたな。
「さ、行きましょう。ここまで減れば大丈夫だと思いますよ?」
「はいっす」
リーナさんと共に、掲示板の傍に歩み寄り、薬草採取の依頼書を探す。依頼書自体も日本語で書かれているので、読む事は問題無かった。俺はお目当ての依頼書を探しつつ、『他にどんなのがあるだ?』って興味本位から他の依頼書も見ていた。
ふぅむ。低ランクの依頼だと他にあるのは、ゴブリン退治に下水掃除。他には家畜を襲う狼の駆除。農場の臨時労働者の募集とかもあるな。……なんかバイト求人の一覧見てるみてぇだな。なんて思ったりしていると……。
「あっ。ありましたよ」
リーナさんが薬草採取の依頼書を見つけて手に取る。
「それじゃあ受付に行って、受注したら早速森に行きましょうか」
「はいっ」
俺たちはすぐに受付に向かおうとした。が……。
「あらあら?また来てるよ薬草女」
不意に聞こえてきた女の声。しかもそれは嘲笑の混じった物だった。なんだ?と思いつつ声がした方向に目を向けると、武装した女が立っていた。だが一人だけじゃない。最初の言葉の女と、その周囲に槍や弓などで武装した女が更に3人。見た目からして歳は俺やリーナさんとそう大差ないだろう。
しかしそいつらは、リーナさんに向けて嘲笑を浮かべていた。
「相も変わらず薬草採取?生が出るわねぇ~」
「って言うかそれしか出来ないんでしょ?ふふっ」
「の割には男連れてるなんて、珍しい。薬草採取しか能のない役立たず冒険者のくせに」
あ?なんだあいつら?リーナさんを馬鹿にしやがって。なんか段々イライラしてきたぞっ!?俺はあんなふうに他人を上から目線で侮辱する奴らが一番嫌いなんだっ!ここはいっちょ文句の一つでもっ! と、女どもの方に足を向けるが……。
「イクタさんっ」
俺の手をリーナさんが掴んで止めた。
「リーナさんっ!?」
なんで止めるんですかっ!?と続けようとした。
「良いんです。……私が薬草採取しか出来ないのは、本当、ですから」
「ッ」
彼女は、必死に笑みを浮かべていた。それはまるで、苦しみと悲しみを押し殺しているような、そんな悲しい笑みだった。
「さ、さぁ行きましょ。早くしないと、日が暮れちゃいますしっ」
「……分かりました」
リーナさんは必至にあの女たちの事を気にしないようにしていた。なら、俺が蒸し返すのもダメか。そう思った俺は、素直に彼女の後に続いた。
ただ。去り際に俺はあの女たちの顔を一瞥した。……あいつらの顔を、絶対忘れないために。
その後、俺たちは受付で依頼を受注し町を出て森へと向かった。リーナさんに案内され向かったのは、彼女がよく知る薬草の群生地。道すがら、周辺の地理や取るべき薬草の事。間違えやすい雑草がある事などを聞いたりしていた。
この世界に来たばかりの俺は、この世界について知識が圧倒的に不足している。だからどんな情報でも知っておきたかった。
「薬草、これあってます?」
「はい、大丈夫ですよ」
俺はリーナさんに見てもらいながら、町を出る前に渡されていた籠に薬草を入れていく。
「イクタさんが居ると、本当に助かります。薬草採取は納入した量で報酬が決まりますから」
「じゃあ、大量であればそれだけ報酬が多く貰える、って事ですか?」
「はい」
「へ~~。じゃあますます、量を取って帰らないとですね」
量が報酬額につながると分かれば、取るしかないな。 それから数分。俺は薬草採取に精を出していた。
その後、無事に籠いっぱい薬草を取り終えた俺たちは町に戻るために歩き出した。その道中においてもゴブリンなど魔物の襲撃は無く、無事に町へとたどり着いた。俺たちはそのままギルドへと向かい、窓口で採取した薬草を納入し報酬を受け取った。
で、その報酬と言うのが、『中銅貨5枚と小銅貨7枚』と言う物だった。……って素直に受け取ったけどこっちの世界のお金の価値なんて分からねぇからこれが結構な額なのか分からんっ!今は『報酬を山分けしましょう』と言うリーナさんの提案で壁際のテーブルの上に報酬を広げて数を数えている。
ちなみに、小銅貨は形が菱形。中銅貨は四角形だった。価値によって形が違うのか?まぁそれは今気にしても始まらない。それに、それ以上に気になる事もある。
「あの、リーナさん。リーナさんって薬草採取でいつもこれくらい貰ってるんですか?」
「いいえ。いつもはこの半分くらいですね」
俺が問いかけるとリーナさんは少しばかり苦笑を浮かべながら答えてくれたが、これの半分。つまり中銅貨2枚とプラスアルファ程度、って事か。リーナさんの話だと、結構生活は厳しめらしいし。ここは……。
「じゃあ、この中銅貨2枚はお世話になってる家賃って事で」
スススッ、と2枚をリーナさんの方へ。
「えっ!?で、でもこれじゃ不公平になるんじゃっ!?」
「良いですよ別に。世話になってるのは本当ですからね。家賃だと思って受け取ってください。代わり、と言っては何ですが残りの1枚とこっちの小銅貨7枚、貰っても大丈夫ですか?」
「は、はい。大丈夫、ですけど」
俺の提案に彼女は今も驚いた様子で少し呆然としながらも頷く。
「じゃあ、貰いますね」
そう言って俺は中銅貨1枚と小銅貨7枚を受け取る。確か12ゲージの弾はひと箱小銅貨3枚って話だったし、弾の方はこれで購入できるだろう。
「あの、良いんですか?本当に?」
しかしリーナさんは今もこの決定に戸惑っているようだ。
「だから大丈夫ですって。世話になってるんですから、これくらいさせてくださいよ」
「は、はい」
俺の言葉を聞いても、未だに納得は出来ていないようだ。けれど、世話になってるのは本当だし、ただでさえ苦しい生活の中で負担をかけているんだ。これくらいしなければ男として情けない。
「ほら、行きましょうよ。もう仕事は終わりましたし」
「そう、ですね」
俺の言葉に彼女は気持ちを切り替えたのか笑みを浮かべながら頷いた。
その後俺たちはギルドを出た、のだが……。
「あっれ~~?な~んか青臭いって思ったら薬草女じゃ~ん」
「ッ!」
耳に響くのは嘲笑の声にリーナさんが息を飲む。忘れるはずもない。今朝も聞いたこの声。俺は思わず声の方を睨みつけた。見ると、そこには今朝の女たち4人組が立っていた。またしても奴らはリーナさんを嘲笑っている。
「もう冒険者やめて薬屋にでも転職したら~?その方が儲かるんじゃないの~?どうせまとものに戦えないんだしさ~?」
ニヤニヤと侮蔑的な笑みを浮かべる女たちに、リーナさんより先に俺の方がキレそうだった。
「ッ!あいつら言わせておけばっ!」
いや、と言うかキレた。女だからって容赦しねぇっ!一発ぶん殴ってやらなきゃ気が済まねぇっ!
「イクタさんっ」
「うぉっ!?」
殴ってやろうと足を一歩進めた俺だが、そこから察したのか後ろにいたリーナさんが俺の手を掴んで止めた。
「良いんです、本当の事、ですから」
「け、けどっ」
『ならなんで、そんな辛そうな表情をしてるんですか?』、と言う言葉を俺は飲み込んだ。今の悔しそうな彼女に、そんなことを聞く気にはなれなかった。
「さぁ、行きましょうっ」
「は、い」
強引に俺の手を引く彼女のするがまま、俺は後ろを気にしつつも、彼女に従って歩いた。チラリと振り返れば、あの女たちはこっちを見ながら今も薄汚い笑みを浮かべている。その姿に俺が舌打ちを我慢していた時。
「……私に、使える武器さえあれば……っ!」
「ッ」
小さく、か細い声。それはリーナさんの物だった。風にさえかき消されそうなその声を、俺は偶然にも聞いてしまった。思わず彼女の横顔を伺った。
今、彼女の口元は堅く一文字を描くように結ばれ、目尻には悔し涙を浮かべていた。俺はそんな彼女の様子を見つつも、どう声をかけていいのか分からず、ただただ彼女のあとを付いていく事しか出来ないのだった。
あの後、少ししてリーナさんは平静を装いつつ俺と共に買い出しをしてから家に帰った。昨日の同じく夕食も済ませたけど、リーナさんは今も必死に笑みを取り繕っているような感じだ。まるで、心の奥から這い出てくる負の感情に、必死に蓋をしようとしているようで、見ていられなかった。
「あ、あのっ!」
だからこそ、俺は声を上げた。
「はい、何ですかイクタさん?」
「……リーナさんはさっきの4人に言われた事、ホントは気にしてるんじゃないですかっ!?」
「ッ。そ、それ、は……」
彼女は俺の言葉に驚いて息を飲み、次いで困惑したように言葉を詰まらせ視線が宙を泳ぐ。
「出会ってそれこそ二日程度の男ですけど、もし言いたい事があるのなら、ため込まない方が良いですよ?」
「えっ?」
「……苦しいなら、吐き出して良いんですよ。思いっきりぶちまければ良いんです。俺が聞きますから」
「ど、どうして、そんな?」
リーナさんは俺の言葉と態度に困惑しているようだった。当然だよな、いきなりすぎるし。目の前をリーナさんを見てたらこうも言いたくなる。だって……。
「だって、今のリーナさんは、とても苦しそうですから」
目の前の彼女が、とても苦しそうで。見ていられなかった。
「ッ!?」
「苦しいなら、吐き出して良いんですよ?」
「ッ、う、うっ」
彼女は俺の言葉に息を飲み、次いで迷うように声を詰まらせていた。けれど、どうやら感情のダムを抑えることは出来なかったようだ。
次第に彼女は目尻に涙をため始めた。そして、ついに感情のダムは決壊した。
「わ、私だって本当はあんな事言われて悔しいですっ!見返したいですっ!いつもいつもいつもっ!笑われてばっかりでっ!悔しくてっ!でも本当の事だと分かってるからっ!言い返せないっ!だから私は、ただただ『しょうがない』って、『本当の事なんだから言い返す事なんて出来ない』ってっ!そう考えて、自分を信じ込ませる事しか出来なくてっ!」
堰を切ったようにあふれ出てくる言葉の数々。彼女は大粒の涙を流し、悔しそうに表情を歪めながら、腹の中にため込んでいた想いを俺にぶちまけた。
「でも、私に扱える武器なんてありませんっ!剣も、弓も、槍もっ!どれも満足に扱えなくて、戦う事なんて、出来なくて、だから、薬草を取る事しか、出来なくてっ!一人で、ずっと、ずっと……っ!」
「……」
俺は静かに彼女の話を聞いていた。この話と今の彼女を見ていれば分かる。両親が亡くなってから今まで、必死に一人で頑張って来たんだ。
そう思うと、俺は彼女に何かしてあげたいと思うようになった。俺は静かに、テーブルの上に置かれた彼女の手に、自分の手を重ねた。
「ッ!」
彼女は驚いた様子で俺を見つめる。
「泣いて、良いですよ。ここにはリーナさんの涙を嗤う奴なんて、いませんから」
人間、泣きたいときはある。嬉しい時も、悲しい時も。だからこそ俺は静かに促した。
「あ、あぁっ、うっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
それが決めてとなったのか、彼女は感情を爆発させ大粒の涙を浮かべながら、あらんかぎりの声をあげて泣いた。
それからしばらく、リーナさんは泣き続けた。けれど泣いた事で、思いを吐き出した事で少しは楽になったのか、しばらくすると彼女は落ち着き、涙も止まったようだった。
「ぐすっ、すみません。お見苦しい所を」
目元はすっかり赤くなった彼女は恥ずかしそうに小さく頭を下げている。
「気にしないでください。誰だって、泣きたい時はありますから。それに涙は心の洗濯とも言いますからね。どうか、お気になさらず」
彼女の事を考えれば、あれだけ泣いたって仕方のない事だと分かる。だからこそ俺は笑みを浮かべながら、彼女に優しく語りかける。
「っ。あ、ありがとう、ございます」
すると彼女は少しだけ頬を赤く染めながら、俯いた。きっと赤い目元とか見られたくないんだろう。……しかし、彼女の貯まりに貯まった鬱憤とかを吐き出したとは言え、根本的な解決には至っていない。
あの女たちは今後も戦う術を持たないリーナさんを嗤うだろう。そうならないためにはリーナさん自身が戦えるようになるしかない。
彼女は剣や弓、槍は使えないと言っていた。……が、俺には彼女に、それ以外の武器を与える力がある。だから……。
「リーナさん。落ち着いた所に立て続けで申し訳ないんですが、俺の話を聞いてくれませんか?」
「え?なん、でしょうか?」
唐突な話題の変更に、リーナさんは少し戸惑い気味だ。彼女は指先で涙をぬぐうと、少し困惑した様子で俺を見つめてくる。
「ギルドを出た時、言ってましたよね?私に扱える武器があれば、って」
「ッ、聞こえてたんですか?」
「はい。小さく、ですが」
「そ、そうですか」
どうやら独り言だったのだろう。それを聞かれたからか彼女は気まずそうに俺から視線を反らす。
「で、本題はここからです。俺の力で、リーナさんにある武器が用意できます」
「ある、武器?」
「はい。その武器は、大きく分けて3つのメリットがあります。一つ、剣や槍のリーチの外側、10メートル以上離れた位置から一方的に攻撃が出来る事」
俺は右手の指を立てながら説明を始める。
「二つ。殺傷力が高く、特に防御力の低い相手ならば簡単に倒す事が出来ます。最後に三つ。特殊なスキルや技量を必要とせず、ちゃんとした訓練させ詰めば女性や子供でも扱う事が可能であり、また個人の技量に差があっても戦闘力が変わらない。これが俺の用意できる武器のメリットです」
「す、すごいですね。でもほんとにそんな武器があるんですかっ?」
リーナさんは俺の話に食い気味に問いかけてくる。その反応に俺は思わず、ガンオタとしての自分が出てくるの抑えられず、ニヤリと笑みを浮かべた。
「えぇ。あるんですよそんな武器が」
俺は傍にあったそれ。つまりダブルバレル・ショットガンを手に取り、机の上に音を立てて置く。
「『銃』。いや、『ショットガン』ですよ」
「しょっと、がん?」
「そうです」
首をかしげるリーナさん。更に説明をするため、俺はポーチから一発のショットシェルを取り出しテーブルの上に置いた。……ってリーナさんに火薬とか言っても分からないからかいつまんで説明した方が良いよな?
「え~っと、ですね。この小さな筒の中には無数の小さな鉄球と。爆発する粉、火薬と言う物が封入されています。銃と言う武器は、それに衝撃を与えて火薬を爆発させ、その圧力で銃身から鉄の弾を撃ち出し、相手を撃ちぬく武器なんです」
「な、成程?」
リーナさんは、分かったような分からないような、微妙な表情を浮かべていたが仕方ないか。とにかく説明を続けよう。
「とにかく。この銃、ショットガンなら個人の武器を扱うスキルは必要ない。剣を振る力やスキルは必要ない。こうして持って、銃口を真っすぐ敵に向けて、この引き金を引くだけ。すると銃口から鉄球の雨が飛び出して、相手を貫く」
俺はダブルバレル・ショットガンを手に持ち、構えて撃つふりをした。
「更にショットガンからは一発で無数の鉄球が飛び出すので、銃の扱いに慣れてなくて、ある程度狙いが甘くても当たる確率は高い。強い反動と発砲の時の爆音に最初は驚くでしょうが、すくなくとも0から剣や槍、弓の練習をするよりかは、手っ取り早く扱えるようになるでしょう」
俺は静かにダブルバレル・ショットガンをテーブルの上に置きなおす。
「………」
リーナさんは、俺の説明を聞き、今は静かにテーブルの上のショットガンを見つめていた。
やがて……。
「本当に」
「ん?」
「本当に、これを使えば。私は戦えるようになるの、でしょうか?」
彼女は静かに、視線をショットガンから俺に向けている。そんな彼女の浮かべる表情は、期待と不安を混ぜ合わせたような物だった。戦えるかもしれないという期待。使いこなせるのか?と言う不安。それが、一緒くたになっているようだった。しかし今の俺に、確証のある事は言えない。
「正直な所を言うと、確固たる根拠とかが無いので絶対とは言えません。ただ俺に言える事があるとすれば、銃の威力は年齢や性別、技量など一切関係ないんです。だからこそ、銃はある意味では平等です。男だろうが、女だろうが。ただしっかり扱えるように訓練をすれば、リーナさんだってショットガンで戦えるはずです」
「私が、戦えるように……」
彼女はじっと、ダブルバレル・ショットガンを見つめている。その表情には迷いが見えた。まだ踏ん切りがついていないようだった。だから俺は、少しだけその背を押す事にした。
「持ってみますか?」
「え?い、良いんですか?」
「えぇ。どうぞ」
俺は一度ショットガンを手に取り、それを彼女に差し出し、渡した。
「ッ!」
どうやら予想よりも重かったのだろう。銃を手にした彼女の手が僅かに沈み、彼女は息を飲んでいる。
「お、思ったり重い、ですね」
「そうですよね。俺も初めて持った時はそう思いました。それで、どうです?」
「え?」
「詳しい説明を後にするとしても、俺にはリーナさんのために、ショットガンとそれ用の弾を用意する力があります。ショットガンがあれば、リーナさんだって戦える力を、戦う術を得られるかもしれません。……この話を聞いて、どう思いました?リーナさんは、どうしたいですか?」
「私、は……」
彼女は視線を手にしたダブルバレル・ショットガンに落とす。俺は彼女の答えを待った。俯いていた顔が上がる時を待った。 そして、その顔が上げられた時。彼女は決意の表情を浮かべていた。
「イクタさん。お願いがあります」
「はい、何でしょう?」
「私に、この武器の、ショットガンの扱い方を教えてくださいっ!もう罵られるのは嫌ですっ!嗤われるのは嫌ですっ!私は、強くなりたいっ!!」
感情を爆発させるように彼女は叫んだ。その顔に浮かぶ決意の表情に答えるように、俺も力強く頷いた。
「分かりました。じゃあ俺たちで、いっちょあのいけ好かない奴らを見返してやりましょうっ!」
「ッ!はいっ!!!」
俺もあいつらは気に入らないし、ぎゃふんと言わせてやりたかった。やってやるぜ、と言わんばかりの俺の笑みに答えるように、リーナさんもまた、決意に満ちた表情と笑みを浮かべながら、力強く頷くのだった。
第4話 END
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