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『ショットガン最強ッ!』と異世界で叫び続ける俺  作者: ナギオ
第1章 いきなり転生っ!?まぁでもショットガンがあれば何とかなるかっ!
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第2話 ファーストエンカウント

楽しんで頂ければ幸いです。

 とある休日。暴走トラックから子供を庇って俺は命を落とした。その結果として、俺はテンプレ的な異世界転移をすることになった。俺は神様と話し合い、ショットガンを扱う力、『ショットガンチート』を与えてもらい異世界へとやってきたのだった。



 さて、と。 異世界に来て10分ほど。最初は驚きと感動で絶叫したりしていたが、今は落ち着いた。まずは改めて状況の確認だな。


 周囲を見回すが、俺以外に人影はない。場所は、どこかの森の中だろうか。四方に木々が生い茂っている。ざっと見渡した限りでは人の気配や人工物らしき物は無い。どこだここ?まぁ良い。次は自分の状況だ。


 自分自身を見下ろすと、そこにあったのはついさっきまで来ていた私服に愛用のスニーカー。それとポケットに手を突っ込んでみるが、そこに入っていたはずのスマホと財布は無くなっていた。まぁ、異世界で電波の届かないスマホと日本円と身分証明書くらいしか入ってない財布が何の役に立つんだ、って感じだが。


 次いで俺は、腰に装着されているベルトへと目を向けた。左側にはコーチガンの収められたホルスターがある。右側には弾を入れておくポーチがある。ポーチの中には、既にコーチガンに対応した12ゲージの装弾、ショットシェルがいくつか入れられていた。 ショットシェルの一つを取り出して中身を確認する。ショットシェルの一部が透明になっており、中に無数の小さな鉄球が収められている所から見て、こいつはおそらくバードショットだな。


 ちなみに、『バードショット』と言うのは無数の鉄球を放つ、主に小型の動物や鳥類の狩猟に用いられる弾だ。バードショット、と一口に言っても種類がたくさんある。例えば鉄球そのものは数ミリほどの大きさがあり、ショットシェルに収まっている数は一桁台の物もあれば、逆に鉄球一つ一つは限りなく小さい反面、数百もの鉄球を収めた物まである。


 俺の持つポーチに入っていたシェルの内部にある鉄球は、大きすぎず小さすぎずと言った所。きっと中間的な物だな。となると、鉄球の数は二桁程度か。で、その12ゲージのショットシェルがポーチにえ~っと? ポーチの中から弾薬を取り出し数える。


 中に入っていたのは合計で14発のショットシェルだった。コーチガンが2発ごとにリロードだから一応7回くらいは撃てるな。まぁ問題は今後弾を入手する事なんだが、問題はその値段だ。


 俺は木の根元に座り込み、目を閉じて意識を自分の内側に向ける。すると、自分の中にある力を感覚的に理解する事が出来た。


「≪メニューオープン≫」

 そして、俺のスキル発動の決まり文句は自然と脳裏に浮かんできた。それを口にすると、俺の眼前に現れた宙に浮くディスプレイ。


「これかぁ」

 俺は目を開け、しげしげとディスプレイを見つめる。 ディスプレイに映っているのは、ゲーム内でアイテムショップとかに入った時に見かける、アイテム購入画面に似ていた。


 まず複数のタブがある。内容は、『ショットガン本体』、『弾薬』、『ホルスター及び関連品』の3つだ。

「う~む」

 まずはショットガンのタブを見てみる。どうやら値段順になっているらしく、一番上には今俺が持っているのと同じダブルバレル・ショットガンがある。スマホを操作する時のように、画面を指先で操作しスクロールしていくと、金額が上がっていくのと共にどんどん近代的なショットガンが現れた。が……。


「うへぇ。この辺りじゃ金貨数百枚が当たり前かよ」

 あまりの値段に俺はげんなりした表情を浮かべざるを得なかった。今メニューに映っているのは、俺のいた現代でも使われているショットガン、『ベネリM4』や『サイガ12』だ。他にもまだまだあるが、そのどれもが中金貨とやらが数百枚越えの高額さだ。画面を上にスクロールして安い方へと戻る。コーチガンより高くとも比較的安い部類の銃に目を向けたが、あまり数は多くなかった。


 レバーアクション式の『ウィンチェスターM1887』やポンプアクション式の『M1897』などなど。しかしそのどれもがコーチガンと比較しても倍以上の値段がしている。かといって、ダブルバレル・ショットガンより安いとなると、単発式のブレイクアクション式ショットガンがあるばかりだ。多数を相手にいちいちリロードなんてしてられないし、こりゃしばらくダブルバレル・ショットガンで頑張るしかねぇかぁ。などと思いながらタブをスライドさせる。


 弾のタブには様々な種類の弾がある。バードショット一つとっても、鉄球のサイズや数だけで10個以上に分けられる。加えて各ショットガン用の弾もあるから、その多さはかなりの物だ。 んで、コーチガンで使ってるのと同じ12ゲージの弾はと言うと。


 小銅貨とやら3枚で6発入りの箱がひと箱買えるようだ。う~ん、コーチガンに比べればまだ安いが、一回の戦闘でどれだけ弾を使うか分からないしなぁ。とりあえず値段が確認できただけでも良しとするか。


 さて、とりあえずメニューを閉じ、周囲を見回す。 ここはどこかも分からない森の中。装備は散弾銃のコーチガンが1丁に弾は14発。手持ちの金はゼロ。食料や水、野宿に必要な装備も無し。 となると目下の目的は日暮れ前に町にたどり着く事だな。っと、そうだ。


「移動の前に、確認しとくか」

 コーチガンをホルスターから、刀を抜くような動作で抜き左手で銃身を支えながら右手親指でコーチガンにあるレバー、『トップレバー』を操作し銃身を折り曲げる。


 こうする事でコーチガンは手動で装弾と排莢を行う事が出来る。ショットガンによってはこうやって銃身を折るだけで自動的に空薬莢が排出される『エキストラクター』なるパーツもあるが、どうやらこいつには無いらしい。で、薬室を覗いてみるがそこに薬莢は無い。


「弾は入ってないか。となると……」

 右脇のポーチに視線を落とし、そこに手を入れて2発のショットシェルを取り出す。うん、人生で初めての生リロードだ。ちょっと緊張してる。


 慎重に弾を薬室に一発ずつ装填する。ド素人の俺には、ゲームみたいに2発同時リロードなんてまだ無理だ。とはいえたった2発。装填も数秒で終わる。最後に銃身を戻しきればリロードは完了だ。こいつは外に撃鉄が無いタイプのコーチガンらしく、そのおかげでリロードした時点でコッキングはされている。後は引き金を引くだけで弾が出るって寸法だ。


 今、俺の手の中には射撃可能な本物の銃がある。そう思うと、試してみたい、撃ってみたいという欲求が顔をのぞかせた。欲求に従って、自然と震える指先が安全装置を外す。


「ハァ……ッ!」

 緊張と不安、期待感がごちゃ混ぜになり、自然と汗が吹き出し呼気が漏れる。俺は震える手を宥めるように2、3度左手で拳を作っては開きながら深呼吸をする。


「ぃよし……っ!」

 覚悟も決まった俺は、手近な木をターゲットにしてコーチガンを構える。銃火器をどうやって構えるかは、アニメや映画、漫画に某動画サイトで散々見てきたし、エアガンだけど手に持って構えた事だってある。


 ゆっくりと、二つある引き金の一つに指をかけ、慎重に狙いを定める。そして、引き金を引いた。


「うぉっ!?!?」

鼓膜を揺らす銃声の爆音。瞬くマズルフラッシュ。肩と手に襲い掛かる反動に、俺は思わず驚き声を上げながら一歩後ずさりしてしまった。更に射撃の音と閃光に驚いて、一瞬目を閉じてしまった。ゆっくりと目を開けて見ると前方の木には無数の鉄球がめり込んだ跡がある。


「は、ははっ。これ、本物だ……っ!」

 分かってはいたけど、銃声も閃光も反動も、玩具なんかじゃない本物なんだと、今ようやく体を通して実感した。本物の銃を握り撃った感動と戸惑いがごちゃ混ぜになった俺は、引きつった笑みを浮かべる事しか出来なかった。 


 それから数秒は近くの木に寄り掛かって感慨にふけっていたけど……。

「ってそうだっ!?ここに居たら不味いじゃんっ!」

 日が暮れる前に町を見つけるなりしないとっ! 思い出した俺は慌てて立ち上がり、トップレバーを操作して放った方の空薬莢を取り出そうとしたけど……。


「あちちちっ!」

 射撃後の薬莢は高温で、射撃時の圧力もあって薬室に張り付いてしまっていた。何とかシェルの淵に爪を引っ掛けて少し取り出し、次いで指先でシェルの底部を摘まんで空薬莢を落としたが……。


「ひぃ~あっちっ!」

 射撃直後の薬莢は、俺が思っていた物より数倍熱かった。危うく火傷するかと思う程に熱かった。今後は手で薬莢を取り出すなりするだろうから、金が手に入ったら手袋でも買ってつけるしかないかなぁ。と考えつつ、1発リロードとして銃身を戻し、安全装置をセット。


 ホルスターにコーチガンを戻すと、とりあえず見晴らしのいい場所を目指して歩き出した。地図も何もないし、遠目でも良いから町を見つけられないとどの方角に行けばいいか分からないから確実に『詰む』んだよなぁ。


 それからしばらく歩いていると、運が良いのか小高い丘を発見。足早にそれを駆け上がり、丘の上から周囲を見回す。

「おっ?」

 遠くに見えたそれは、人工の建物。つまり町だった。

「よしっ!あっちだなっ!」

 向かう方角が分かれば後は向かうだけだ。足早に丘を駆け下りた俺は、村の方角に向かって歩き始めた。


 が……。

「ぜぇっ!ぜぇっ!クソっ、キッツっ!」

 鬱蒼とした森を抜けようと足早に移動していたものの、慣れない山歩きのせいで汗は後から後から流れ出てくる始末。おまけに足まで痛くなってきた。どうにか、日暮れ前には町にたどり着きたいんだけどなぁ。


 仕方ない。少しこの辺りで休んでいこう、と考え近くの木の根元に腰を落とした時だった。

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

 ッ!?悲鳴っ!? すぐさま立ち上がり若干もたつきながらもホルスターよりコーチガンを取り出し構え、周囲を警戒するっ。


 ……周囲に人影や何かが動く影は見えない。が、それでも確かに悲鳴は聞こえた。

「ど、どこ、だ?」

 肌で感じる嫌な予感に、しきりに周囲を見回すが視界内に動きは無い。と、その時。


「だ、誰かぁっ!」

「ッ!?こっちかっ!」

 再び聞こえた声に、俺は反射的に走り出していた。それが無謀だとは分かっていた。ショットガンで武装してるからって、実戦経験なんて無い俺に何が出来るんだって話だ。でも、聞こえてきた声が『女の子の悲鳴』みたいだったから。深く考えるよりも先に、手足が動いていた。


 声がした方にコーチガンを手にしたまま駆ける。すると聞こえてきた。しかし人の声じゃない。それは生き物の呻き声のような声だった。

「間に合ってくれよっ!」

 ここまで来て間に合いませんでしたはシャレにならないっ! 必死に痛む足に鞭打って走り、草木を突き抜けたっ。


『ギッ!?ギギャッ!』

『ギャギャァッ!』

「ッ!?」

 草木を突き抜けた先で遭遇した『それ』を前にして思わず息を飲んだ。 『それ』は、人間の子供程度のサイズに醜悪な顔立ち、緑色の体色が特徴的な、ファンタジーゲームの王道的モンスター。


「ご、『ゴブリン』ッ!?」

 その数3匹。しかも内2匹は木を削って作りだしたのか、粗雑なこん棒を手にしている。

『ギャッ!ギャギャッ!』

『ギギィッ!!』


 既にゴブリンも俺に気づいており、こん棒を振り上げこちらを威嚇しているのか仕切りに声を荒らげている。や、やるしかないかっ!? 襲われる前にやってやるっ。そう考えコーチガンを構えた時、ゴブリンたちの更に向こうで何かが動いた事に気づいた。


 って、あれっ!?女の子かっ!?もしかしてあの子が悲鳴の主っ!?つぅか、ダメだっ!射線が被ってるっ!ここからゴブリンを撃ったら確実にあの子にまで当たるっ!

「くっ!」

 咄嗟にコーチガンの銃口を反らす。ど、どうするっ!?このままじゃっ!


 その時。

「お、お願い、助けて……っ」


 ゴブリンたちのわめき声に交じって聞こえたそれは恐怖に表情を歪め、涙を浮かべる彼女の声だった。かき消えそうな弱々しいその声が鼓膜を揺らし、俺は音がするほど力強く奥歯をかみしめた。


「くっ!やって……。やってやるよぉッ!!」

 ここで逃げだすのは簡単だが、それはつまりあの子を見捨てる事になるっ!俺だって男だっ!プライドくらいあるっ!みすみす、あの子を置いて逃げられるかっ!!


「おいアンタッ!今すぐ両耳をふさげっ!こっから爆音が響くっ!」

「えっ?」

「早くしろっ!!」

「ッ!は、はいっ!」

 相当な剣幕の俺の声に驚きながらも少女は慌てた様子で両耳をふさぐ。


「これで、怯んでくれればぁっ!」

 コーチガンの銃口を斜め上方に向け、引き金を引いた。直後に轟く銃声。

『『『ギギャァッ!?』』』

「きゃぁっ!?」


 突然の銃声にゴブリンどもは驚き女の子は悲鳴を上げる。

「つぅっ!!」

 かく言う俺も、まだ銃声に慣れていないが為に、耳をつんざく轟音に顔をしかめつつゴブリンを睨みつける。


『ギ、ギィッ!!』

 ゴブリンどもは混乱した様子で耳を抑えているっ!チャンスッ!! ゴブリンどもを迂回するように駆け抜け、俺は女の子の前に滑り込んだッ。


「アンタッ!大丈夫かっ!」

「は、はいっ」

 問いかけると彼女は弱々しい声で頷きながらも、未だに耳を抑えている。

「じゃあそのまま耳を抑えててくれっ!もう一発行くからっ!」

「ッ!は、はいっ!」

 また銃声が響くと分かったんだろう。彼女は再び両手で耳をふさいでいる。それを確認しつつ、コーチガンの狙いを定める。


 ゴブリンどもは流石に銃声の驚きから立ち直ってこそいたが、どうやらこいつらにとっては全くの未知の武器である銃を前にして警戒しているらしいっ!おかげで距離を詰めてこないっ!それがむしろチャンスになるっ!


「当たれぇぇっ!」

 散弾ならある程度の範囲を攻撃できるが、狙って当てる事は出来ないっ。武器を持つ2匹が近くにいた為にそちらを優先的に狙い、引き金を引いた。


 再び響く銃声。直後、武器を持っていたゴブリン2匹が倒れた。散弾が無数に命中したのだろう。撃たれて出来た無数の銃創から血を流し動かない。更に……。


『ギギィィッ!!!?』

 運がよかったのか。武器を持たない1匹の左腕にも散弾が当たったようで血が流れだす。痛みで表情を歪めながらゴブリンは右手で左腕の傷を抑え、こちらを睨みつける。


 だがダブルバレル・ショットガンの装弾数は2発。もう撃ち止めだ。これ以上は弾が出ない。頼む、逃げてくれ。


 もう弾が無い事を悟られないよう、コーチガンの狙いを定め、いつでも撃てるぞと言う『ふり』をしながら必死に不安をポーカーフェイスで隠し、ゴブリンと睨みあう。やがて、ゴブリンは忌々しそうに表情を浮かべながら俺に背を向けて逃げ出した。


 茂みへと入り、足音や草木をかき分ける音が離れていくのを確認すると……。

「ぶっはぁぁっ!!」

 今になって緊張感と恐怖が襲い掛かって来た。肺にたまった空気全てを吐き出すように大きく息を付きながら、恐怖で震える膝では立っている事が出来ず、その場に膝をついた。


 尻もちをつかなかったのは、『まだ完全に安全な訳じゃない』と生存本能が訴えているからだった。トップレバーを操作し銃身を折る。熱いのをどうにかするため、指先を舐めて少しでも濡らし、空薬莢の熱に表情を歪めながら空薬莢を取り出す。 次いでポーチの中に手を入れ、新たな弾を装填し銃身を戻す。


 残り、11発か。残弾は気になるが、今はそれよりも周囲の警戒だ。膝立ちの姿勢のまま、周囲を見回す。 ここはどこかも分からない森の中。どこにどんな脅威が隠れているが、想像もつかない。下手をすればさっき逃がしたゴブリンが仲間を連れて戻って来るかも。……どのみち、ここに長居は出来ないな。


 そう結論づけた俺は周囲を警戒しながらも振り返る。

「おいっ、大丈夫かっ?おいっ」

「う、うぅ。だ、大丈夫、です」


 声を掛けると、両耳をふさいでその場にうずくまっていた彼女は何とか起き上がり、俺を見上げる。と、そこで改めて俺は彼女と向き合った。


 女の子を見た感じ、歳は俺とそう変わらない。高校生か、大学生と言った程度だろう。美しい金色の髪は背中の中ほどまで延び、青い瞳の端に涙を貯め、少し不安そうな表情のまま俺を見上げている。……うん、顔立ちも整ってるしすげぇ美少女だわ。……って今はそんな事はどうでもいいっ! いかんいかんっ!こんな事を考えてる場合じゃないっ!


「立てますか?」

「あ、ありがとう、ございます」

 コーチガンを左手に持ち替え、地に座る彼女へと右手を差し出す。彼女は俺の手を取り立ち上がった。


 彼女は服についていた汚れを軽く叩いて払うと、俺と向かい合った。

「改めて。助けていただいて、ありがとうございました。あなたが来てくれなかったら、私はどうなっていたか」

「そうだな。まぁ、間に合ってよかった」

 深々と頭を下げる彼女に対し、俺も『守れて良かった』と言う安堵感から自然と笑みがこぼれた。


「本当に、ありがとうございます。ただ、助けてもらったうえで申し訳ないのですが、今の私にはこれと言ってお礼出来る物が……」

 顔を上げた彼女だったが、目は伏せられ、表情は面目ないと言わんばかりだ。

「あぁいやいやっ!気にしないでってっ!何かお礼が欲しくて助けた訳じゃないんだっ!ホント、たまたまだったんだってっ!だから別に気にしなくていいからさっ!」

「そう、ですか?」

 

 とりあえず定例文じみた言葉を並べてみるが、彼女は俺の様子を伺っているようだ。う~ん、こういう時って何か敢えてお礼してもらった方が良いのか?その方が後腐れ無さそうだけど、かといって金や物を請求するのもなぁ。う~ん。


 何かないかとしばし考えていた時。

「あっ」

 閃いたっ!


「ねぇ、君ってこの近くの町の人?」

「え?は、はい。そうですが、何か?」

「じゃあちょうどいいやっ!お礼って事でそこまでの案内とかお願いしていいかなっ?俺この辺来たばっかりでさぁ。全然土地勘無いんだよねぇ?って事で道案内、お願い出来る?」

「か、構いませんが、本当にそんなことで良いんですか?」

「もちろんっ!十分だよっ!」

 どこかキョトンとする彼女に俺は力強く頷きながら笑みを浮かべる。


「わ、分かりました。では町まで案内をしますが、え~っと。その前にお名前を伺ってもよろしいですか?」

「え?あぁ良いですよ。俺の名前は幾多 道雄。道雄でも幾多でも、好きに呼んでくれて言いんで」

「分かりました。では、イクタさん、でよろしいですか?」

「大丈夫ですよ。あっ、それで君の名前は?」

「私は『リーナ』と申します」

「リーナさんか。それじゃまぁ、改めて案内、お願いしますね?」

「はい。任せてください」


 それが、俺と異世界での、最初の人との出会いだった。


     第2話 END

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