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『ショットガン最強ッ!』と異世界で叫び続ける俺  作者: ナギオ
第1章 いきなり転生っ!?まぁでもショットガンがあれば何とかなるかっ!
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第1話 突然の転移

楽しんで頂ければ幸いです。バトルあり、ハーレム要素あり、バトル描写は銃(散弾銃)メイン。主人公がショットガン片手にファンタジー世界を冒険する物語です。銃の細かい描写については本や参考動画などで勉強しつつ書いていきますが、間違いなどもあるかもしれません。その辺りは温かい目で見守っていただけると幸いです。

唐突な話だが、皆は『散弾銃』と聞くとどう思い何を思い浮かべるだろうか?銃火器に詳しくない人からすれば、『なんかそういう銃あるよね?』って言う程度の話だろう。それとは別に、銃火器への知識がある人ならそれは銃火器の無数にある種類の一つであることは簡単に分かるだろう。また、その名の通り無数の鉄球、散弾を放つ事や遠距離戦に向かない反面、接近戦において無類の破壊力を誇る事も、当然知っているだろう。


さて、なんで俺が急にこんな話をしたのかと言うと、それはもちろん俺が無類の『ショットガン好き』のガンマニアだからだ。あぁもちろん本物なんて撃ったことも触った事も無い。あるとすれば精々エアガンだ。何しろ俺は日本生まれの極々普通の男子高校生だ。残念ながら本物のショットガンとは縁遠い存在だ。


しかし、俺はとある事をきっかけに本物のショットガンを手に、様々な困難に立ち向かう事になっていく。これはそんな俺の、『幾多 道雄』の話だ。そして事の始まりは、とある休日の、エアガンショップからの帰り道だった。



~~~~~

 とある土日休み。俺は実家から少し離れた都会の一角にやってきていた。休日と言うだけあって、歩道には無数の人々が歩いている。そんな中を俺は戦利品の入った紙袋片手に歩いていた。 今日はバイトして貯めたお金でお目当ての物をゲットする事が出来た。なので今はウキウキ気分で駅に向かっているところだ。今から家に帰って、戦利品の箱を開けるのが楽しみで楽しみで仕方ない。


「はぁ~~。早く帰りてぇなぁ」

 そんなワクワク感からか、口から小言が漏れる。しばらく歩いていると、駅前の交差点までやってきた。交差点の横断歩道を渡ればすぐ駅なんだが、残念。目の前で信号が赤になっちまった。運が無いなぁ。まぁ変わるのを待ちますか。


 歩行者用の信号が変わるまでの間に、俺は紙袋の中へと視線を落とした。紙袋の中に入っていたそれは、いかしたパッケージイラストの長方形の箱、『エアガン』が収められた箱だ。


 今日俺が買ったのは、最近発売されたばかりのエアガンだ。初めてネットで発売予告のニュースを見た日から一目惚れし、必死にお金を貯めて今日やっとこさ購入する事が出来た、ショットガンのエアガンだ。あぁ、早く家に帰って箱から取り出して、眺めたり構えたりしてみたいなぁ。 なんて考えながら信号が変わるのを待っていると、ようやく青信号が付いた。


 それを合図に俺は周囲の人たちも横断歩道を渡ろうと歩き出したのだが……。

「あ、危ないっ!!」

「えっ?」

 不意に誰かが叫んだ。その声に俺だけでなく周囲の人たちも足を止め周囲を見回すが、すぐ様気づいた異様なトラックッ!!


 そのトラックは何と、赤信号だってのに全く減速することなく横断歩道へ真っすぐ向かってくるっ!?

「に、逃げろっ!!!」

 また誰かが叫んだ直後、皆我さきに横断歩道を引き返し、歩道へと走り戻っていく。俺ももちろんそれに続いた。が……。


「あぁっ!?」

「ッ!?三春っ!!」

「ッ!?」

不意に、すぐ後ろで声が聞こえた。足を止め振り返ると、まだ幼い女の子が横断歩道の上でこける姿が見えた。

「あぁっ!!」

すぐにお母さんらしい女性が駆け寄ろうとするが、ヒール靴が災いとなったのかその場でこけてしまった。


 その間にも暴走トラックは横断歩道に向かって突進してくるっ!このままじゃ女の子がっ!そう思った時には、手にしていた紙袋を落とし体が勝手に動いていた。俺は女の子に駆け寄るとその腕を引いて強引に立たせ、もう片方の手で女の子を歩道の方へと突き飛ばした。


「きゃぁっ!」

「三春っ!!」

 俺に突き飛ばされた女の子を、体を起こした女の人が抱き留める。これで何とか、


 そう、思った次の瞬間。俺の体に強烈な衝撃と痛みと轟音が襲い掛かった所で、意識は暗転した。



~~~~

「はっ!!??」

 でも、次の瞬間には俺の意識が覚醒したっ。が、視界に映るのはなぜかすべて真っ白の世界っ!?

「えっ!?あれっ!?」

 すぐさま俺は体を起こして周囲を見回すが、やはりすべて真っ白な世界だっ!ど、どこだここっ!?って言うかっ!?


「お、俺トラックに撥ねられたよなっ!?け、けど怪我はっ!?ないっ!?」

 慌てて体のあちこちを触り確認するが、どこも怪我していないどころか全くの健康体だっ。どこも痛くないし不調だって感じられないっ。


「ど、どうなってるんだ?」

 文字通り、訳が分からなかった。死んだ、と思ったら摩訶不思議な場所で目覚めるなんて。もう何が何だか分からず困惑していた。その時。


「うむ。目覚めたか」

「ッ!?」

 不意に後ろから声がして、俺は慌てて振り返った。 振り返った先で立っていたのは、何と言うか『ザ・神様』と言わんばかりの白い服装に杖を持ったおじいちゃんだった。しかし見た目こそおじいちゃんのはずなのに、目の前の存在からは言いようのないオーラを感じていた。


「あ、あなた、は?」

 そんな相手だからこそ、俺は自然と緊張した声色で問いかける事しか出来なかった。

「ふぉっふぉっ。さぁて、誰かの?まぁ、お前さんの身に起きた事を考えれば、自ずと分かるじゃろぉて」

 謎のおじいちゃんは好々爺のような笑みを浮かべながら白いあごひげを撫でている。

「分かる、って言われても」

 正直今の俺にはいろんな事が立て続けに起きているせいで色々混乱していた。頭の中が無数の疑問形で埋め尽くされてしまっているからだ。俺は困惑気味にそう返す事しか出来なかった。


「なんじゃ分からんか?まぁ色々あって混乱しておるようじゃしの。ではヒントをやるかのぉ。ヒントは、お前さんの故郷、日本で最近流行っているラノベジャンルじゃ」

「え?何そのヒント?」

 ヒントがヒントになってない気がするが、最近の日本のラノベのトレンドと言えば、異世界転生系?………って、待てよまさかっ!?


「えぇっ!?って事はもしかしなくても、『神様』ッ!?」

「ふぉっふぉっ。左様、ワシは人が言う所の神様じゃ」

「ま、マジでっ!?」 

「うむ」

 ほ、本当に神様っていたのかよっ!? と内心驚く俺。いや神様が現実に居たらそりゃ驚くわっ!


「で、でもなんで俺っ、神様の前にいるんだっ!?俺、死んだはずじゃっ!?」

「うむ。おぬしは確かに、居眠り運転で暴走したトラックから少女を庇って命を落とした」

「ッ。や、やっぱりっ」

 神様が言うんだから、本当なんだ。俺は、死んだんだ。 あの女の子を庇って、俺は……。


「悔いはあるかの?」

「ッ!」

 その時聞こえてきた神様の声に、俺はビクッと体を震わせた。その声は、まるで俺の心を見透かしたような声だった。死の事実を聞いて俯いていた視線を上げると、神様は先ほどまでの好々爺とした微笑みの表情ではない、真剣そのものの表情で真っすぐ俺を見据えていた。


「今のお主の心境はどうじゃ?お主はまだ若い。成人すらしておらん。まだやりたい事など、それこそ星の数ほどあったのではないか?」

「そ、それは、確かに」

 あぁ。確かにやりたい事は星の数ほどあった。まだ見たことのないエアガンに触れてみたい。成人したら、仕事して、お金貯めて。グアムやハワイでも旅行して本物の銃って奴に触ってみたいって夢もあった。


「であれば、お主は先ほどの選択を悔いているのではないか?」

「ッ!そ、そんな事はっ!」

 否定しようとした。したけど、途中で声が詰まった。 俺は確かに女の子を助けたけど、代わりに自分の命を犠牲にして、全ての夢をドブに捨てた。いや、あの子を助けた事は決して悪い事じゃない。それくらい分かってる。


「どうした?後悔はあるのか?」

「……正直、後悔が無いと言えば嘘になる」

 神様の問いかけに、俺はか細い声で静かに答えた。


「まだまだやりたい事はいっぱいあった。夢があった。両親に、最大の親不孝をしちまった……っ!!」

 思いを声にする度、感情が揺れ動く。そして、俺の涙腺は決壊した。そうだっ。俺は両親を残してっ!うぅっ!


 家族、友人、それ以外の物も含めた全てとの死別。 その現実に俺は堪えきれず大粒の涙を流した。 けれど、『それでも』と俺の中で、俺の心の中で『俺自身』が叫んでいた。


「けど、それでもっ!自分より小さな子を守れたんだっ!男として、人として、やれる事はやってやったさ畜生っ!!ここで、あの子を恨んでなんか居られるかよっ!」


 大切な存在との死別と言う『悲しみ』。理不尽な死に対する『怒り』。それでもあの子を守る事が出来た『喜び』。そんな無数の感情が俺の中でゴチャゴチャに交じり合っていた。無数の交じり合う感情を爆発させるように俺は叫ぶ。


「後悔はしても、少女を救った事に悔いはない、と言う所かの?」

「あぁっ!」

 神様の言葉に、俺は強い口調で頷く。すると……。


「ふぉっふぉっ。これはまた、生きのいい男じゃのぉ」

「えっ?」

 すると、先ほどまでの真剣そのものだった表情を崩し、神様は再び好々爺のような優しい笑みを浮かべる。その表情の変化に戸惑い、俺の高ぶっていた感情も僅かにクールダウンした。


「喜ぶが良い。人の子よ。その気概に免じて、お主にワシから二つの選択肢を用意しよう」

「二つの、選択肢?」

「左様。まず第1の選択肢じゃ。こちらは即ち、『天国へ行く』、と言う事じゃ」

「天国?それって、俺の知る天国なのか?」

「うむ。概ねお主ら人間が語る天国と相違ない。天国とは神や神の使いたる天使によって認められた者の魂のみがたどり着ける場所。日本風に言えば極楽浄土かのぉ。そこではあらゆる幸福を得て永遠を生きる事が出来る」

「あらゆる、幸福を」


 聞こえてきた単語を俺は思わず繰り返した。あらゆる幸福に、永遠って単語はとても魅力的だった。だから一瞬、天国へ行くことに心が揺らいだ。


「次に、第2の選択肢。こちらは、お主に特別な力を与え、記憶を持ったまま異世界に転生、いや。正確には転移させる事じゃ」

「ッ!」


 しかし、第2の提案もまた大変魅力的な物だった。

「そ、それってつまりっ!?」

「うむ。お主の考えている通りじゃ。最近巷で流行っているラノベの内容そのままの事が、お主自身で出来る、と言う事じゃ」

「ッ!!!」

 その選択肢は、天国へ行くという第1の選択肢とも張り合う程に魅力的だった。何しろ俺も現代日本で漫画やラノベが好きな部類の人間だ。当然、異世界転生なんて、夢のまた夢だとしても憧れた。


「じゃが、こちらの選択肢については一つ、警告がある」

「警告?」

 再び見せる真剣な表情とあまりよくない単語に俺は首を傾げた。


「お主が異世界転移する場合、転移先の世界はお主がラノベなどでよく知るファンタジー世界となる。時代は中世によく似ている一方で、人族以外にもエルフや亜人と言った、様々な人型種族が生活している他、魔法も存在しておる」

「おぉっ!」

 まさしくファンタジーの世界じゃないかっ! その魅力的な世界に俺は思わず声を上げてしまった。


「じゃが、はっきり言ってその世界は現代の日本に比べて遥かに過酷じゃ」

「遥かに過酷って、そんなにですか?」

 異世界に憧れる者にとってファンタジー世界への転生、或いは転移は文字通り夢だ。しかし神様が言うには日本よりはるかに過酷だという。どういうことだ?


「考えてもみろ。異世界には現代日本のような警察組織は無い。あったとしても国が町の警邏などのために兵士を配置しているか、自警団のような物がある程度じゃ。じゃが都市部から離れた農村などではそのような物はなく、皆自分たちの生活は自分たちで守れと言われているような物じゃ。加えて司法の管理も行き届いている訳でもない。盗賊や野盗と言う存在がまだまかり通っているのじゃから、それも分かるじゃろう」

「た、確かに」

「加えて、その世界には危険な存在である魔物と呼ばれるモンスターも存在しておる。魔物に襲われる危険性も、その世界で暮らす限り必ず存在するのじゃ。どうじゃ?これでその世界が如何に危険か、良く分かったじゃろ?」

「………」


 確かに、聞くだけで現代日本とは比べ物にならないほど危険な事は良く分かった。けれどっ。


「なぁ、神様。さっきアンタは『特別な力を与え』、って言ってたよな?」

「うむ」

「それは俺がよく知るラノベにありがちな、チート能力って奴で間違いないのか?」

「どうかの。流石に神に匹敵する程の力は与えられん。何をもってチート能力とするかが問題じゃの」

「そっか。……じゃあ例えば、異世界で銃、『ショットガンを自由自在に生み出す能力』ってのは出来るのか?」

 この問いかけをする時、俺の心臓が一瞬高鳴った。


 もし、転移に際してこの能力が与えられるのならっ。俺の夢はまだ終わってないっ!

「……不可能、ではない」

「ッ!!」

 その言葉を聞いた時、顔が自然とにやけた。夢はまだ終わってないっ!まだ途絶えてなんか居ないっ!その現実に高揚し自然と笑みを浮かべてしまう。


「じゃが『自由自在に』、とは行かん。自由自在に、際限なくファンタジー世界に存在しない銃火器を弾薬ごと召喚していたのでは世界のパワーバランスが大きく崩れる事になる」

「でも、それって逆に言えば、自由自在じゃなきゃ、良いって事だよなっ?」

 神様の言わんとしている事は分かる。もし銃火器を無限に、それも弾を込みで無限に取り出せたら、それは個人にとって大きすぎるアドバンテージになる。いや、もっと言えば俺一人で武器商人みたいな事だって出来る。そうなれば当然、世界のパワーバランスは崩れるだろう。 

だが神様が否定したのは『自由自在に』、と言う部分だ。生み出す能力そのものを否定した訳じゃないっ。


「確かに。ある程度の制約や条件を付ければ、そのショットガンを生み出す能力、と言うのも問題は無かろう」

「ッ!じゃあその能力を願ったとして、どんな条件が付くんだっ!?」

 夢への道筋が見えて来た期待感に胸を躍らせながら俺は神様に問いかける。


「そうさのぉ。ならば金で武器や弾薬を購入する、と言うのはどうかの?」

「それってつまり、アイテムショップみたいなもんかっ!」

「まぁ概ねその通りじゃの。お主は労働などでお金を貯め、そのお金で武器や弾薬などを買う。いわば、お主だけの特別なガンショップ、と言った所かの?」

「俺だけのガンショップかっ。ふふっ、悪くない響きだなぁ」


 想像するだけで笑みがこぼれる。お金が必要と言う条件こそあるが、それでも俺は『本物の銃を手にする事が出来るかもしれない』。その情報に気分は高揚し、心臓が高鳴る。


「今のお主に聞く意味も無いじゃろうが、改めて問おう。今のお主の望みはなんじゃ?極楽浄土である天国へと進むか。特異な力を受け取り危険に満ちた異世界へと転移するか。お主は、そのどちらを選ぶ?」

 どこか説得を諦めたような表情で、神様はそう前置きしつつも俺に問いかけてきた。


「ふふっ。そんなの決まってるじゃないっすかっ」

 俺は笑みを浮かべる。俺には途切れたと思っていた夢があって、その道筋は既に分かり切っている。だから、俺の答えは決まっている。


「行きますよっ!チート能力片手に、異世界にっ!!」

「……その決心に揺らぎは無いのじゃな?転移したが最後、もうやり直しは聞かぬぞ?」

「そりゃまぁ、天国は魅力的ですけどね。まさか天国で銃撃ちまくるわけにはいかないじゃないですか?天国にあらゆる銃火器を好きなだけぶっ放せる射撃場でもあれば別ですけど」


 どこか試すような神様の言葉と表情に、しかし俺はそう言って肩すくめた。

「くっ!ふふふっ!天国よりも夢を選ぶとはのぉ。面白い男じゃて」

 神様はそんな俺の姿に一瞬呆けた後、次いで可笑しそうに笑みを浮かべる。


「良かろう。ならばお主の願いを聞き届けるとしよう。さぁ人の子よ。お主はどんな力を望む?」

「俺が望む力は……」

 神様の問いかけに答えようとした時、脳裏に浮かんだのは子供のころの記憶だった。


 小学生の時。町の玩具屋さんで見つけて、親にねだって買ってもらったそれは、エアコッキング式のショットガンのエアガンだった。 思えば、あの日が俺のガンマニアとしての、いや、ショットガンマニアとしての出発点なのかもしれないなぁ、なんて思いが記憶と共にめぐる。 そして巡る記憶が、俺の望む力を指し示した。


「俺が望む力は、『ショットガンと定義されたすべての銃火器とそれに対応した弾薬ッ、更にはホルスターや整備などに必要な道具などをお金で購入する力』だっ!」

「良かろう。それがお主の望みなら、叶えて進ぜよう」


 神様が大仰に頷くと、手にしていた杖の石突で真っ白な地面を突いた。甲高い音が真っ白な世界に響き渡った直後、俺の足元に虹色の魔法陣が現れ、魔法陣の中から現れた無数の光が俺の中に入ってくる。


「おっ、おぉっ!!」

 自分でも分かる。俺に新しい力が与えられてるって事が、感覚で分かるっ! 


 数秒の間を置き、現れた光の全てが俺の中へと入りこむと、魔法陣は光の粒子となって四散した。


「今この時をもって、お主には力が与えられた。お主が望んだとおりの力じゃ。この力にあえて名をつけるとするのなら、『ショットガンチート』、とでも言うかのぉ」

「ショットガンチートッ!」

 チートって言葉そのものは悪い意味を含んでいるが、それでもその名前が妙にしっくり来て、俺は思わずオウム返しでその単語を口にした。


「さて、力は与えたので、後は異世界に転移すればお主の新しい道が始まるわけじゃが、その前に餞別じゃ。ほれ」


 再び杖の石突で床を付く神様。すると俺の前に二つの光が現れた。なんだ?と思った時、光は形を変え、一つは武器に。一つはその武器を収める鞘、ホルスターとなった。


「これってっ!?『コーチガン』じゃないっすかッ!」


『コーチガン』。またの名を『ダブルバレル・ショットガン』。日本では水平二連式散弾銃、などとも呼ばれる比較的古い部類のショットガンだった。しかも眼前に浮かんでいたコーチガンを手に取って引き金部分を見てみると、肝心の引き金が二つある。

昔の銃であるコーチガンは銃身が二つあり、それを二つの引き金で撃ち分けていた訳だ。


「こっちはもしかしてホルスターッ!?ってかうわっ!なんか左側にポーチ付いてるっ!しかもこれ、なんか入ってるっ!?」


 コーチガンを床に置き、ホルスターの方もベルト式で右側にはコーチガン用のホルスター。左側には弾薬を入れておくためのポーチが付いていたのだが……。


「うぉすげぇっ!本物の12ゲージの弾入ってるっ!?」

 中に入っていたのは、本物の弾だった。 本物のショットガンと本物の弾を前にした俺は、文字通り興奮しっぱなしだった。


「その銃とホルスター、弾がワシからの、ある意味最初で最後の贈り物じゃ。お主が異世界に転移した後は、もうワシの力は及ばん。後は、全て自分や、道の先で出会った仲間たちの力で進むしかないのじゃからな」

「仲間?」

 聞こえてきた中で、気になった単語があり俺は思わず聞き返した。


「左様。人一人の力など、高が知れておる。じゃが一人では無力でも、仲間が居れば違うかもしれぬ。まして、お主が転生する世界にはSNSや、電話すらない。たいていの相手とは面と向かって会話する事になるであろうなぁ」

「あっ」

 神様の言葉に俺は内心『確かにっ!そりゃそうだっ!』と思い思わず声が出てしまった。


「お主はこれから、異世界でいろいろな者に出会い、時に対立し、時に分かりあい、時に絆を深めるじゃろう。そしてお主に与えた力は、時に敵を倒しお主の道に立ちふさがる脅威を退ける力にも、誰かを守る力にもなろう」

「ッ」


 誰かを守る力。それは、一人の男として憧れる単語だ。俺だって男だ。英雄や傑物と言う単語には少なからず惹かれる物がある。だからこそ神様の言葉を聞いた時、一瞬心臓が高鳴った。


「さて。そろそろ時間じゃ。お主は今から、異世界へと行く。良い旅路をな。人の子、幾多道雄よ」


 神様は、最後の最後に好々爺らしい笑みを浮かべながら三度杖の石突で床を叩いた。再び俺の足元に現れる魔法陣。が、今度は魔法陣が自動で上昇し俺を足元から飲み込んでいく。


 異世界にいけるんだっ!俺はっ! 大きな期待感と少しの不安を感じながらも、俺は笑みを浮かべ最後に神様を真っすぐ見据え叫んだっ。


「神様っ!ありがとうございましたっ!」

「ふぉっふぉっ。ではな、人の子よ。お主の新たな道に、幸福と出会いが在らん事を」


 それは神様からの最大のエールであり、祝福だった。 そしてその言葉を聞いた直後。俺の意識は暗転した。



~~~~~

「はっ!!?」


 そして、目覚めた時、俺はどこかも分からない森の中で木の幹に寄り掛かるようにして眠っていた。 突然の事に驚きながら、俺は周囲を見回してから立ち上がった。 ここはどこだ? ここは本当に異世界なのかっ? もしかしてさっきの夢だったんじゃ? 少しの不安感からそんなネガティブな事を考えてしまう。だが……。


「ッ」

 不意に感じた、ホルスターとそこに収められたダブルバレル・ショットガンとポーチに収められた弾の重さと存在が、一連の流れが夢ではない事を俺に教えてくれる。


 じゃあ、やっぱりここは異世界なんだっ!

「ッッ!ッ~~~~~!!!」


 直後、表現しようのない喜びが俺の中を駆け巡る。そして……。


「ぃよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!来たぜっ!!!異世界ぃぃぃぃぃぃっ!!!!」


 割れる寸前の風船のように膨れ上がった喜びが爆発し、それは声となって放たれた。俺はガッツポーズをしながらも、青々とした空を見上げ、満面の笑みを浮かべる。



 こうして、ショットガン大好き男な俺、幾多 道雄の異世界へ転移するのだった。


     第1話 END 

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