前哨戦
ライアンとマイルズを見送ったジェイコブは、人気のないホールを歩き出した。
進む先は、中央の奥に見えているエレベーターである。
「ここしかエレベーターはないのか?」
エレベーターの前に辿りつくと、ジェイコブはカレブへと聞いた。
「いえいえ、一階は三か所エレベーターがありやすよ。あっちとあっちでやす。マフィアのビルでやすからねえ。一気に100階なんていきやせん。どこも10階ずつしか昇れないんでやす」
カレブは喋りながら指差す。
つまり、10回エレベーターを乗り継がなければいけないということである。
「やけに詳しいな」
「いやあ、あっしも一応ミリアーノファミリーの一員でしたからね。ヒヒヒ。何回か来たことはあるんでやすよ。一応非常用の階段もありやすよ」
ライアンとマイルズが言っていたように、エレベーターで行ける先には罠がある可能性が高い。
だからと言って、ジェイコブは階段を上る気はなかった。
なのでジェイコブは、目の前のエレベーターのボタンを押す。
「ええ!兄貴!階段はまだしも、せめてあの端っこのエレベーター使いましょうよ」
「どこを使っても一緒だ」
結局、敵が待ち構えているのだろう。
それならば、ジェイコブからすればやる事は変わらない。
そうしているうちに、エレベーターの表示が一階まで降りて来る。
「ガアアアア!」
そして、その扉が開いた瞬間に、当たり前のように化け物が飛び出してくる。
だが、次の瞬間には銃声が響き、化け物は吹き飛んで動かなくなった。ジェイコブが撃ち殺したのだ。
「行くぞ」
そして、ジェイコブは平然とエレベーターへと乗り込んだのだが、カレブは躊躇する。
「せめて、どかしやせん?」
化け物の死体と同乗することになるからだ。
「置いて行くぞ」
もうジェイコブは、10階のボタンを押してしまっていた。
「行きやす!」
カレブは扉が閉まりそうになると、急いでエレベーターへと乗り込んだ。
エレベーターは昇っていく。
罠であるなら、途中で止まる可能性もあるだろう。
しかし、エレベーターは順調に昇っていき10階で止まる。そうなれば当然、扉は開くことになる。
ジェイコブは化け物の死体を拾い上げると、それを盾にすると、開く扉へと突っ込んでいった。
その瞬間、銃声が多く鳴り響く。
やはり、待ち伏せされていたのだ。
その銃弾の多くは、ジェイコブが盾として使った死体へと吸い込まれていった。
しかし、全てがそうなるわけではなく、ジェイコブは何発か被弾してしまう。
だが、ジェイコブの強靭に作られた肉体は、少しの被弾は問題なかった。
「うわああああ」
「こいつ!」
そして、ジェイコブは冷静に一人ずつ撃ち返していき、そのフロアにいた敵をあっさりと全滅させたのだ。
それは、そのフロアだけではない。
次の20階も、30階でも、その先でも、同じように全ての敵をジェイコブは撃ち倒していったのだ。
敵は、ただの人間のマフィアもいれば、モンスターシードを使った化け物もいたし、イーサンの元にいた獣のような化け物もいた。
ジェイコブは傷を増やしながらも、進み続けたのだ。
♦
そして、90階へと辿り着き、最後の敵が倒れる。
エレベーターで昇ったのだから、時間にすればそれほど掛かりはしなかった。
だが、その時には、ジェイコブはボロボロであった。
毎フロア敵と戦い続け、小さいダメージでも、受け続ければそうもなる。
更に、残りの弾倉ももう少なくなっていた。
それでもジェイコブには、戻るという選択肢はない。
だから、最後のエレベーターへと乗り込み、ボタンを押したのだ。
「兄貴?それは屋上でやすよ?」
その押したボタンを見て、カレブが横から口を出す。
「マイケルの旦那は100階のフロアにいると思いやすよ?」
ボロボロのジェイコブとは逆に、カレブはピンピンとしている。
戦いはしていたが、常に前で戦っていたのはジェイコブだからである。
「いいんだ」
ジェイコブは押すボタンを間違えたわけではない。
そのジェイコブの様子に、カレブもそれ以上追求せずに、黙ってエレベーターの表示を眺める。
二人を乗せたエレベーターは順調に進んでいく。
そして、屋上へと着いた。




