入場
カレブは迷うことなく車を走らせ続ける。
「道が外れているぞ」
ジェイコブ達が向かっているのは、ニューシティの真ん中にある、信じられない程高い高層ビルである。
ジェイコブが死ぬ前の、10年前にはなかったものである。
情報が古くてもニューシティの地理は、ジェイコブの頭の中には入っており、カレブの進む道が明らかに、真っ直ぐと目的地へと向かっていない事くらいは、ジェイコブにだってわかるのだ。
「嫌でやすなあ兄貴。ちょっとドライブしてるだけでやすよ。ヒヒヒ」
カレブは愉しそうにハンドルを握っている。
この改造車の乗り心地が、余程気に入ったのであろう。
「ふざけるな」
それをジェイコブは一喝した。
「冗談でやすよ。オリバーに敵が少ないルートを教えてもらったんでさあ」
実際に、カラーズの化け物達と遭遇することは少なかったし、遭遇しても車で跳ね飛ばせる程度の数しかいない場合しかなかった。
しかし、レジスタンスの人間がそんなことを把握しているとは思えない。
「そうか。早くしろよ」
「へい!」
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しばらく車を走らせて、ようやく目的地の近くまでたどり着く。
「あのタワーは、ニュー・カラーズ・タワーって言うんでやすよ」
「随分とセンスのない名前だ」
ニューシティのカラーズのタワーだから、そう名付けられたのだろう。
まあ、タワーと言うか高層ビルなのだが。
「そう言った奴等は、みんなマイケルの旦那に殺されましたよ」
「……随分と高いな」
他にも高層ビルはあるが、あのタワーだけは他の高層ビルよりも圧倒的に高い。
「100階建てみたいですぜ。マイケルの旦那は最上階で暮らしてるんだとか……」
「上るのが大変そうだな」
「エレベーターがあるからそうでもないでやすよ」
そんな会話をしているうちに、タワーは近づいてくる。
もう、すぐそこである。
カレブは通っている道は、最短ルートではないが、正解の道であったのだろう。
「流石にこの辺まで来ると、警備も多いでやすね」
それでも、全くの素通りというわけではない。
モンスターシードを使った化け物達が、ジェイコブ達の進行方向に現れ、道を塞いだ。
「じゃあ、行かせていただきやす」
カレブは意気揚々とアクセルを踏み込んだ。
加速した車は、化け物達を撥ね飛ばしながら進み、タワーの入り口まで来る。
「捕まってくだせえ!」
そしてその勢いのまま、タワーの入口へと突っ込んだ。
ガラスが吹き飛び、タワーの1階である広いホールに、車は回転しながら入っていき、そして止まった。
「ふう……こういうの、一回はやってみたかったんでやすよね。イヒヒヒ」
こんなことが出来るのは、映画のスタントマンくらいである。
「まだ終わってないぞ」
ジェイコブは車を飛び出すと、すぐさま銃を抜き去り、発砲をする。
ホールの中には、不自然なほどに人が存在していなかったが、車を追いかけて来た敵が、外から迫って来ていたからである。
「それじゃあ、あっしも」
カレブも、車の影に隠れながら、同じように銃を撃ちだす。
その弾丸は、珍しくしっかりと敵に命中していた。
しかし、残りの敵は少なかったようで、少しの撃ち合いで、すぐに敵は出てこなくなった。
「終わりでやすかね?」
そう思ったのだが、敵がいなくなり、静寂に包まれたフロアの中で、ジェイコブは微かな気配を感じる。
ジェイコブは背後へと振り返りながら、素早く銃口を向けた。




