二つの理由
魔人化したジョシュアの体は変化していく。
体は大きくなり服が裂けていく。そして、その体中に小さい切れ目が入っていった。
その切れ目は開き、眼球が露になる。
魔人化したジョシュアの体中に目が現れたのだ。
「ジェイクゥウウウ!お前が憎かった!」
魔人化を終えたジョシュアは、ジェイコブへと殴りかかる。
ジェイコブは、それを真正面から受け止める。
そうする必要はないが、そうしようと思ったからである。
ジョシュアが魔人化するのを待ったのも、同じような理由であった。
「ぐぅ!」
ジョシュアの拳の威力は、マシューやイーサンとは全く違うものであった。
それも当然である。マシューやイーサンはジェイコブを殺す気などなかったのだから。
しかし、それとは違い、嫉妬にまみれ、錯乱したジョシュアの拳は、間違いなくジェイコブを殺すために振るわれていたのだ。
だが、ジョシュアの巨体が動けば、当然部屋中に貼ってある写真は引き裂かれることとなる。
体中に現れたジョシュアの目は、それを捉えながらも、しかしそれでも、ジョシュアは攻撃の手を緩めることはなかった。
その激しい攻撃により、写真はもちろんの事、家は破壊されていき、ジェイコブも二階から一階へと叩きつけられる。
「ジェイク。お前さえいなければ、お前さえ……いなければ」
倒れ込むジェイコブの元へ、ジョシュアはゆっくりと歩きながら近づいてくる。
「今頃はこの家でエミーと二人で暮らしていたんだあああああ!」
今度はジョシュアは、拳を下から上へと振り上げた。
「ぐああああ!」
その拳は、目で追えこそすれ、ジェイコブの体はついていかず、やはりもろに攻撃を喰らってしまう。
ジェイコブの体は、建物の壁を破壊しながら飛ばされ、隣の家に叩きつけられてしまう。
ジェイコブはまだ魔人化をしていない。
そこには、色々な考えがある。
マシューやイーサンとの戦いでは、モンスターシードを使わなくてもある程度戦えたとか。
麻薬に溺れて戦いたくなかったとか。
戦い終わった後どうなるかとか。
そんなところだ。
だが、マシューやイーサンと違い、本気で殺しに来るジョシュアを相手に、もはやそんな事も言っていられなかった。
ジェイコブは、腰に刺さった、厳重まケースに入ったモンスターシードを引き抜く。
そして、それを二本、迷うことなく自分の首筋へと打ち込んだ。
それにより、ジェイコブの体は魔人化していく。
ジェイコブ自身は知りようがないが、ジェイコブの体はエミリーによる特別性である。
モンスターシードを二本打ち込んだとて、大きく体の様相が変わることはなかった。
多少、体が大きくなる程度である。
しかし、見た目は変わらねど、力は大違いである。
「行くぞ、ジョッシュ」
ジェイコブは魔人化を完了させると、迫りくるジョシュアを睨みつけた。




