街中の戦い
「兄貴!ジョッシュアは、今はマランノファミリーのボスですぜ」
そんなことは言われなくてもジェイコブにはわかっている。
マシューはミリアーノファミリーのボス。イーサンはアポルネファミリーのボス。それならば、当然ジョッシュアはマランノファミリーのボスだろう。
むしろ、今知ったとでも言いたげな言い方をするカレブの方が変である。
と言っても、ジェイコブは今更それを注意する気もなかった。
「どこにいる?」
「とりあえず、このまま進んでくだせえ。案内しやすんで。ヒヒ」
言われなくとも、ジェイコブは最初からマランノのシマへと向かっていた。
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車を走らせ続け、ジェイコブ達はマランノのシマに入る。
その間、車の空気は重々しかった。
カレブが場の空気を和ませようと何か喋っても、ジェイコブは短く返事をするばかりで自分からは喋り出すことはなかった。
「さっそくか……」
「え?」
そんなジェイコブが、自分からぽつりと呟いた。
カレブは何のことかわからず、間抜けな声を出す。
しかし、すぐに気が付いた。
ジェイコブ達の乗せて走る車が、四方を車で囲まれている事に。
カレブは、端末に目を向けていたから気が付かなかったのだ。
「ひいい!兄貴!どうしやしょう!」
更に、囲んできた車は、当たり前のようにジェイコブ達の車へと、車をぶつけてきたのだ。
カレブはパニックになり、ジェイコブへとすがりつく。
「邪魔だ」
そのカレブを、ジェイコブは振りほどく。
「ちょうどいい、暴れたい気分だったんだ」
ジェイコブはそう呟くと、ブレーキをかけた。
それにより、後ろの車へと車をぶち当たる。
「うわ!ぐえ!」
急な事に、カレブは前へと引っ張られて、更にぶつかった衝撃で今度は後ろへと引っ張られる。
更に、ジェイコブは加速し、前の車にもぶつける。
その車は、衝撃でスピンしながら別の車へとぶつかり、連鎖的に三台の車が事故を起こして炎上する。
その現場を残して、ジェイコブは車を走らせ続ける。
「あ!兄貴!前!」
そして更に、今度はジェイコブ達の車の走る道路の先に、モンスターシードを使用した化け物が立ちふさがっているのが見えた。
当然そこは、ギャングやマフィアではない一般人がいる街中であり、一般人は驚き、逃げ惑っていた。
「突っ込むぞ」
だが、そんなことはジェイコブには関係がない。
立ちはだかる敵は、ただ排除するのみである。
イーサンの用意した車は、明らかに普通の車ではない。戦闘用に改造された車である。
だから、例えモンスターシードを使った化け物であろうとも、簡単に跳ね飛ばしてしまうのである。
「ギャアアアア」
断末魔と共に、宙を舞う化け物を気にもせず、ジェイコブは車を走らせ続ける。
「カレブ。方向はあってるか?」
「へ?あ、ああ。そこを左でやす」
カレブは頭を抱えて下を向いており、明らかにサボっていたが、声をかけられて再び端末を操作しだす。
「今度は右でやす――そこをまっすぐで――」
カレブの指示通りに進むと、その先々で、モンスターシードを使った化け物達が立ちふさがった。
それを、ジェイコブは、時に車で撥ね飛ばし、時に車から身を乗り出して銃で撃ち抜いて、敵は殺して進む。
「ここでやす!」
そして、それを続けて、ついに目的地へと着くことになる。
ジェイコブが倒し続けたからか、敵はもはや死体しか見当たらなくなっていた。
そこは、特別な場所ではない。
ただの家であった。
確かに大きい家ではあるが、常識の範囲内の大きさの普通の家。そうとしか言えない家であった。
「本当にここなのか?」
だからこそ、ジェイコブはカレブに問う。
こんなところに、ジョシュアがいるのかは疑わしいから。
「はい!ここがジョシュアの家だと書いてありやす!」
しかし、カレブはそう答える。
いなくても自分のせいではない、とでも言いたげな言い方である。
それはその通りなのだが、非常に鼻につく言い方だ。
「そうか、待っていろ」
それだけ言い残すと、ジェイコブは車を降りて出て行ってしまった。
「え?ちょ!」
カレブは焦るが、着いて行こうとは思わない。
ジェイコブが、それを拒否しているのはわかっているからである。
幸いなことに、辺りに敵はもう見当たらない。
それは、ジョシュアもまた、ジェイコブとは二人で会いたいと思っているからなのかと、カレブは考える。
だからこそ、敵が来るまでは待っていようと、カレブは決意したのであった。




