表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/93

怒り

「あああああああああ!!!」


 ジェイコブは叫ぶ。

 顔をぐちゃぐちゃにしながら。

 愛するエミリーをその手に抱きながら。

 涙を流しながら。

 ジェイコブは叫び続けた。


「兄貴!?」


 その叫びを聞きつけて、先刻別れたカレブが部屋へと入って来る。


「これは……」 


 そして、すぐにカレブは理解する。

 息絶えたエミリーを抱いて泣きじゃくるジェイコブと、壁に血で書かれた文字を見たことによって。


 壁にはこう書かれていた。

 

 遅かったな

 ジョシュア


 まるでジェイコブを挑発しているような文である。

 いや、名前まで残しているので、実際に挑発しているのだろう。

 そして、文字に使われた血が、誰の者かは考えるまでもない。


「兄貴……」


 流石のカレブも、ジェイコブにかける言葉がなかった。

 だからカレブは、せめて家の扉を閉めて、その前へと座り込む。

 そして、ジェイコブが落ち着くまで待ったのであった。

 しかしそれは、夜中続き、カレブは途中で眠ってしまった。


 体が動かされる感覚に、カレブは目を覚ます。

 カレブをどかしたのはジェイコブであった。


「あ、兄貴!」


 どこに行くのかと、カレブは聞こうとしてやめた。

 ジェイコブは、エミリーの死体を抱えていたからである。

 

 カレブは黙ってジェイコブの後を追う。

 黙っていたのは、やはりかける言葉が見当たらないからである。


 ジェイコブもまた、黙ったままエミリーと共に車へと乗り込む。

 エミリーは助手席へと座らされたため、カレブは無理やり空いているスペースへと潜り込む。

 カレブのその行動を、ジェイコブが咎めることはなく、車を発進させた。

 


     ♦



 車が走り、着いた場所は、やはりと言うべきか、仲間達の墓の元である。

 そしてジェイコブは、置きっぱなしになっているスコップを手に取ると穴を掘りだす。

 カレブもそれに続く。

 その作業は終始無言であり、ただ土を掘る音だけが静かに鳴り響いた。


 やがて、一つの墓穴が出来ると、ジェイコブは再び穴を掘りだす。


「なんで二つ掘るでやすか兄貴?」


 カレブが問いかけても、ジェイコブは変わらず黙ったままである。


「わかりやしたよ。やりやすよ」


 カレブはしばらく座り込んで休んでいたが、特に何も言われていないにも関わらず、文句を言いながら手伝いを始めた。


 そして、しらばくして二つの墓穴が出来る。

 

 その片方に、エミリーを眠らせ、ジェイコブは墓を作り上げた。

 ジェイコブは、その墓の前に膝をつくと、目を閉じて、祈りを捧げる。


 それは、長い、長い、時間続いた。


 やがて、祈りが終わり、ジェイコブは立ち上がる。その顔は、祈りを捧げていた時の涼しい顔から一変し、怒りに満ちた顔となっていた。


「カレブ。ジョッシュはどこにいる?」

「へ?へ、へい!車の端末にそれっぽい情報がありやしたよ!」


 カレブは二重の意味で驚き、慌てて答える。

 驚いたのは、これまで見た事もないほど怒りに満ちたジェイコブの顔と、今まで静かであったジェイコブが話しかけて来た事に対してである。


「行くぞ、ジョッシュもその墓に埋めてやる!」


 その為に、二つの墓穴を掘ったのである。

 ジェイコブは、車へと乗り込み、待ちきれないという感じでハンドルを握る。


「へい!」


 その様子に、カレブは急いでジェイコブへと着いて行き、車の助手席へと乗り込んだ。


 そして、二人を乗せた車は走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ