帰宅
ジェイコブが施設を車に乗って抜け出した頃に、施設が爆発する。
しかし、ジェイコブは車を止めることなく走らせた。
外は夜であった。
ジェイコブは丸一日近く眠っていたのだろう。
だが、少し走らせたところで、ジェイコブはその暗闇の中から偶然にも見つけてしまう。
ジェイコブの車に向かって手を振る人物を。
カレブである。
追い出されたとは聞いていたが、未だにこんなところで何をしているのかわからない。
とりあえず、気が付かないフリをして、ジェイコブは通り過ぎる。
しかし、ミラーに映る、車に追いすがるカレブを見て、ため息をつくと、車をUターンさせてカレブの近くへと止めた。
「酷いでやすよ兄貴」
「気が付かなかった」
カレブは悪態をつきながら、勝手に車に乗り込んでくる。
ジェイコブは、再び車を走らせる。
「いやあ、屋敷から追い出されたんでやすが、投げられたはずみに起きやして。屋敷から出てきた車を必死に追いかけたんでさあ。多分兄貴が乗せられてるだろうって。ヒヒヒ」
そして、聞いてもいないのに勝手に語りだした。
「意外と近くで助かりやしたよ。車が施設に入ったのは確認できたやすが、どうやって兄貴を助けようか。機会を窺ってたら変な奴らが施設の中に入っていきやして……」
その間、一日あったはずである。
「それで、困って外で待っていたら、兄貴が乗ってるイカした車が走って来たんでさあ」
つまり、結局のところ何もしていないということである。
「そうか」
「しかし、凄い車でさあね。中にも色々ありますし」
そう言いながら、カレブは勝手に車の中を漁りだす。
ジェイコブは、急ブレーキでもかけてやろうかと考えたがやめた。
「それで、どこに向かってるんです兄貴?」
一瞬、ジェイコブは迷う。
「エミーの家だ」
しかし言った。
「ああ、姉御の家ですかい。それじゃあ、あっしはそこから歩いて帰りやす。イヒヒヒ」
元より、カレブを家に入れるつもりはジェイコブにはない。
「飛ばすぞ」
エミリーには必ず帰ると約束したのだが、一日以上帰っていないため、心配しているだろう。
早く帰る為に、ジェイコブはアクセルを踏みこむ。
♦
うろ覚えの道を辿って、ジェイコブはエミリーの家へと帰って来る。
「では兄貴。ごゆっくり。イヒヒ」
相変わらず卑下た笑いを残して、カレブは去っていった。
ジェイコブは、地下への暗い階段を下りていく。
そして扉の前に立ち、ドアノブに手をかけた時、鍵を持っていない事に気が付く。
しかし、それはどうでもいいことである。
家の扉に、鍵はかかっていなかったのだから。
扉を開けると、中は真っ暗だった。
しかし、すぐに嫌な臭いがジェイコブの鼻をつく。
その臭いは、ジェイコブが嗅ぎ慣れた臭いであり、ジェイコブの手は震えだす。
震えた手で、ジェイコブは部屋の明かりをつける。
そこには、荒らされた部屋、血で壁に書かれた文字。
そして、エミリー・ブルーの死体があった。
「うわあああああああああああ!」




