表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/93

満足ある死

 振り下ろされた鋭い爪を、ジェイコブは横に飛んで避ける。

 そして、転がりながら銃を引き抜くと、銃口を魔獣と化したイーサンへと向けた。

 しかし、ジェイコブは引き金を引かない。引けないのではなく、引かなかった。


「どうしたジェイク!舐めてるのか?」


 そのジェイコブの様子を見て、イーサンは避けるジェイコブを追いかけ、やはり爪を立てて前足をジェイコブに対して振り下ろす。


「くっ……」


 しかし、ジェイコブは反撃をせず、次から次へと繰り出されるイーサンの攻撃を、ただひたすらよけ続けるだけであった。

 そして、イーサンはそのジェイコブを、ひたすら前足で踏み続けるように攻撃し続けるのである。だが、それはまるで遊びである。ジェイコブも、それには気が付いていた。


「ジェイク!避けるだけじゃ埒が明かないぞ?戦いに来たんだろう!」


 ジェイコブからすれば、戦いに来たつもりはない。

 しかし、だからといって、今この場で戦いになったことをおかしな事だとは思わないので、反論はしなかった。


「それとも俺が死ぬまで待つのか?」

「そんなつもりは……」


 モンスターシードを三本も体に打ち込んだイーサンに、もう後はない。

 ジェイコブが戦わずとも、死ぬことは決まっているのだ。

 だからといって、マシューに続き、イーサンまで手にかけることは、ジェイコブには出来なかったのである。


「いい加減にしろよジェイク!」

「ぐあっ!」


 イーサンは前足による攻撃をやめて、高速で体当たりをする。ジェイコブはそれを避けることが出来ずに、なすすべもなく吹き飛ばされ、壁に体をめり込ませた。

 そのジェイコブの前まで、イーサンはゆっくりと歩き近づく。

 壁にもたれかかったまま、ジェイコブは銃口を上げて、迫りくるイーサンへと狙いを定める。


「撃てよジェイク!撃たないと俺を殺せないぞ!」


 しかし、ジェイコブはやはり引き金を引かないのであった。

 その様子を見て、イーサンは心の中でのみ笑う。


「ああ……なんつったけあいつら。そうそう、雑貨屋のカーソンな。あいつは心が弱かったな、一番最初に薬に逃げやがった。次は本屋のグレイソンだ。あいつは流通を止めてやった。花屋のアンソニーは最後まで店やってたっけな。だから手下使って荒らしてやったよ。みーんなおっちんじまえばリリーが薬に逃げるのは当たり前だよな。まあ薬自体は俺がくれてやったんだけどな。次はお前が死んだ後にエミーを薬漬けにするか?ハハハハ!」


 わざとらしく煽るイーサンであったが、ジェイコブを怒らせるのには十分であった。


「イーサァアアン!」


 ジェイコブの中のモンスターシードの効果は、まだ切れていない。

 その効果で、ジェイコブは怒りをコントロールできなくなっていた。

 だからこそ、ジェイコブは怒りに身を任せて、引き金を引いた。それも一度ではなく、何度もである。


 轟音が何度も鳴り響き、ジェイコブの前に立ち尽くすイーサンの体を、何度も抉る。

 

「がああああああ!」


 イーサンは叫びながら、その場へと倒れる。

 その体は、大量の血を流しながら、元の体へと戻っていく。


「はぁ……はぁ……イーサン!」


 ジェイコブはイーサンの元へと近寄ると、その体を抱き上げる。


「俺……俺は……」


 自分でやった事であるにも関わらず、ジェイコブは涙を流す。


「そんな顔をするなよジェイク……」


 最後の力を振り絞り、イーサンは口を開いた。


「俺達はもう自分の足じゃ止まれないんだ……だから、他の奴も止めてやってくれ……」


 体は傷だらけであり、苦しいはずなのに、イーサンは微笑む。


「ありがとうよ……ジェイク……」


 全てをやり終え、イーサンは満足気な顔のまま、死亡した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ