開戦
ジェイコブは戦い。戦い。戦い続けた。
モンスターシードによって覚醒した体は、同じくモンスターシードによって凶暴化した魔獣達をものともせずに蹂躙していく。
「ハハハハッ!!」
今までのジェイコブには 戦いの最中笑う事などなかった。
しかし、モンスターシードという麻薬により脳が活性化したジェイコブは、所謂ハイというやつになっていたのである。
そのため、魔獣が食らいつき、ダメージを負おうとも、ジェイコブは暴れ続けた。
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そして、いつしか戦いは終わる。
「これで終わりだ!」
いつのまにか湧いてこなくなった魔獣の、最後の一匹を力任せに素手で潰すと、周囲には静寂が訪れた。ただ、傷ついたジェイコブの、激しい息遣いが聞こえるばかりである。
その静寂の中、パチパチと、拍手の音が響き渡る。
「イーサン!」
いつの間にかはわからないが、部屋の隅でイーサンが壁にもたれかかっていたのである。
冷静な状態ではないジェイコブは、それに気が付くことは出来なかったのだ。
「悪いなジェイク。本当はもっと遊んでやるつもりだったんだが、ちょいとな」
イーサンは余裕のある表情で、意味ありげな事を言う。
「何故だイーサン!お前だって、ホワイトライトストリートの人達には世話になっただろ!」
ジェイコブが特別世話になったことは間違いない。
しかし、カラーズの全員が、少年時代に世話になったことも間違いないのだ。
だが、イーサンはそれを鼻で笑った。
「いつまで死んだ奴等の事を話してるんだジェイク?まあ、死んだというか、俺が殺したみたいなもんだけどな。ははははっ!」
さらに、イーサンは高笑いをする。
そんなイーサンの態度に、ジェイコブは激昂する。いや、ずっと激昂していたのだ。
「お前はそんなやつじゃなかっただろ!イーサン!」
そう言われて、イーサンは冷たい目でジェイコブを見た。
「時が経てば人は変わるもんだ。そんな事よりジェイク。なんだお前は、俺に説教しに来たのか?」
「茶化すなよ!」
激昂し、叫ぶジェイコブに、イーサンはため息をついた。
「そういうのはいいんだよジェイク。はっきりとしている事は、俺を倒さないとモンスターシードの被害者は増え続けるってだけだ」
イーサンはニヤリと笑うと、高そうな服の中から、モンスターシードを三本取り出した。
「なっ……おい!」
ジェイコブは戸惑い、イーサンへと走り出す。
しかし、間に合うような距離ではなく、ジェイコブが止める間もなく、イーサンはモンスターシードを3本全て自分の体へと注入してしまう。
ジェイコブは、それを見て、足を止めてしまう。
「ふぅうう。おおおおお!」
そして当然、イーサンの体は変異していく。
魔人化だ。
だが、ジェイコブの目の前で変化していくイーサンの体は、他の化け物達とは違く、ただ体が肥大化するだけではなかった。
イーサンの体は肥大化しながらも、まるで獣のように姿を変えたのだ。
その姿は、はっきり言えば不格好である。
まるで、さっきほどまでジェイコブが相手していた魔獣達全てを、混ぜ合わせたかのような姿であったのだから。
「はぁはぁ……ハハハハハッ!いい気分だ。三本も使うとこんなになるんだな!」
獣のような姿のイーサンは、どこから出しているかもわからない声で喋る。
更に、無駄に広い部屋を四本の足で駆け巡って見せた。
その速さは、先ほど相手にしたどの獣よりも速く、パワフルであった。
そして、かつてイーサンであった化け物は、ジェイコブの前に止まると、そのおどろおどろしくなった顔で、ジェイコブと見つめ合う。
「どうだジェイク!最高の気分だぜ!今ならなんでも出来そうだ!」
イーサンは高揚し、楽しそうに叫ぶ。
「イーサン……どうして……」
それとは真逆に、ジェイコブは突然の事に困惑するしかなかった。
「理由は単純だろジェイク!俺がお前を殺したいからだよ!死人は大人しく墓に入ってな!」
その言葉と同時に、イーサンはジェイコブへと鋭い爪を振り下ろした。




