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開戦

 ジェイコブは戦い。戦い。戦い続けた。

 モンスターシードによって覚醒した体は、同じくモンスターシードによって凶暴化した魔獣達をものともせずに蹂躙していく。

 

「ハハハハッ!!」


 今までのジェイコブには 戦いの最中笑う事などなかった。

 しかし、モンスターシードという麻薬により脳が活性化したジェイコブは、所謂ハイというやつになっていたのである。

 そのため、魔獣が食らいつき、ダメージを負おうとも、ジェイコブは暴れ続けた。

 


     ♦



 そして、いつしか戦いは終わる。

 

「これで終わりだ!」


 いつのまにか湧いてこなくなった魔獣の、最後の一匹を力任せに素手で潰すと、周囲には静寂が訪れた。ただ、傷ついたジェイコブの、激しい息遣いが聞こえるばかりである。


 その静寂の中、パチパチと、拍手の音が響き渡る。


「イーサン!」


 いつの間にかはわからないが、部屋の隅でイーサンが壁にもたれかかっていたのである。

 冷静な状態ではないジェイコブは、それに気が付くことは出来なかったのだ。


「悪いなジェイク。本当はもっと遊んでやるつもりだったんだが、ちょいとな」


 イーサンは余裕のある表情で、意味ありげな事を言う。


「何故だイーサン!お前だって、ホワイトライトストリートの人達には世話になっただろ!」


 ジェイコブが特別世話になったことは間違いない。

 しかし、カラーズの全員が、少年時代に世話になったことも間違いないのだ。

 だが、イーサンはそれを鼻で笑った。


「いつまで死んだ奴等の事を話してるんだジェイク?まあ、死んだというか、俺が殺したみたいなもんだけどな。ははははっ!」


 さらに、イーサンは高笑いをする。

 そんなイーサンの態度に、ジェイコブは激昂する。いや、ずっと激昂していたのだ。


「お前はそんなやつじゃなかっただろ!イーサン!」


 そう言われて、イーサンは冷たい目でジェイコブを見た。


「時が経てば人は変わるもんだ。そんな事よりジェイク。なんだお前は、俺に説教しに来たのか?」

「茶化すなよ!」


 激昂し、叫ぶジェイコブに、イーサンはため息をついた。


「そういうのはいいんだよジェイク。はっきりとしている事は、俺を倒さないとモンスターシードの被害者は増え続けるってだけだ」


 イーサンはニヤリと笑うと、高そうな服の中から、モンスターシードを三本取り出した。


「なっ……おい!」


 ジェイコブは戸惑い、イーサンへと走り出す。

 

 しかし、間に合うような距離ではなく、ジェイコブが止める間もなく、イーサンはモンスターシードを3本全て自分の体へと注入してしまう。

 ジェイコブは、それを見て、足を止めてしまう。


「ふぅうう。おおおおお!」


 そして当然、イーサンの体は変異していく。

 魔人化だ。


 だが、ジェイコブの目の前で変化していくイーサンの体は、他の化け物達とは違く、ただ体が肥大化するだけではなかった。

 イーサンの体は肥大化しながらも、まるで獣のように姿を変えたのだ。

 その姿は、はっきり言えば不格好である。

 まるで、さっきほどまでジェイコブが相手していた魔獣達全てを、混ぜ合わせたかのような姿であったのだから。


「はぁはぁ……ハハハハハッ!いい気分だ。三本も使うとこんなになるんだな!」


 獣のような姿のイーサンは、どこから出しているかもわからない声で喋る。

 更に、無駄に広い部屋を四本の足で駆け巡って見せた。

 その速さは、先ほど相手にしたどの獣よりも速く、パワフルであった。

 そして、かつてイーサンであった化け物は、ジェイコブの前に止まると、そのおどろおどろしくなった顔で、ジェイコブと見つめ合う。


「どうだジェイク!最高の気分だぜ!今ならなんでも出来そうだ!」


 イーサンは高揚し、楽しそうに叫ぶ。


「イーサン……どうして……」


 それとは真逆に、ジェイコブは突然の事に困惑するしかなかった。


「理由は単純だろジェイク!俺がお前を殺したいからだよ!死人は大人しく墓に入ってな!」


 その言葉と同時に、イーサンはジェイコブへと鋭い爪を振り下ろした。

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