魔獣
「ぐおおおおお!」
ジェイコブが部屋を出てすぐに、化け物が襲い掛かって来る。
しかし、ジェイコブからしてみれば、敵が来るのは予測通りである。
モンスターシードを使って、化け物と化した人間だろう。
ジェイコブは銃を構えると、躊躇うことなく引き金を引いた。
その瞬間、ジェイコブからして、予想外の轟音が鳴り響く。
「ぐっ!?」
呻いたのはジェイコブである。
銃に細工があったわけではない。そもそも、銃に細工をしてジェイコブを殺すくらいならば、最初から眠っているジェイコブを殺せばいい。
ただ、反動が、ジェイコブの予想を遥かに超えていただけである。
倒れ込みこそしなかったが、魔人化したジェイコブの力をもってしても、よろめくほどの反動であった。
そして、威力もすさまじく、化け物と化した敵の頭を一撃で吹き飛ばしたのである。
ジェイコブがかつて、モンスターシードを使った化け物を倒す時には、普通の銃では何発も撃ち込まなければ倒せなかったというのにである。
『よう、ジェイク。言い忘れてたけど、その銃すげえから気を付けろよ?』
イーサンの声だけが、廊下に備えられたスピーカーから響く。
言い忘れていたというのは嘘であろう。
『まあその分、特注の弾使うから弾数にも気を付けろよ。ハハハ!』
イーサンの笑い声が響く。
そして、それに合わせて、廊下にある別の部屋の扉が開き、どんどんとモンスターシードを使った化け物が這い出て来る。
「くそっ!」
ジェイコブは今度はしっかりと構えて、銃弾を放つ。
構えてさえいれば、よろけたりすることなく銃弾を撃ち続ける事が出来た。
幾度も轟音は響き、敵は倒れていく。
『流石だなジェイク!』
それに、合いの手を入れるように、イーサンの声も響き渡る。
イーサンの言葉に対して、ジェイコブは返事はしない。
周りの警戒をしていて、それどころではないし、ジェイコブの声が向こうに届くかもわからないからである。
ジェイコブの返事がなくとも、イーサンの声は、そこら中にあるスピーカーから一方的に聞こえ続けて来た。
『ああ、そうそう。カレブの事が心配か?』
名前を出されるまで、ジェイコブは気にもかけていなかった。
『安心しな。あいつならお前より先にぐっすりだったから外に放り出しといたよ』
イーサンが話す内容は、正直どうでもいい話も多い。
『おっと、そこを左だ』
しかし、そういった話だけではなく、イーサンはジェイコブの動く先にまで指示を出してくる。
それに従う気があるわけでもないが、ジェイコブはその指示の通りに施設の中を進んでいった。
なぜならば、例え間違った道でも、最終的にイーサンを見つける事さえできればいい。そうジェイコブは思っていたからである。
だが、イーサンの言う通りに進んでいき、広い部屋へと入ると、今度は犬のような獣の群れに待ち伏せを受ける。
その獣は、明らかに尋常ではない様子であり、ジェイコブを見つけると、低く吠えながら、すぐさまジェイコブへと襲い掛かって来る。
「ぐっ……」
その素早い動きに、ジェイコブは銃で狙いを定める事が出来ずに、直接素手で吹き飛ばすしか出来ない。
しかし、それでも、全ての獣を振り払う事は出来ず、一匹の獣に腕に噛みつかれてしまう。
とても生き物の力とは思えないほどの力で腕を締め付けられ、ジェイコブは呻いてしまう。
だが、すぐさま獣を床に力いっぱい叩きつけると、獣は動かなくなった。
『そいつらは、魔人化の実験の過程で作り出した魔獣だ。もちろん投薬済みだぜ』
ジェイコブは銃で狙えないと思うや否や、銃をホルスターに収めると、素手で獣達を倒していく。
『なんでそんなものがいるのかって?実は俺……子供の頃ペットを飼いたかったんだよな……なんてな、ここがモンスターシードの新しい実験場だからさ。もちろん製薬所でもある』
イーサンはひたすら一人で喋り続ける。
その間に、ジェイコブは獣達を全て倒す。
『つまり、ここを潰さないと、モンスターシードの被害者は増えていくってわけさ……ってもう倒しちまったのか。じゃあ追加だな』
イーサンがそう言うと、部屋の扉の一つが開いて、新しい獣の群れがなだれ込んでくる。
今度は犬の形だけではない。猫や、猿や、兎など、色々である。
そして、それら全てが、改良された魔獣なのである。
『辛かったらモンスターシードを使うといい。気付いているだろう?ガンホルスターとは逆側にセットしてあるのがさ』
確かに、ジェイコブもそれには途中から気が付いていた。
『エミーはお前が起きてから、最低限維持する分だけのモンスターシードを、薄めて使っていたみたいだな。だが、そこに入ってるのはちゃんとキまるやつだぜ。でも注意しろよ、魔人化した俺達なら一日一本くらいじゃ体に影響は出ないけどな。二本使えば薬が切れたときに動けなくなる。更に3本使えば薬が切れた時が命がなくなる時だ』
ジェイコブは魔獣と戦いながらも、イーサンの忠告を聞き続ける。
と言っても、モンスターシードを使えば、ただで済まないのはわかっている。
だが、襲い掛かる魔獣達を前に、ジェイコブは限界を感じる。
そして、モンスターシードを取り出すと、ジェイコブは自らへの首筋へと打ち立てた。




