ゲーム
硬い床の上で、ジェイコブは目を覚ます。
真っ先に目に入ってきたのは、厳重そうな鉄の扉である。
覚醒して、真っ先にジェイコブは違和感に気が付く。
それは、自分の着ているものである。
元より着ていた服は、新品の別のものになっていた。
特別変な格好ではない。
むしろ、ジェイコブにあっている恰好であろう。
体にあった黒い服に、赤く長いコート。
それに、見慣れない銃が、ガンホルスターに収められており、更にその銃の弾倉らしきものまでコートの中に複数用意されていた。
それに、ご丁寧にガンハットまで被らされていた。
ジェイコブは、起き上がりながら、頭の中を整理する。
と言っても、整理する必要もなく、イーサンに裏切られ、罠に嵌められたことは明白である。
その自分の考えに、ジェイコブは笑みを浮かべてしまう。
そもそも、裏切ったというのもないのだ。
元々、イーサンだって、ジェイコブがマイケルに殺された現場にいたのだから。
最初から、マイケル側なのはわかっていた事である。
それでもジェイコブは、イーサンと話がしたかったのだ。
その結果はこれである。
周囲を見渡すと、そこは何もない部屋である。
まさに独房と言う感じだ。
唯一、扉の上にモニターがあるのが目に入る。
とりあえず、ジェイコブは扉を力任せに開けようとしてみる。
しかし、分厚い扉は軋むような音を立てこそすれ、開く様子はなかった。
『おいおい、落ち着けよジェイク』
その時、ジェイコブの真上から声が聞こえて来る。
扉の上のモニターがついたのだ。
「イーサン!」
ジェイコブは少し下がり、モニターを確認する。
モニターには、優雅に椅子へと座り、邪悪な笑みを浮かべているイーサンの姿が映っていた。
『俺からの贈り物は、お気に召したかな?』
イーサンは、ジェイコブにとって一番どうでもいい疑問に対する答えを、勝手に口にする。
「どういうつもりだ!」
ジェイコブが叫ぶと、モニター内のイーサンは笑い出す。
その様子から、少なくとも録画ではなく、ジェイコブの声が届いている事は窺える。
『ククク。それは何に対してだよジェイク。お前を眠らせた事か?お前を殺さなかった事か?銃を渡したことか?それとも――ホワイトライトストリートをモンスターシード漬けにしてボロボロにしたことか?』
イーサンは愉しそうに笑いながら言い放つ。
その様子を見て、ジェイコブは激昂する。
「イーサン!」
しかし、ジェイコブには叫ぶ以外の事は出来なかった。
『おお!怖い怖い』
イーサンは大袈裟な動作でおどけて見せる。
モニター越しでは、ジェイコブが何も出来ない事などわかっているくせに。
『悪い悪い。さて、ジェイク。ゲームをしようか』
急に意味の分からない事をイーサンが言い出す。
「ゲームだと?」
『そう!内容は単純だ。お前がその施設を抜けて、俺の元へと辿り着けるかのゲームだ』
ジェイコブはゲームになど付き合う気はない。
しかし、この施設内にイーサンがいると言うのであれば、どちらにせよそこへと向かうだけである。
イーサンの元へ辿り着いたとして、どうしようとかは、ジェイコブは考えていない。
しかし、ジェイコブはホワイトライトストリートの惨状を、一人残り、悲惨な状況のリリーの事を思い出す。
それをイーサンがやったとなれば、ジェイコブはイーサンを許すわけにはいかないのだ。
「わかった……待っていろイーサン。すぐ行く」
瞳に炎を宿し、ジェイコブは銃を手に取る。
ただイーサンの元へ呑気に歩いて行くだけというわけではないのはわかっている。
そのジェイコブの様子に、イーサンは笑みを浮かべて、スイッチを押す。
すると、ジェイコブを閉じ込めていた部屋の扉が開いた。
『それじゃあ、ゲームスタートだ』
イーサンの掛け声とともに、ゲームが始まった。




