食事
部屋へと入ったジェイコブの目にまず入ってきたのは、馬鹿デカいテーブルとそこに並んだ数々の料理。
そして、そのテーブルの一番奥に座って、にこやかに笑っているイーサンであった。
「よう、ジェイク!久しぶりだな!会えて嬉しいよ」
イーサンは表情の通りに、陽気な様子でジェイコブへと挨拶をする。
それに対して、ジェイコブはどう反応していいのかわからなかった。本来であれば、陽気に挨拶を返すところであるが、そんな気分になれるわけもないからである。
「あ、ああ」
「うひょー!これ食べてもいいでやすか!?」
戸惑いながら返事をするジェイコブに被さるようにして、カレブが喜びの声を上げる。非常に図々しい奴である。
「カレブか。久しぶりだな。もちろんいいぜ。お前達のために準備したんだ。座ってくれ」
そう言われるが否や、カレブはデカいテーブルの手前側の席を陣取ると、勝手に食事を始めてしまう。
「兄貴はそちらへどうぞ!積もる話もあるでしょうし。あっしは空気だと思ってくだせえ。ヒヒヒ」
カレブは食べながら、ジェイコブをイーサンの近くの席へ促す。
恐らくそういう意図で手前側を陣取ったのだろうが、それなら最初から遠慮して外で待っていればいいと思う。
しかし、今日は色々あったので腹も空いているのであろうと、ジェイコブは許してやる事にして、薦められるがままにイーサンの隣へと座った。
そこで、近くから見たイーサンの顔は、歳相応と言う感じである。
それはつまり、魔人化手術を受けていないのだと、ジェイコブは思い込んだ。
「老けたな……」
そして、つい、ぽつりとつぶやいてしまう。
「そう言うな。俺もいい歳だからな。結婚だってしたのさ」
そう言って、イーサンはジェイコブ達を案内した女性達の方を見る。
それはつまり、そう言う事だろう。
「え!?どっちとだ?」
ジェイコブが驚き、聞くと、イーサンはにやりと笑った。
「両方さ」
「ええ!?」
その答えに、ジェイコブは更に驚く。
「お前は変わらないな……」
しみじみという感じで言われたその言葉に、ジェイコブはなんと答えればいいのかわからなかった。
それこそ、疑問が多すぎる。
何故、ジェイコブが生きている事を疑問に抱かないのか。
何故、ジェイコブを呼んだのか。
ジェイコブがあの場にいたのを、何故知っていたのか。
ジェイコブがマシューを殺してしまったのかを知っているのか。
この疑問を解決しなければ、話せない事が多すぎる。
目覚めたばかりのジェイコブの居場所を知っている時点で、答えは出ているのかもしれない。
しかし、イーサンは仲間であり、ジェイコブはまずは話してから考えるべきだと思う。
「イーサン!それより、聞いてくれ!」
その疑問を解決すべく、ジェイコブは全てを聞こうとする。
「まあ、待てよ」
しかし、イーサンはそんなジェイコブを遮って止める。
「俺も話したいことがあるんだ。その話を聞いてから、お前の話を聞かしてくれよ、ジェイク」
ジェイコブは困惑する。
「さあ!せっかく用意したんだ。飯でも食いながら話そうぜ!」
困惑するジェイコブを置いて、イーサンは飯を食べながら何でもない話を始める。
「俺昔からトマト好きなんだよなー。ジェイクはバーガー好きだったろ。特別に作らせたんだぜ」
話をしたいと言っていたが、それは間違いなく関係ない話である。
しかし、ジェイコブも薦められるままに飯を食べ始め、イーサンと話していくうちに、少しづつ気分が落ち着いてきたのであった。
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それほど長い時間を話したわけではないが、イーサンととりとめもない話を続けるうちに、ジェイコブは急激な眠気に襲われる。
「眠くなってきたのか?寝てもいいぜ」
イーサンの声は、どこか遠くから聞こえて来るようであった。
それほど、ジェイコブは強い眠気を感じていたのだ。
「おーい……そろそろいいか」
ジェイコブは既にほぼ眠っており、イーサンはそれを確認してから話し出す。
「話があるって言ったよな?それはな、ホワイトライトストリートにモンスターシードをばら撒いたのは俺だって話だよ」
「な……」
目が覚めるような話のはずだが、ジェイコブは不自然なほどの眠気のままに、深い眠りへと落ちて行ってしまったのである。




