迎え
図らずもマシューを殺してしまったジェイコブは、マシューの死体をリビアと母の墓の近くへと埋めていく。
カレブはそれを手伝い、その間にジェイコブに何度か話しかけたが、ジェイコブは終始無言であった。
しばらくすると、マシューを埋め終わり、マシューの墓が出来る。
当然それは、ちゃんとしたものではない。
しかし、それは仕方のない事である。
墓が出来上がった後も、ジェイコブは黙って墓の前に立ち尽くしていた。
そのジェイコブの様子に、カレブは焦る。
「兄貴!そろそろずらかりましょうぜ!こんだけ派手に暴れちゃあミリアーノの連中だって来やすぜ」
むしろ、これだけ時間が経ったというのに、未だに様子を見に来る者が来ていないのは不自然なほどである。
「……ああ」
少しの沈黙の後に、ジェイコブもひとまずこの場を離れる決意をする。
それは、カレブの言葉を受け入れたというよりは、この場を戦場にしたくないという理由からであった。
しかし、その時になって、車が一台ジェイコブ達の近くへと止まる。
長く、大きい、明らかに高級そうな黒い車であった。
「ひいい!来たぁ!」
カレブは、そのたった一台の車にビビり、ジェイコブの後ろへと隠れる。
ジェイコブは、そのカレブも、車も無視して、ゆったりと歩いて車の近くを通り過ぎようとした。
すると、車のドアが開き、中から女性が二人姿を現した。
その女性たちは、二人とも車と同様に高級そうなスーツを着ており、身なりが良いと表現できる。
「お待ちください、ジェイコブ様」
そして、片方の女性がジェイコブへと話しかけてきた。
しかし、ジェイコブはそれを無視し、歩いて行こうとする。
誰かと話したい気分ではないからである。
「あ、兄貴。呼んでやすぜ」
カレブもジェイコブを呼び止めるが、ジェイコブはカレブとだって話したくないのである。
その様子に、女性達はひそひそと話し合いだした。
そして、諦めやたように片方が首を振ると、もう片方がジェイコブに向かって言った。
「ジェイコブ様。我らが主人であるイーサン様がお呼びです」
「なに?」
その言葉に、ジェイコブは驚き、流石に立ち止まる。
「どういうことだ?」
そして、女性達へと詰め寄った。
「お乗りなって、いただけますね?」
しかし彼女達は、ジェイコブの質問には答えずに、車の後ろのドアを開けただけであった。
普通に考えれば罠である。
だが、ジェイコブは迷うことなく車へと乗り込んだ。
「ありがとうございます」
女性達はジェイコブが乗り込むと、車のドアを閉めて自分達も車の運転席と助手席へと乗り込む。
「ああ!ちょっと待ってくだせえ!」
カレブは、招かれてもいないが、勝手にジェイコブは乗り込んだ方とは反対側の扉を開けて、車に乗ったのであった。
車の中には、ジェイコブ達以外には誰もおらず、少しして車は走り出す。
「どこに行くんでやすか?」
ジェイコブより先に、カレブが不安そうに声を上げた。
「ついてこなくても良かったんだぞ」
ジェイコブは突き放すように言う。
「そんなぁ、冷たいですぜ。あっしは兄貴の行くところにならどこでも付いて行きやす。イヒヒ」
その二人の様子を、前の席に座る女性達は、質問には答えずに黙って冷たい目で見るだけであった。
ジェイコブも、その様子を見て、特に話しかけたりはしなかった。
着けばわかると思ったから。
ただカレブだけが、能天気に喋り続けるのであった。
♦
車は長い時間走り続け、夜も近い時間になって来る。
その間、外を眺めていれば、ジェイコブにもだいたいどの辺りを走っているのかは理解できた。
もちろん、10年前と景色は変わっている。
しかし、車が走っている場所は、昔はアポルネファミリーのシマだった場所であることくらいはわかるのだ。
それでも、ジェイコブはただ黙って車に乗り続けていた。
やがて、車は門を通り、一つの家の敷地内へと入っていく。
広い敷地であり、敷地内に入っても車は走り続け、車庫まで更に時間がかかるほどであった。
「でかい家でやすねぇ」
そして、もちろん家も相応の大きさを持っていた。
車は車庫に入ると、当然止まり。ドアが開いて、ジェイコブ達は車から降りた。
「こちらへどうぞ」
そして、二人の女性に導かれるままに、家の中へと入り、歩いて行く。
家の中を歩いていると、武装した警備を何度も見かける。
しかし、彼らがジェイコブ達に襲い掛かってくることはなかった。
「中へどうぞ」
それなりに歩くと、大きい扉の前で女性達は止まり、扉を開いてジェイコブ達を中へと入るように礼をする。
そして、その中にいたのは、間違いなくジェイコブのかつての仲間、カラーズの一員であるイーサン・ジョンソンなのであった。




