表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/93

マシュー

 マシューは、間違いなくカラーズの中でも、最も仲間重思いな人間であった。


 だからこそ、後悔も多かった。

 子供の頃に捨てられたマシューは、親の顔を知らない。

 マシュー自身もいつかはわからない程子供の頃、マシューは孤児院に拾われた。

 そして、その孤児院でも、マシューはジョシュア以外の仲間と仲は良かったのである。

 だから、本当はマシューは全員で逃げ出したかった。

 しかし、結局はジョシュアと二人で逃げ出すこととなる。


 だが、そのおかげで、マイケルやジェイコブと出会う事が出来た。

 それは、マシューにとって幸運であり、不運でもあったのであろう。


 カラーズでの生活は、マシューにとってとても楽しかった。

 マシューにとって少年期は、間違いなく人生で最も楽しかった時である。

 だからこそ、オリビアが死んだときに、マシューはとても悲しんだ。

 そして、もう二度と仲間を死なせない。

 そう誓ったのだ。

 しかし、その誓いは12年後にあっさりと破られることとなる。


 ミリアーノファミリーに入ったマシューは、ミリアーノの諜報部の配属となった。

 体の小さいマシューには適任であった。

 マシューは得た情報をマイケルに言われ、マイケルに流していた。

 それは、ミリアーノに対する裏切り行為である。

 しかし、それでもマシューはマイケルを信用していた。

 マイケルも、悪い事には使わないと言っていたから。

 そしてそれは、12年間続いた。


 その時には、マイケルはアンダーボスの候補であったし、マシュー達はジェイコブとエミリーを除いて、マイケルの部下として働いていた。

 そして、運命の日はやってきてしまう。

 マイケルが、ミリアーノ内にカラーズを作り、ジェイコブを仲間に入れると言ったのだ。

 ジェイコブだけが最後に誘われた理由を、マシューは知らない。

 しかし、マシューはジェイコブが断るとは思っていなかったし、またカラーズとして集まれる事が嬉しかったのだ。

 だが、ジェイコブはそれを断ってしまった。


 それはマシューからしても以外ではあるが、仕方がない事だと思った。

 それに、離れ離れになるわけではないのだ。

 だから、マシューは事態を深刻には見ていなかった。

 しかし、マイケルは言ったのだ。

 ダッドを殺し、ミリアーノを乗っ取る。

 ジェイコブも殺す。

 そう言ったのだ。


 それを聞いた時、マシューはもちろん反対した。

 しかし、マイケルはもう全てに根回しをしていたのだ。もちろん、イーサンもジョシュアも。

 マシューは悩んだ末に、イーサンに助けを求めた。

 そして、イーサンはそれを聞き入れた。

 しかし、どうにもならない事はあったのだ。

 

 気が付いたら全ては進んで、もう止めることは出来なかった。

 マイケルを止めても、ジェイコブに全てを話しても、止まることはなかっただろう。


 そして、ジェイコブは死んだ。

 その死に際に、マシューは目を瞑り、手を伸ばしたが、もちろんそんなことは何も意味もなかったのだ。

 ただ、後悔するだけであった。


 その後、マシューはマイケルに言われるがままに、ミリアーノファミリーのボスとなった。

 と言っても形だけである。

 マイケルの言う通りに、ミリアーノファミリーを動かしていただけである。

 それでもと言うべきか。だからこそと言うべきか。それから10年間、マシューはミリアーノのボスとして何事もなく過ごせた。

 だからこそ、守るべき仲間が再び増えてしまったのである。

 だから、ミリアーノファミリーを守るために、魔人化の手術も受けた。

 それに、マイケルにはもう敵はいなかったのだ。もはや問題も起きるはずもなかった。


 しかし、起こるはずのない問題が起きた。

 起きてしまったのだ。

 


     ♦



 その日、マイケルに呼び出されたマシューはとんでもない話をされた。


「なあ、マシュー。ジェイクに似た奴が、ホワイトライトストリートをうろついてるらしいんだ」


 いきなりの事で、マシューは驚き、狼狽した。

 

「え?それってどういう……」


 マシューが、ジェイコブの名前を聞いたこと自体10年振りであった。

 示し合わせたわけではないが、全員がジェイコブの話を、まるでタブーのようにしなくなっていたからでもある。


「いやあ、死人が生きてるなんておかしい話だろ。笑えるよな。ハハハッ!」


 マイケルが大声で笑う。

 こんなに上機嫌なマイケルをマシューが見るのは、子供時代以来である。


「そ、そうだな。ハハ……」


 マシューはとりあえず合わせて笑っておく。

 カラーズのボスになってからのマイケルは、余りにも容赦がなかった。それは全てに対してである。味方にも、敵にも。

 このニューシティに生きる誰もが、カラーズのボスであり、ニューシティの市長であるマイケルを恐れているのだ。


「でな、ミリアーノにはそいつをぶっ殺してきて欲しいんだ」


 話の流れで考えれば、そうなるのはわかりきっていたし、マシューには今更断る理由もなかった。殺しの命令など、何度も聞いてきたのだから。


「あ、ああ。わかったよ。じゃあすぐ取り掛かるから」


 そう言って、マシューはそそくさとマイケルの元を去ろうとする。


「待て待て。念を押して置くが、例え本物でも殺して来いよ。出来なかったら……わかるな?」


 こんな念を押されたのは初めてである。

 それに、本物なわけはないのだ。

 ジェイコブは死んだのだから。

 


     ♦



 しかし、何かが気になったマシューは、誰にも告げず一人だけで様子を見に行くことにした。

 そして、そこにいたのは間違いなく本物のジェイコブであったのだ。

 一目見ればわかる。

 間違いようがないのだ。

 

 だが、だからこそマシューは苦悩した。

 もうマシューはミリアーノのボスである。

 ここでジェイコブを殺さなければ、マイケルにミリアーノをどうされてしまうのかわからない。


 そして苦悩の末、マシューはモンスターシードを三本同時に自分へと打ち込んだ。

 魔人化をして戦ったことは何度もあったが、必ず戦う前に一本打つ。それだけであった。

 三本同時に打つったのは、理性を飛ばしてしまおうと思ったのだ。


 しかし、それでも、マシューはジェイコブとは戦えなかったし、リビアの墓を破壊することも出来なかったのである。

 マシューは意識が朦朧としていても、仲間思いである事には変わりなかったから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ